●平成20(行ケ)10014審決取消請求事件「テディベアーTEDDYBEAR」(1)

弁理士一次試験を受験された方、お疲れ様でした。今日くらいはゆっくり休んで、明日以降、二次試験に向けて頑張ってください。


 さて、本日は、『平成20(行ケ)10014 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「テディベアー TEDDYBEAR」平成20年05月15日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080515135123.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標法50条の規定に基づく不使用取消審判の棄却請求の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、まず、使用商標と本件商標との社会通念上の同一性が判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官飯村敏明、裁判官中平健、裁判官上田洋幸)は、

1 取消事由1(使用商標の使用を本件商標の使用と認定した誤り)について

(1) 使用商標の使用態様

ア 商品及び包装への使用

(ア) タオル・セット商品等の写真(乙3)には,「熊のぬいぐるみが描かれたタオル(3枚)及び熊のぬいぐるみ風に造形されたハンガー(1個)から構成され,収納箱の上部に『TeddyBear』(since 1902)との表示が付されているタオル・セット商品」の写真,そのタオル・セット商品に梱包されているタオルのうち1枚の写真,及びタオル・セット商品の箱の蓋の写真が掲載されている。


 上記タオルは,熊のぬいぐるみが描かれ,その下に「TeddyBear」との表示が付され,更にその下に帯状に横方向に4つの「TeddyBear」との表示が付されており,そのタオルのタグには,熊のぬいぐるみが描かれ,その下に「TeddyBear」との表示が付されている。


 また,タオル・セット商品の箱の蓋の上面には,熊のぬいぐるみが描かれ,その下に「TeddyBear」との表示が付されており,箱の側面には,文字のみにより「TeddyBear」との表示が付されている。


(イ) 乙3の写真に撮影されたタオルのタグには,企画・発売元としてドウシシャの社名,住所が記載されている。


イ 商品カタログへの使用

(ア) 乙8の1枚目には,カタログ様の表紙に,上方から順に,「SPとギフトアイテムのお役立ちカタログ」「HS」「HITSELOR」(ヒットセラー)」「販促に役立つ,春夏注目アイテム」「2004 Spring & Summer」と記載されている。


 乙8の2枚目には,別紙「商品カタログ」のとおり,上方に文字のみによる「TeddyBear」の表示がされており,「熊のぬいぐるみが描かれたタオル(2枚)から構成され,収納箱の上部に『TeddyBear』(since 1902)との表示が付されているタオル・セット商品」(2種)と「熊のぬいぐるみが描かれたタオル(2枚又は3枚)及び熊のぬいぐるみ風に造形されたハンガー(1個)から構成され,収納箱の上部に『TeddyBear』(since 1902)との表示が付されているタオル・セット商品」(4種。その中には,乙3の写真に撮影された商品と同一の商品も含まれる。)の商品写真が掲載されており,各商品の名称の上段に小さく文字のみによる「TeddyBear」の表示が表記されている。


 乙9は,ドウシシャの株式会社クリエーションについての仕入先買掛元帳であり,平成16年3月22日,同月23日付けで「ヒットセラーカタログVOL VOL.1」(乙8にHITSELOR(ヒットセラー)」と記載されていることから,乙8のカタログを指すと解される。)を仕入れた旨記載されている。

(イ) 乙10の1枚目及び3枚目には,カタログ様の表紙(表面,裏面)に,いずれも「2004」「GOLDEN GIFT」と記載されており,3枚目の表紙(裏面)には,「社団法人全日本ギフト用品協会認定潤・P003」と表示されている。


 乙10の2枚目には,左側方に文字のみによる「TeddyBear」の表示がされており,また,「熊のぬいぐるみが描かれたタオル(2枚)から構成され,収納箱の上部に『TeddyBear』(since1902)との表示が付されているタオル・セット商品」(2種)と「熊のぬいぐるみが描かれたタオル(2枚又は3枚)及び熊のぬいぐるみ風に造形されたハンガー(1個)から構成され,収納箱の上部に『TeddyBear』(since 1902)との表示が付されているタオル・セット商品」(2種)(これらのタオル・セット商品には,乙3の写真に撮影された商品に梱包されているタオルと同一のタオルが梱包された商品も含まれている。)の商品写真が掲載されている(なお,指定商品の範囲に含まれないが,熊のぬいぐるみが描かれた食器の商品写真も掲載されている。)。


 乙11は,社団法人全日本ギフト用品協会のウェブページであり,株式会社エニシルの「Golden Gift」カタログ(乙10に「GOLDEN GIFT」と記載されていることから,乙10のカタログを指すと解される。なお,前記のとおり,乙10のカタログに掲載されたタオル・セット商品には,乙3の写真に撮影された商品に梱包されているタオルと同一のタオルが梱包された商品が含まれている。)に認定番号1003を承認,付与した旨記載されている。また,乙12は,株式会社エニシルのウェブページであり,同社が,カタログ及びインターネットによるギフト商品の卸売販売,販売促進に関する企画・販売を事業内容とし,「Golden Gift」カタログを発行していることが認められる。


(2) 指定商品への該当性

 タオルは,本件商標の指定商品中「布製身回品」の範疇に属する商品である。


(3) 使用商標と本件商標との社会通念上の同一性

 商標法50条には,同条所定の取消審判制度における登録商標の使用の範囲について,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」を含めて解釈すべきである旨が規定されている。


 一般に,商標は,取引の実情,商品の性質その他様々な事情に応じて,変更を加えて使用する必要性が高く,そのような必要性に対応するために,同条の解釈規定が設けられた趣旨に照らすならば,登録商標と全く同一の商標に限定して解釈するのは相当でなく,登録商標が,観念及び称呼を共通にする片仮名による表示と欧文字による表示を2段書きにした商標である場合に,欧文字部分のみからなる商標を使用したときも,特段の事情のない限りは,当該登録商標と社会通念上同一の商標が使用されたものと評価されるべきである。


 本件について,上記の観点から検討する。

ア 乙8の2枚目の上方に表示された文字のみによる「TeddyBear」の表示,乙8の2枚目の各商品の名称の上段に小さく表記された文字のみによる「TeddyBear」の表示及び乙10の2枚目の左側方に表示された文字のみによる「TeddyBear」の表示については,以下のとおり,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されたものというべきである。


 すなわち,本件商標は,「テディベアー」及び「TEDDYBEAR」の文字を上下二段に横書きしてなり,観念及び称呼を共通にする片仮名による表示と欧文字による表示を2段書きにした商標であるのに対し,使用商標は,本件商標の欧文字部分を,「T」と「B」以外の文字を小文字にして表示した点において相違があるものの,使用商標と本件商標は,観念及び称呼を共通にするから,社会通念上同一と評価することを妨げる特段の事情があるとは認められない。


 したがって,上記の使用商標と本件商標とは社会通念上同一であると認められる。


イ なお,乙8及び乙10には,カタログに掲載された商品及び商品の包装自体にも,それぞれ「TeddyBear」の表示があるが,同表示については,以下のとおりの理由から,商標の使用ということはできない。


 すなわち,後記3(2)記載のとおり,(i)「Teddy bear」(又は「teddy bear」,「テディベアー」,「テディベア」)は,我が国において,独特の形をした小熊のぬいぐるみを意味する普通名詞として知られるようになっている事情に照らすならば,本件商標は,当該商品の出所を表示するものと一般に認識されることが困難な語と解されること,また,(ii)本件カタログないし本件商品には,ぬいぐるみの熊風に造作されたハンガーが含まれていたり,タオルにもぬいぐるみの熊が描かれていること,さらに,(iii)セット商品を収納した箱の上面に「TeddyBear」(since 1902)の表示が付されているが,これは,上記各表示ないし語が小熊のぬいぐるみを意味するようになる契機となった,1902年におけるセオドア・ルーズベルトの後記逸話を示していると解するのが自然であること(仮に,上記表示部分が,カタログに掲載された商品が1902年から製造,販売されている趣旨を伝えるための表示であるとするならば,それは虚偽の表示に該当する。)等の事実に照らすならば,商品及び商品の包装自体にも「TeddyBear」の表示については,当該各商品の出所を識別するものとして表示されたものではなく,カタログないし同カタログに掲載された商品に描かれたり,造形されたりした熊が,「テディベア」との愛称で呼ばれる,独特の形をした小熊のぬいぐるみという意味における「テディベア」であることを示しているものと理解するのが合理的であり,需要者又は取引者においても,上記のように理解するのが自然である。


(4) 小括

 以上によれば,本件商標は,ドウシシャによって,本件商標の指定商品に属するタオルについて,商品に関するカタログに標章を付して頒布することにより使用されたものと認められる。そして,後記のとおり,少なくとも平成16年4月1日から平成17年3月31日までの使用についてドウシシャが被告に対して本件商標の使用料を支払っていることも合わせ考えると,少なくとも審判の請求の登録(平成19年3月26日)前3年以内に,本件商標は,ドウシシャによって,指定商品について使用されていたものと認められる。したがって,取消理由1は理由がない。 』


 と判示されました。