●ジュリスト臨時増刊 平成19年度重要判例解説

 「ジュリスト臨時増刊 平成19年度重要判例解説」を購入しました。

 知財分野の判決例としては、次の4つが紹介されています。

(1)最高裁平成19年11月8日第一小法廷判決「インクタンク事件」。
(2)最高裁平成19年12月18日第三小法廷判決「シェーン事件」
(3)知財高裁平成19年6月27日第3部判決「ミニマグライト事件」
(4)知財高裁平成19年9月20日第4部判決

 最初の3件については、本日記でも取り上げています。4件目については、後で取り上げたいと考えます。


 なお、特許消尽論の「インクタンク事件」と、著作権の「シェーン事件」は、今年の新司法試験の論文試験の一番のヤマ問題ではないでしょうか!(言ったもの勝ちですので♪)


 「インクタンク事件」は、弁理士試験の論文試験で聞かれるかもしれないですね!


 それは、別として、本書の第286〜291頁に掲載されている、相澤英孝教授の「知的財産法判例の動き」という論文の「4.特許に関する手続法」から読み始めると、287頁のところの内容が気になりました。


 つまり、本書の287頁で、

「分割出願は、特許法上、補正とは異なるものと規定され、その要件についても、新規事項の追加といった要件は課されていない。それにもかかわらず、知財高裁平成19.5.30(平成18年(ネ)第10077号,判時1986号124頁)は、分割出願に関して、原出願後の平成5年の改正法(法律第26号)による補正の制限を適用して、分割出願を不適法なものとしている。分割出願は新たな出願であり、審査手続の遅延を考慮すべきものではなく、審査を促進するための補正の制限規定を適用することは、技術開発に則した特許権を取得することを不可能にするおそれがあり、疑問がある。」

と述べられています。


 弁理士や特許実務担当者からすると、分割出願は独立した出願手続であり、補正の手続とは異なるものの、補正と同様に遡及効を有する以上、第三者に不利益を与えないよう補正の制限と同様に原出願の明細書または図面に開示されていない新規事項は追加できない、と考えます。


 なお、分割の審査基準(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_v-1.pdf)には、「分割出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項が、「原出願の分割直前の明細書、特許請求の範囲又は図面」又は「原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面」に記載された事項の範囲内であるか否かの判断は、新規事項の判断と同様に行う。」と記載されています。


  ちなみに、上記知財高裁判決例は、本日記の昨年の6/8(http://d.hatena.ne.jp/Nbenrishi/20070608)に取り上げた、『平成18(ネ)10077 特許権侵害差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟「インクジェット記録装置用インクタンクの再利用品」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070607095821.pdf)であります。