●平成20(ネ)10002損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟

Nbenrishi2008-04-28

 本日は、『平成20(ネ)10002 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成20年04月23日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080425132744.pdf)について取り上げます。


 本件は、事案の概要に記載されている通り、控訴人が,被控訴人は試作品の製作又は製造をするに当たり,控訴人の特許出願であって出願公開前のものに係る発明の技術情報を使用したにもかかわらず,同技術情報に係る秘密保持契約の締結を怠って控訴人に損害を与えた等と主張し,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求し、棄却された原判決の取消しを求めた控訴審であり、棄却された事案です。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官石原直樹、裁判官杜下弘記、裁判官古閑裕二)は、


『1 当裁判所も,控訴人の被控訴人に対する本訴請求は理由がないと判断する。


 その理由は,2において当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。


2 当審における控訴人の主張に対する判断

 控訴人は,控訴人の出願公開前の特許出願である特願989号及び特願267号に係る発明の技術情報に触れた被控訴人は,秘密保持義務を負うものと主張するところ,その主張の趣旨が,被控訴人による試作品の製作が,特願989号及び特願267号に係る発明の技術情報を漏洩したことに当たり,被控訴人が当該「秘密保持義務」に直接違反したというものであるのか,当該「秘密保持義務」が,秘密保持契約締結義務の根拠であるとするものであるのか,必ずしも判然としないが,いずれにせよ失当である。



 すなわち,特許法その他の法令には,出願公開前の特許出願に係る発明の技術情報に触れた者に対し,秘密保持義務を負わせる旨の規定は存在せず,また,特許法が,特許庁長官は,特許出願の日から一定の期間が経過したときは出願公開をしなければならないと規定しているからといって,当該期間経過前に当該特許出願に係る発明の技術情報に触れた者が,出願人に対し,私法上の義務として,当然に秘密保持義務を負うと解することもできない。


 したがって,控訴人の主張に係るような「秘密保持義務」なるものを観念することができないから,控訴人の主張は失当というほかはない。


第4 結論

 以上によれば,控訴人の被控訴人に対する請求は理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は正当である。


 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。