●平成19(行ケ)10055 審決取消請求事件 特許権「リチウム金属分散

 本日は、『平成19(行ケ)10055 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「リチウム金属分散系である二次電池用アノード」平成20年02月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080305133001.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、審判請求時に請求項19について行った補正が、昨日紹介した事案と同様に、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の限定的減縮に該当しない、とした特許庁の判断が支持された点で参考になる事案かと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 田中信義、裁判官 古閑裕二、裁判官 杜下弘記)は、


1 取消事由1(本件補正についての判断の誤り)について


 特許法17条の2第4項2号は,「特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と定めているから,同号の事項を目的とする補正とは,特許請求の範囲を減縮するだけでなく,発明を特定するために必要な事項を限定するものでなければならないと解される。


 また,「発明を特定するために必要な事項」とは,特許法「第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項」とあることから,特許請求の範囲中の事項であって特許を受けようとする発明を特定している事項であると解される。


(1) 本件出願の請求項19は,前記第2の2のとおりであるところ,アノードの「ホスト材料の中にリチウム金属を分散する」こと及び「ホスト材料中とその中に分散された前記リチウム金属」は記載されているが,「アノード内のリチウム金属の量」については,全く記載されていない。


 原告は,特許請求の範囲中の記載に「(アノード内の)リチウム金属」に関する言及がある場合には,その量に関する事項は,「(アノード内の)リチウム金属」という概念に内在する特定事項であると主張する。


 しかし,「リチウム金属」という記載では,物質の種類を特定したにすぎず,その「量」については,何らの言及がないのであるから,上記の「(アノード内の)リチウム金属」なる記載が「リチウム金属の量」についての特定を含むものではないことは一般的な用語法に照らして明らかであるというべきであって,原告の主張を採用することはできない。


 そうすると,本願発明19の特定事項として,「アノード内のリチウム金属の量」が含まれていない以上,請求項19に係る本件補正は,発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。


(2) 原告は,ホスト材料が炭素以外の種々のものである場合に,どのような「量」が「中に入り込む,…合金を作る,又は…吸着されるに十分な最大の量以下」であるかについては,当業者は個々のホスト材料ごとに容易に特定し,検証することができると主張するが,「アノード内のリチウム金属の量」が本願発明19の特定事項として含まれているか否かの問題と「量」の特定の容易性の問題とは関係がないから,原告の主張は失当である。


(3) 以上のとおり,請求項19に係る補正は,特許請求の範囲を減縮するものであったとしても,発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから,特許法17条の2第4項2号の事項を目的とするものとはいえず,本件補正を却下した審決の判断に誤りはない。


3 結論

 以上に検討したところによれば,審決取消事由にはいずれも理由がなく,審決を取り消すべきその他の誤りは認められない。


 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 』

 と判断されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸;<気になった記事>

●『MPEG-2 Patent Owners Sue Target Corporation for MPEG-2 Patent Infringement』http://www.mpegla.com/news/n_08-04-21_pr.pdf
●『アップルも仮想世界への進出を検討?--特許申請文書から憶測』http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20371815,00.htm