●平成9(行コ)58 特許権 行政訴訟 平成9年10月01日 東京高裁

 今日は、GW最終日ですが、やっとGWらしい天気になりましたね!。今日は、ガーデニングをしたり、近場にサイクリングに行ってこようと思います。


 さて、本日は、『平成9(行コ)58 特許権 行政訴訟 平成9年10月01日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/021545ADC0F2405949256A7700082E30.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶理由通知後、指定期間内でも、特許査定が確定した後にされた分割出願は、不適法であって不受理とした特許庁の処分を支持した一審判決の取消しを求めた控訴審で、棄却された事案です。


 つまり、東京高裁(裁判官 牧野利秋 石原直樹 清水節)は、


『一 当裁判所も、本件原出願について特許査定がされ、その謄本が控訴人に送達されたことにより、特許査定が確定した後にされた本件分割出願は不適法であって、その瑕疵を補正する余地がないものであり、したがって、本件分割出願を不受理とした本件処分は適法であって、控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。


 その理由は、当審における控訴人の主張につき次のとおり判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第三 争点についての判断」(原判決二一頁一〇行から四〇頁九行まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決三二頁四行目の「規定していた」を「規定している」と、四〇頁一行目の「特許査定」を「特許査定謄本」と各改める。


二 控訴人の主張に対する判断

1 法の規定上、願書に添付した明細書又は図面の補正が可能な時期は、特許査定が確定するまでに限られるものと解すべきことは原判決説示(原判決二一頁一一行から三〇頁一行まで)のとおりであるところ、法四四条一項は、「願書に添付した明細書又は図面について補正をすることができる時又は期間内に限り」分割出願をすることができるものとしているのであるから、分割出願をすることができる時期も原出願の特許査定が確定するまで、すなわち、出願人に対する特許査定謄本の送達時までに限られるものと解すべきことは同項の解釈上当然であり、法は、分割出願という法的利益に対し、時期的な面においては、明細書又は図面についてする補正と同様の範囲においてのみ、その実現の機会を与えているものと解すべきである。


 一方、法五〇条の定める拒絶理由の通知及び相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えることが、拒絶査定をしようとする場合に履践すべき手続であり、したがって、拒絶査定をする場合には、指定期間の経過を待ってこれをすることが出願人の利益を保護するために必要であるが、特許査定をする場合に、なお指定期間の経過を待たなければならない理由はなく、指定期間の経過前であっても、特許査定及びその査定謄本の送達ができるものと解すべきことは、原判決説示(原判決三二頁一行から三四頁七行まで)のとおりであり、指定期間の経過を待たなければ特許査定ができないとする規定は法に存在しない。


 その限りでは、出願人の与り知らぬ審査官の時期的裁量を伴う手続行為によって、補正及び出願分割の終期が定まることは、法の予定しているところであるといわなければならない。


 控訴人は、分割出願制度は補正手続制度とリンクし、機能的に補完し合う関係にあり、そうだとすれば、法五〇条の趣旨及び分割出願制度の立法趣旨は、出願人の分割出願の法的利益をも保護するものであり、したがって、単に原出願の手続のみを考慮して、指定期間経過前の査定(特許査定又は拒絶査定)が許されるか否かを論ずるのは誤りである旨主張する。


 しかし、前説示から明らかなとおり、法は、将来分割出願がされることを見越してまで、特許出願につき特許査定をするべき場合に査定を遅らせることを要求しているものではない。


 控訴人の主張は採用できない。


2 控訴人は、本件のように、いわゆる手交手続によって拒絶理由通知書が控訴人に交付されたケースにおいて、指定期間内に特許査定謄本の送達がされた割合等を承知していないとか、特許査定謄本の送達の場合と、未だ分割出願をする余地を残す出願公告決定謄本の送達の場合とを同列に論ずべきでもないなどとして、出願人に対し、指定期間経過前に早期に特許査定謄本の送達があることを前提として、分割出願の準備を期待するのは酷であると主張する。


 しかし、原判決説示(原判決三六頁三行から四〇頁五行まで)のとおり、控訴人は、本件のように出願公告決定謄本の送達後に、手交手続によって拒絶理由通知を受けた場合には、事前打ち合せに基づく手続補正書の提出により、拒絶理由が解消され、指定期間の経過前に特許査定謄本の送達を受けることもありうることは十分予期していたと推認することができ、これをもって控訴人に酷な措置というに当たらない。


 控訴人は、審査官が拒絶理由通知書の手交をするに当たって、法五〇条に定める相当の期間として六〇日を指定したことを非難するが、手交手続は出願人の協力を得て行われる制度的な運用方法なのであるから、出願人と事前の打ち合せを経ていたとしても、何らかの理由によって手続補正書の早期提出に齟齬を来す可能性がないとはいえず、そうであれば、相当の期間として十分な日数を定めることは出願人にとって有利な措置であるといえても、これをもって不相当な措置であるとは到底いうことができない。


 控訴人において分割出願の可能性を考慮していたのであれば、この期間を利用して最適の手段を採ることができたはずであり、これをしなかった責を他に転嫁するような控訴人の主張は採用に値しない。


三 以上のとおりであるから、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。