●平成19(行ケ)10328審決取消請求事件「料理飲食物の給仕方法とその

 本日は、『平成19(行ケ)10328 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「料理飲食物の給仕方法とその装置」平成20年05月21日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080522134748.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、審判請求に係る全ての請求項について判断せず、一の請求項のみについて拒絶理由ありと判断して特許出願全体の拒絶審決をしても、そのて手続に違法性がないとした判断した点で、参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 田中信義、裁判官 石原直樹、裁判官 杜下弘記)は、

4 取消事由4(判断の遺脱)について

(1) 原告は,請求項2に記載された発明(本願発明)についてのみ判断し,審判請求が成り立たないとした審決は,請求項1,3〜5記載の各発明に対する判断を遺脱したもので,特許法157条2項4号に違背する理由不備の違法があると主張する。


(2) しかしながら,拒絶査定に関する特許法49条柱書きが「審査官は,特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは,その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。」と規定し,特許査定に関する同法51条が「審査官は,特許出願について拒絶の理由を発見しないときは,特許をすべき旨の査定をしなければならない。」と規定していることにかんがみれば, 特許法は1個の「特許出願中」に複数の請求項が含まれる場合であっても,請求項ではなく特許出願を対象として拒絶査定又は特許査定をなすべきものとしていることは明らかである。


 同法が,請求項ごとに拒絶査定又は特許査定がなされることを全く予定していないことは,例えば,同法185条が「請求項ごとに特許がなされ,又は特許権があるもの」とみなして適用すべき規定を列挙して掲げており,特許無効審判に関する同法123条柱書きが「特許が次の各号のいずれかに該当するときは,その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合おいて,二以上の請求項に係るものについては,請求項ごとに請求することができる。」と規定しており,特許異議の申立てに関する,平成15年法律第47号による廃止前の特許法113条柱書きも「何人も,特許掲載公報の発行の日から六月以内に限り,特許庁長官に,特許が次の各号のいずれかに該当することを理由として特許異議の申立てをすることができる。この場合おいて,二以上の請求項に係る特許については,請求項ごとに特許異議の申立てをすることができる。」と規定していたのに対し,同法185条が掲げる規定中に同法49条,51条は含まれておらず,同法49条又は同法51条につき,同法123条柱書き後段又は廃止前の同法113条柱書き後段に相当する規定が存在しないこと,その他,1個の特許出願中の複数の請求項ごとに拒絶査定又は特許査定がなされるべきことを窺わせる法令の規定は見当たらないことに照らしても明らかなところである。


 そして,上記のとおり,柱書きが「審査官は,特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは,その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。」と規定されている同法49条において,2号が「その特許出願に係る発明が・・・第二十九条・・・の規定により特許をすることができないものであるとき。」と規定していることによれば,複数の請求項が含まれる特許出願中に,同法29条によって特許をすることができない発明に係る請求項が1個でも存在するときは,その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならないものと解さざるを得ない。


 なお,拒絶査定不服審判における審理の対象は,拒絶査定がされた当該特許出願を特許すべきか否かという点にあり,拒絶査定不服審判においても審査においてした手続が効力を有すること(特許法158条)にかんがみると,以上の説示は,拒絶査定不服審判についても妥当するものである。


 そうすると,本件においては,上記1〜3のとおり,本願発明(請求項2記載の発明)は同法29条2項によって特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願に対し拒絶すべき旨の査定をしなければならないことになるので,審決が,他の請求項に係る発明ついて判断することなく,審判請求は成り立たないとしたことに判断遺脱の違法はない。


(3) 原告は,同一特許出願による他の発明についての瑕疵により,本来特許されるべき発明が,審決で判断を受けることなく拒絶されるとすれば,審決取消訴訟における判断を受けることもできないから,法律によって保障された裁判を受ける権利を一方的に剥奪するもので,憲法32条に違反するものであると主張するが,上記のとおり,特許法の規定は,特許出願中に同法29条によって特許をすることができない発明に係る請求項があれば,特許出願に対し拒絶査定をすべきもの(又は当該拒絶査定を維持する審決をすべきもの)と解されるのであるから,当該特許出願中の他の請求項に係る発明は「本来特許されるべき発明」 に当たるものではなく,上記主張は前提において誤りである。


 また,原告は,審判請求に要する手数料は,請求項の数に応じて増額されることとされているところ,一つの発明に瑕疵を発見した場合には,他の発明について審理・判断せずに手数料だけを取るのであれば,審判請求人に対し一方的に賦役を課しているものといわざるを得ない, と主張する。


 しかるところ, 特許法195条2項同法別表11の項は,審判を請求する者が納付すべき手数料の額は定額部分と請求項の数に比例して増額される部分とから成ることを規定しているのであり,後者の部分の定め方は,審判請求人が,当該審判で主張する利益(審判請求が全部認められることにより,審判請求人に与えられる利益)を手数料の額に反映させたものと認められるが,算定を容易にするために,審判で主張する利益を,請求項の数に換算して規定したものと解することができる。そうであれば,特許出願に対し,特許査 定がなされるべきことを主張する拒絶査定不服の審判において,手数料額の一部が当該特許出願に含まれる請求項の数に応じた額とされるのは,審判請求人が当該審判で主張する利益(当該特許出願に対し特許査定がされることにより,審判請求人に与えられる利益)が特許出願の全体に及び,計算の便宜上,その利益を当該特許出願に含まれる請求項の数に換算したことによるものであって,審判において全部の請求項について審理・判断をすることの対価として,請求項の数に応じた額とされているものではないというべきであり,原告の上記主張も失当である。


 原告は,上記(1)の主張に関し,他にも縷々主張するところであるが,畢竟,独自の見解であって採用することはできない。


5 結論

 以上によれば,原告の主張はすべて理由がなく,原告の請求は棄却されるべきである。 』


 と判示されました。


 なお、取消事由1における引用例1記載の発明と引用例2〜4記載の各発明との組合せの動機付けの判断等も参考になるかと思います。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸;<気になった記事>

●『アルカテル・ルーセント、MSとの特許訴訟で勝利』http://mainichi.jp/life/electronics/cnet/archive/2008/05/22/20373722.html
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