●平成15(ワ)6742販売差止等請求事件「包装ラベル付き細口瓶」(3)

 本日も、『平成15(ワ)6742 製造販売差止等請求事件 実用新案権 民事訴訟「包装ラベル付き細口瓶」平成16年03月05日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/7EF3F9CA5C04431B49256EC3002925EE.pdf)について取り上げます。


 本日は、争点(3)の(均等論)について取り上げます。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高部眞規子、裁判官 東海林保、裁判官 瀬戸さやか)は、


3 争点(3)(均等論)について

 本件実用新案登録請求の範囲に記載された構成中に被告製品と異なる部分が存する場合であっても,

(i) 上記部分が本件考案の本質的部分ではなく,
(ii) 上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても,本件考案の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,
(iii) 上記のように置き換えることに,本件考案の属する技術の分野における通常の知識を有する当業者が,被告製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,
(iv) 被告製品が,本件考案の出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,
(v) 被告製品が本件考案の出願手続において実用新案登録請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,

 被告製品は,本件実用新案登録請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件考案の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。


(1) 本件明細書には,構成要件Dに関連して,以下の記載がある(甲2)。

ア 「本考案者らは,細口瓶用の包装のためには,熱収縮率の大きいフイルムを使用する必要があり,しかも,その収縮方法に異方性を持たせ,縦方向を45%以上として,横方向を10%以下とすれば,前記のような問題点を解決できることを見い出し,本考案を完成した。」(3欄11ないし15行)


イ 「本考案に使用する熱収縮フイルムは,ラベルとして使用した場合の縦方向の熱収縮率は100℃において45%以上,好ましくは55%以上であり,横方向の熱伸縮率は10%以下,好ましくは5%以下,さらに好ましくは2%以下である。この縦方向の熱収縮率が45%未満の場合は,細口栓の部分が密着しなかったり,皺ができたりする。また,横方向の熱収縮率が10%以上になるとラベルの表示が収縮によって変形する可能性がある。」(3欄35ないし43行)


ウ 「本考案ラベルは,細口瓶の胴体部分に殆ど密着させて巻き付けて使用する。そのため,胴部分に関しては,ラベルの皺をとることができる程度の熱収縮率があれば十分である。しかし,細口瓶の栓部分を密着包装するためには,45%以上の熱収縮率が必要となる。」(4欄9ないし14行)


エ 「本実施例の熱収縮フイルムの代わりに縦方向の熱収縮率40%のポリ塩化ビニルフイルムを使用して同様に熱収縮により包装したが,栓部分の密着がなく,フイルムがその部分から浮いて体裁よく封印することができなかった。」(6欄9ないし13行)


(2) このように,本件明細書において,熱収縮フイルムの100℃における縦方向の熱収縮率を45%以上,横方向の伸縮率を10%以下とすることが,細口瓶の栓部分に対しても密着包装ができるという技術的課題を解決するための手段であることが記載されている。


 また,熱収縮率が45%未満の場合には,上記技術的課題を適切に解決できないこと,実際に熱収縮率40%のフイルムを使用した場合は,体裁良く封印できなかったことが記載されている。審判請求理由補充書及び意見書においても同様であることは,前記2(1)認定のとおりである。


  したがって,これらの記載からすると,原告は,縦方向の100℃における熱収縮率が45%未満のものについては,意識的に除外していたと認められる。


 また,100℃における熱収縮率が45%未満の場合には技術的課題を解決できないのであるから,この数値限定には臨界的意義があり,「縦方向の100℃における収縮率が45%以上」という要件は,本件考案の本質的部分であると解される。


(3) 以上のとおり,本件においては,均等の要件のうち,前記(i)の要件(本質的部分ではないこと)及び前記(v)の要件(意識的に除外されたものでないこと)を充たさないから,被告製品が本件考案と均等であるとはいえない。 』


と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸;<気になった記事>

●『任天堂、コントローラの特許侵害訴訟で2100万ドルの支払命令』http://mainichi.jp/life/electronics/cnet/archive/2008/05/16/20373383.html
●『任天堂、「Wii」による特許侵害で2100万ドルの損害賠償命令Bloomberg他) 』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=3488
●『任天堂に22億円支払い命令、特許侵害訴訟で米連邦地裁 』http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080515AT1D150GR15052008.html
●『万能細胞 特許管理会社設立へ』http://www.nhk.or.jp/news/t10014635721000.html
●『米貿易委がエルピーダなど調査、半導体特許侵害の疑い』http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080516AT2M1600L16052008.html
●『日亜化学、英国でも韓国ソウル半導体を特許侵害で提訴(日亜化学)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=3493