●平成19(行ケ)10215審決取消請求事件「コカコーラの瓶の立体商標」

 本日は、一昨日各種記事に取り上げられ、昨日判決文が公表された『平成19(行ケ)10215 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「コカコーラの瓶の立体商標」平成20年05月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080529172621.pdf)について取り上げます。


 本件は、コカコーラの文字のないコカコーラの瓶の立体的形状のみについては、審判段階では使用により識別力が生じてないので、商標法3条2項の要件を具備せず、立体商標としては登録されるものではなく、拒絶すべき、とされた拒絶審決が取り消され、コカコーラの瓶の立体的形状のみの本願商標は、使用による識別力が生じており、商標法3条2項により商標登録を受けることができる、判示された事案です。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 嶋末和秀、裁判官 大鷹一郎)は、


1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について

(1) 立体商標における商品等の形状


ア 商標法は,商標登録を受けようとする商標が,立体的形状(文字,図形,記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても,所定の要件を満たす限り,登録を受けることができる旨規定する(商標法2条1項,5条2項参照)。


 ところで,商標法は,3条1項3号で「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,数量,形状(包装の形状を含む。),価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,数量,態様,価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は,商標登録を受けることができない旨を,同条2項で「前項3号から5号までに該当する商標であっても,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができる」旨を,4条1項18号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」は,同法3条の規定にかかわらず商標登録を受けることができない旨を,26条1項5号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」に対しては,商標権の効力は及ばない旨を,それぞれ規定している。


 このように,商標法は,商品等の立体的形状の登録の適格性について,平面的に表示される標章における一般的な原則を変更するものではないが,同法4条1項18号において,商品及び商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標については,登録を受けられないものとし,同法3条2項の適用を排除していること等に照らすと,商品等の立体的形状のうち,その機能を確保するために不可欠な立体的形状については,特定の者に独占させることを許さないとしているものと理解される。


 そうすると,商品等の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない形状については,商品等の機能を効果的に発揮させ,商品等の美感を追求する目的により選択される形状であっても,商品・役務の出所を表示し,自他商品・役務を識別する標識として用いられるものであれば,立体商標として登録される可能性が一律的に否定されると解すべきではなく(もっとも,以下のイで述べるように,識別機能が肯定されるためには厳格な基準を充たす必要があることはいうまでもない。),また,出願に係る立体商標を使用した結果,その形状が自他商品識別力を獲得することになれば,商標登録の対象とされ得ることに格別の支障はないというべきである。


イ 以上を前提として,まず,立体商標における商品等の立体的形状が商標法3条1項3号に該当するか否かについて考察する。


(ア) 商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,商品・役務の出所を表示し,自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。


 このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また,商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。


 そうすると,商品等の形状は,多くの場合に,商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり,客観的に見て,そのような目的のために採用されると認められる形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,同号に該当すると解するのが相当である。


(イ) また,商品等の具体的形状は,商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが,一方で,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,通常は,ある程度の選択の幅があるといえる。しかし,同種の商品等について,機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として,同号に該当するものというべきである。


 けだし,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から適切でないからである。


(ウ) さらに,需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても,当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには,商標法4条1項18号の趣旨を勘案すれば,商標法3条1項3号に該当するというべきである。


 けだし,商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に,商品等の機能の観点からは発明ないし考案として,商品等の美感の観点からは意匠として,それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば,その限りおいて独占権が付与されることがあり得るが,これらの法の保護の対象になり得る形状について,商標権によって保護を与えることは,商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると,商品等の形状について,特許法,意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり,自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである。


(2) 本願商標の商標法3条1項3号該当性

ア 本願商標の構成

(ア) 立体的形状

 本願商標は,別紙「商標目録」のとおりの構成からなるものであり(甲70),これによれば,本願商標は,本願の指定商品「コーラ飲料」の容器(包装容器)の立体的形状に係るものであり,同形状は,次のような特徴(以下,これらの特徴をそれぞれ「特徴点a」などという。)を有している。


a 底部を円形とし,上部にスクリューキャップをはずした状態の細い口部を設けた,縦長の容器の形状であること。
b 口部の下は,やや長い首部があり,その下方に向かって,上部から徐々にふくらみをもたせ,底面からほぼ5分の1の位置にくびれをもたせていること。
c くびれの下に台形状の広がりをもたせていること。
d ほぼ中央にボトル全長の約5分の1の高さの凹凸のないラベル部分を設けていること。
e 全体にラベル部分を除いてラベル近辺から底面近傍まで縦に柱状の凸部を10本並列的に配していること。
f ラベル部分の上には同様に柱状の凸部を10本並列的に配し,上部に行くに従い自然に消滅させていること。

(イ) 色彩

 審決は,本願商標について,「やや緑がかった半透明」(審決書3頁7行)であると認定し,被告は,やや緑がかった白色半透明の色彩が施されていると主張する。


 確かに,本願の願書(甲70)は2枚の写真(イメージデータ)を含むところ,上記写真において,容器はうっすらと緑がかっているように見えなくもない。


 しかし,一般に,無色透明のガラスであっても,照明の当て方により,端部が緑がかって見える場合があること,本願の願書における写真は,無色透明の容器を被写体として撮影されたものと認められること(弁論の全趣旨),上記写真において,緑色に見える部分は一様ではなく,容器の底部など端部(厚みのある部分)の方が,より緑がかって見えるが,他方凸部など白く見える部分もあること等を総合すれば,上記写真は,背景を黒とし,照度や照明等を工夫することによって,コントラストを強調し,無色透明な容器の立体的形状を,できる限り明瞭に表現して,本願商標の構成(立体的形状)を特定しようとしたものというべきであって,緑色の色彩を特定したものと認めることはできない。


イ事実認定

 証拠(甲2,乙2の1〜2の17)及び弁論の全趣旨によれば,本願の指定商品「コーラ飲料」をはじめとする清涼飲料,茶飲料,コーヒー飲料,ミネラルウォーター等の飲料の容器として用いられるものとしては,?口部分が他の部分に比べ細く,底部が円形で,縦長のものが多いこと,?文字等が記載されたラベルが貼付されるのが一般的であること,?くびれや膨らみを持たせたもの,模様を施したものが少なくないこと,?口部分の形状は,装着する蓋(スクリューキャップ,王冠など)に合わせて,成形されるものであることが認められる。


ウ判断

 前記ア及びイによれば,本願商標の前記ア(ア)の立体的形状のうち,特徴点aは,液体であるコーラ飲料を収納し,これを取り出すという容器の基本的な形状であって,このうち口部の形状はスクリューキャップの着脱という機能に関連するものであり,特徴点b及びcは,容器の握り易さに資するとともに,容器の輪郭に美感を与えるものであり,特徴点dは,容器の美感を維持しつつ,ラベルの貼付を容易にすることに資するものであり,特徴点e及びfは,容器の輪郭に美感を与えるものであことが認められる。また,本願商標に係る立体的形状は,飲料の容器において通常採用されている,前記イ?ないし?のような形状を組み合わせた範囲を大きく超えるものとは認められない。


 そうすると,本願商標の立体的形状は,審決時(平成19年2月6日)を基準として,客観的に見れば,コーラ飲料の容器の機能又は美感を効果的に高めるために採用されるものと認められ,また,コーラ飲料の容器の形状として,需要者において予測可能な範囲内のものというべきである。


エ原告の主張に対し

(ア) 原告は,本願商標の特徴的形状について,美感や機能を高めるためではなく,同形状に自他商品識別力を持たせることを目的として原告が開発・採用した斬新な形状であり,技術的観点あるいは機能的観点から,取引業界において容易に採用されるものではないと主張する。


 しかし,原告の主観的な意図が,美感や機能を高めるためではなく,同形状に自他商品識別力を持たせることを目的とするものであったとしても,そのことにより,本願商標の立体的形状が有する客観的な性質に関する判断が左右されるものではない。


 また,需要者において予測し得ないような斬新な形状であるか否かは,原告が当該形状を採用した時点ではなく,審決時を基準として判断すべきであり,原告以外の同業者が当該形状を現実に採用していないとしても,そのことから直ちに同形状が予測し得る範囲を超えるということはできない。


 したがって,原告の上記主張は失当である。

(イ) 原告は,他の同業者が,原告による本願商標に係る立体的形状の事実上の独占使用を許容していると主張する。


 しかし,現時点において,本願商標に係る立体的形状を使用することを欲する原告以外の第三者が顕在していないとしても,そのことから直ちに,当該形状を独占させることが公益に反しないすることはできない。したがって,原告の上記主張は失当である。


(3) 小括

 以上検討したところによれば,本願商標は,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法3条1項3号に該当するとした審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。


2 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について

(1) 立体商標における使用による自他商品識別力の獲得

 前記1(1)アのとおり,商標法3条2項は,商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として同条1項3号に該当する商標であっても,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができることを規定している(商品及び商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標を除く。同法4条1項18号)。


 立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,当該商標ないし商品等の形状,使用開始時期及び使用期間,使用地域,商品の販売数量,広告宣伝のされた期間・地域及び規模,当該形状に類似した他の商品等の存否などの事情を総合考慮して判断するのが相当である。


 そして,使用に係る商標ないし商品等の形状は,原則として,出願に係る商標と実質的に同一であり,指定商品に属する商品であることを要する。


 もっとも,商品等は,その製造,販売等を継続するに当たって,その出所たる企業等の名称や記号・文字等からなる標章などが付されるのが通常であり,また,技術の進展や社会環境,取引慣行の変化等に応じて,品質や機能を維持するために形状を変更することも通常であることに照らすならば,使用に係る商品等の立体的形状において,企業等の名称や記号・文字が付されたこと,又は,ごく僅かに形状変更がされたことのみによって,直ちに使用に係る商標が自他商品識別力を獲得し得ないとするのは妥当ではなく,使用に係る商標ないし商品等に当該名称・標章が付されていることやごく僅かな形状の相違が存在してもなお,立体的形状が需要者の目につき易く,強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである。


(2) 本願商標の商標法3条2項該当性

 そこで,上記の観点から,本願商標が使用により自他商品識別力を備えるに至っているかどうかを判断する。以下, 「使用商標の使用の実情」,「使用商標と本願商標との対比」の順で認定,判断をする。

ア 事実認定

(ア) リターナブル瓶の採用の経緯

(イ) 原告商品の我が国での販売実績

(ウ) リターナブル瓶入りの原告商品の販売数量等

(エ) リターナブル瓶入りの原告商品の宣伝広告の状況

(オ) 本願商標と同一の立体的形状の無色容器の出所識別力調査の結果

(カ) リターナブル瓶の形状についての認識

(キ) リターナブル瓶と類似する他社商品の流通状況

(ク) ワンウェイ瓶入りの原告商品の販売状況

(ケ) リターナブル瓶入り原告商品の形状と本願商標との対比

イ 判断

 上記アで認定した事実を総合すれば,次の点を指摘することができる。

(ア) リターナブル瓶とほぼ同じ形状の瓶を使用した原告商品は,既に,1916年(大正5年)に,アメリカで販売が開始され,開始当時から,その瓶の形状がユニークかつ特徴的であるとして評判になったこと,そして,我が国では,リターナブル瓶入りの原告商品は,昭和32年に販売が開始されて以来,その形状は変更されず,一貫して同一の形状を備えてきたこと


(イ) リターナブル瓶入りの原告商品の販売数量は,販売開始以来,驚異的な実績を上げ,特に,昭和46年には,23億8000万余本もの売上げを記録したが,その後,缶入り商品やペットボトル入り商品の販売比率が高まるにつれて,売上げは減少しているものの,なお,年間9600万本が販売されてきたこと


(ウ) リターナブル瓶入りの原告商品を含めた宣伝広告は,いわゆる媒体費用だけでも,平成9年以降年間平均30億円もの金額が投じられ,テレビ,新聞,雑誌等において,リターナブル瓶入りの原告商品の形状が需要者に印象づけられるような態様で,広告が実施されてきたこと特に,缶入り商品やペットボトル入り商品の販売が開始され,その販売比率が高まってから後は,リターナブル瓶入りの原告商品の形状を原告の販売に係るコーラ飲料の出所識別表示として機能させるよう,その形状を意識的に広告媒体に放映,掲載等させていること


(エ) 本願商標と同一の立体的形状の無色容器を示された調査結果において,6割から8割の回答者が,その商品名を「コカ・コーラ」と回答していること


(オ) リターナブル瓶の形状については,相当数の専門家が自他商品識別力を有する典型例として指摘していること,また,リターナブル瓶入りの原告商品の形状に関連する歴史,エピソード,形状の特異性等を解説した書籍が,数多く出版されてきたこと


(カ) 本願商標の立体的形状の本願商標の特徴点aないしfを兼ね備えた清涼飲料水の容器を用いた商品で,市場に流通するものは存在しないこと,また,原告は,第三者が,リターナブル瓶と類似する形状の容器を使用したり,リターナブル瓶の特徴を備えた容器を描いた図柄を使用する事実を発見した際は,直ちに厳格な姿勢で臨み,その使用を中止させてきたこと


(キ) リターナブル瓶入りの原告商品の形状は,それ自体が「ブランド・シンボル」として認識されるようになっていること


 以上の事実によれば,リターナブル瓶入りの原告商品は,昭和32年に,我が国での販売が開始されて以来,驚異的な販売実績を残しその形状を変更することなく,長期間にわたり販売が続けられ,その形状の特徴を印象付ける広告宣伝が積み重ねられたため,遅くとも審決時(平成19年2月6日)までには,リターナブル瓶入りの原告商品の立体的形状は,需要者において,他社商品とを区別する指標として認識されるに至ったものと認めるのが相当である。


ウ その他の事項に対する判断

(ア) リターナブル瓶入りの原告商品に付された「Coca−Cola」の表示との関係について

 リターナブル瓶入りの原告商品及びこれを描いた宣伝広告には,「Coca−Cola」などの表示が付されているが,この点に関し,以下のとおり判断する。


 取引社会においては,取引者,需要者は,平面的に表記された文字,図形,記号等からなる1つの標章によって,商品の出所を識別する場合が多いし,また,商品の提供者等も,同様に,1つの標章によって,自他商品の区別をする場合が多く,また,便宜であるともいえる。


 しかし,現実の取引の態様は多様であって,商品の提供者等は,当該商品に,常に1つの標章のみを付すのではなく,むしろ,複数の標章を付して,商品の出所を識別したり,自他商品の区別をしようとする例も散見されるし,また,取引者,需要者も,商品の提供者が付した標章とは全く別の商品形状の特徴(平面的な標章及び立体的形状等を含む。)によって,当該商品の出所を識別し,自他商品の区別することもあり得るところである。


 そのような取引の実情があることを考慮すると,当該商品に平面的に表記された文字,図形,記号等が付され,また,そのような文字等が商標登録されていたからといって,直ちに,当該商品の他の特徴的部分(平面的な標章及び立体的形状等を含む。)が,商品の出所を識別し,自他商品の区別をするものとして機能する余地がないと解することはできない(不正競争防止法2条1項1号ないし3号参照)。


 そのような観点に立って,リターナブル瓶入りの原告商品の形状をみると,前記(2)アで認定したとおり,当該形状の長年にわたる一貫した使用の事実(ア(イ)),大量の販売実績(ア(ウ)),多大の宣伝広告等の態様及び事実(ア(エ)),当該商品の形状が原告の出所を識別する機能を有しているとの調査結果(ア(オ))等によれば,リターナブル瓶の立体的形状について蓄積された自他商品の識別力は,極めて強いというべきである。


 そうすると,本件において,リターナブル瓶入りの原告商品に「Coca−Cola」などの表示が付されている点が,本願商標に係る形状が自他商品識別機能を獲得していると認める上で障害になるというべきではない(なお,本願商標に係る形状が,商品等の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標といえないことはいうまでもない。)。


(イ) リターナブル瓶入りの原告商品における口部の形状についてリターナブル瓶の立体的形状と本願商標とは,口部において,前者が王冠用であるのに対して,後者がスクリューキャップ用であるという点で相違する。


 口部の形状は,機能に直結する形状であるとともに,ありふれた形状であって,特段の事情のない限り,需要者が商品を識別する対象とはなり得ないというべきであるから,そもそも,本願商標の特徴的な部分ということはできない。また,本件において,特段の事情は存在しない。


 のみならず,前記(2)アのとおり,リターナブル瓶入りの原告商品の形状について,当該形状の長年にわたる一貫した使用の事実(ア(イ)),大量の販売実績(ア(ウ)),多大の宣伝広告等の態様及び事実(ア(エ)),当該商品の形状が原告の出所を識別する機能を有しているとの調査結果(ア(オ))等を総合すると,リターナブル瓶の立体的形状について蓄積された自他商品識別力は,極めて強いというべきであるから,リターナブル瓶入りの原告商品の口部の相違が,本願商標に係る形状が自他商品識別機能を獲得していると認める上で障害となるというべきではない。

エ 小括

 以上のとおり,本願商標については,原告商品におけるリターナブル瓶の使用によって,自他商品識別機能を獲得したものというべきであるから,商標法3条2項により商標登録を受けることができるものと解すべきである。これに反する被告の主張は,いずれも採用の限りでない。


(3) 以上検討したところによれば,本願商標は,商標法3条2項により商標登録を受けることができるものであるから,本願商標を同項に該当しないとした審決の判断には誤りがあり,原告主張の取消事由2は理由がある。


3 結論

 以上によれば,審決の認定判断には誤りがあり,この誤りが審決の結論に影響するから,審決は違法であり取り消されるべきである。よって,主文のとおり判決する。  』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。