●平成15(ワ)6742販売差止等請求事件「包装ラベル付き細口瓶」(4)

明日は、弁理士試験の一次試験ですね!。受験生の皆様、睡眠をしっかりとって頑張ってください!。また試験場所には少なくとも一時間以上まえに着くようにしましよう。
  

 さて、本日は、『平成15(ワ)6742 製造販売差止等請求事件 実用新案権 民事訴訟「包装ラベル付き細口瓶」平成16年03月05日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/7EF3F9CA5C04431B49256EC3002925EE.pdf)について取り上げます。


 本日は、争点(4)の(細口瓶)についての判断について取り上げます。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高部眞規子、裁判官 東海林保、裁判官 瀬戸さやか)は、


4 争点(4)(細口瓶)について

(1) 構成要件A及びHの「細口瓶」の技術的意義

 ア 本件明細書には,細口瓶について,次のような記載がある(甲2)。

 (ア) 「本考案者の一部は,熱収縮フイルムの裏に接着剤を塗布して,表示が脱落しないラベルを開発したが,これより大きな曲面をもつ細口瓶に使用すれば,瓶の栓・肩の部分(以下,栓部分と称す)の密着性が不十分であり,栓部分のフイルムや印刷箇所に皺ができて,包装が運送中に破れやすい上に体裁が悪い。」(2欄14行ないし3欄5行)

 (イ) 「本考案者らは,細口瓶用の包装のためには,熱収縮率の大きいフイルムを使用する必要があり,しかも,その収縮方法に異方性を持たせ,縦方向を45%以上として,横方向を10%以下とすれば,前記のような問題点を解決できることを見い出し,本考案を完成した。」(3欄11ないし15行)

 (ウ) 「この縦方向の熱収縮率が45%未満の場合は,細口栓の部分が密着しなかったり,皺ができたりする。」(3欄40ないし41行)

 (エ) 「本考案ラベルは,細口瓶の胴体部分に殆ど密着させて巻き付けて使用する。そのため,胴部分に関しては,ラベルの皺をとることができる程度の熱収縮率があれば十分である。しかし,細口瓶の栓部分を密着包装するためには,45%以上の熱収縮率が必要となる。」(4欄9ないし14行)

 (オ) 「本実施例の熱収縮フイルムの代わりに縦方向の熱収縮率40%のポリ塩化ビニルフイルムを使用して同様に熱収縮により包装したが,栓部分の密着がなく,フイルムがその部分から浮いて体裁よく封印することができなかった。」(6欄9ないし13行)


 また,審判請求理由補充書(乙12)には,次のような記載がある。

 (ア) 「なお,一般に細口瓶とは,栓の外径が胴部の外径の70%以下のものを言います(日本薬局方等)。」(4頁7ないし8行)

 (イ) 「引用文献1のラベルの適用対象物は,細口瓶ではありません。本願考案は細口瓶の形状,すなわち,細口部分が胴部分の70%以下の直径という状態で発生する特別の技術的問題の解決であります。」(10頁3ないし5行)

 (ウ) 「引用文献1の熱収縮フイルムは,縦方向の熱収縮率45%以上及び横方向の熱収縮率に異方性がある特殊な熱収縮フイルムではありません。本願考案は,細口瓶で発生する特殊の課題をこの熱収縮率の異方性によって解決したものであります。」(10頁7ないし10行)


 ウ 上記ア(ア)の記載からすると,細口瓶とは,栓部と胴部の径に顕著な差がある結果,栓をした状態での瓶に肩部が形成されるような瓶を意味しており,上記ア(イ)(ウ),イ(ア)などの記載からすれば,本件考案は,このような栓部と胴部の径に顕著な差がある特定の形状の瓶に対して,その径の細い部分に対しても皺のない包装を可能とするために,適用する熱収縮フイルムの縦横の熱収縮率を特定の値の範囲になるようにしたものである。


   したがって,構成要件A及びHにいう「細口瓶」とは,本件明細書第3図に記載されているように,少なくとも栓部と胴部との径に顕著な差がある結果,栓をした状態での瓶に肩部が認められるような瓶を意味するものというべきである。


(2) 被告製品における細口瓶

  しかしながら,被告製品が実際に使用されている瓶は,栓部分と胴部分の径がいずれも等しいかあるいはほとんど差がなく,栓をした状態での瓶に肩部が認められない(甲9ないし13,乙2の2,乙3)。したがって,被告製品は,「細口瓶」には使用されていないので,被告製品が使用されている瓶が構成要件A及びHを充足するものとはいえない。


  また,前記2で認定したとおり,被告製品は100℃における縦方向の熱収縮率が45%以上とはいい得ないから,上記(1)ア(ウ)に記載されているとおり,細口瓶に使用した場合は,本件考案が想定する技術的問題の解決ができない。したがって,被告製品は,本件考案の実施にのみ使用するものであるとはいえない。


(3) 原告の主張について

  原告は,「細口瓶」とは,注出口の内径(口内径)が胴部分の直径の70%以下であることを典型事例として想定していると主張するが,本件考案の包装ラベルは,構成要件Eにあるように,「瓶の栓部分に対応する部分」が必要であり,当該包装は,栓をした細口瓶に対して施されるものと解されるから,注出口の内径は本件考案とは無関係である。


  また,原告は,栓(蓋)の上部が円錐状になっていて栓外径が変化している場合も含むと主張しており,被告製品が使用される瓶の中には,その栓の先端の一部分が他の部分に比して小径となっているものも存在する(甲9ないし11)。


 しかし,いずれも栓部と胴部の境界部付近においては,径に差がなく,栓をした状態での瓶に肩部は形成されていない。また,他の部分に比して小径となっている先端部分には,被告製品は包装されておらず,本件考案が課題の解決策として示す縦方向の熱収縮率が45%以上であることは全く必要のない状態である。したがって,これらの瓶は,「細口瓶」に該当しない。


5 結論

  よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,棄却することとして,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照してください。

 
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