●平成18(行ケ)10055審決取消請求事件 特許権「半導体装置および半

Nbenrishi2008-04-20

 本日は、『平成19年09月12日 知的財産高等裁判所 平成18(行ケ)10055 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟半導体装置および半導体装置作製方法」平成19年09月12日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070913152207.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、審判請求時に行った補正4が,本願明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,補正前発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において,その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものである特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったものの、新たな発明特定事項を追加する補正で、その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものではないので、改正前特許法17条の2第3項2号に規定する、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮違反である、と判断した特許庁の審決が支持された点で、参考になる事案かと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 三村量一、裁判官 上田洋幸)は、


(2) 改正前特許法17条の2第3項4号の該当性(特許請求の範囲の減縮について)


ア 原告は,「補正4」について,補正後の請求項1において,補正前の請求項3に「第1の電源制御回路」及び「第2の電源制御回路」を付加した点は,第3のPチャネル型TFT及び第3のNチャネル型TFTのゲート電極に何が接続されるのか限定していなかったものに対して,接続される対象として「第1の電源制御回路」及び「第2の電源制御回路」を加えたものであるから,特許請求の範囲の減縮に該当し,また,補正前の請求項3に係る発明及び補正後の請求項1に係る発明は,共に,半導体装置であって産業上の利用分野は共通し,結晶性シリコンで構成される薄膜半導体集積回路の消費電力の低減に関し,薄膜トランジスタのOFF時のリーク電流を低減するものであって,解決しようとする課題も共通するから,「補正4」は,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において,補正前の請求項3に係る発明の構成に欠くことができない事項の一部を限定するものであると主張する。


 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。


イ 改正前特許法17条の2第3項2号は,特許請求の範囲の減縮であって,補正前発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において,その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものに限る旨を規定する。


 そこで,「補正4」が同項2号の要件を満たすためには,同補正において付加した「第1の電源制御回路」及び「第2の電源制御回路」との構成要素が,補正前の請求項3における「発明の構成に欠くことができない事項」に含まれること,及び,補正によって,その事項を限定するものといえること(すなわち,補正前の請求項に含まれる包括的抽象的な解決手段たる上位概念を,具体的な解決手段たる下位概念とすることよって,当該事項を限定すること)が必要である。


 本件についてこれをみると,補正前の請求項3には,電源に関する技術的事項は何ら特定されておらず,駆動用の電源が「第1の電源制御回路」及び「第2の電源制御回路」によって制御の対象とされることは何ら記載されていないから,包括的抽象的な解決手段たる上位概念である「電源」に該当するものは,何ら記載がないことになる。


補正後の請求項1における,「第1の電源制御回路と第2の電源制御回路」の記載,及び「第3のPチャネル型TFTのゲート電極」は「第1の電源制御回路」に,「第3のNチャネル型TFTのゲート電極」は「第2の電源制御回路」に,それぞれ「接続され」るとの態様を示した記載から直ちに,当該電源制御回路が駆動用の電源を制御する回路であると理解することもできない。


 上記によれば,原告主張は失当であり,採用することはできない。

(3) 小括

 上記のとおり,補正却下の決定の誤りに係る原告の主張は理由がない(なお,補正を却下した決定に誤りはないから,同決定の違法を前提とする審決に判断遺脱があるとする原告の主張も理由がないことに帰する。)。


2 結論


 以上によれば,原告のその余の主張につき判断するまでもなく,原告が審決を違法として取り消すべき理由として主張する点はいずれも理由がなく,その他,審決に,これを取り消すべき誤りは見当たらない。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸;<気になった記事>

●『特許法等の一部を改正する法律(平成20年4月18日法律第16号)』http://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/tokkyohoutou_kaiei_200201.htm
●『特許関係料金、商標関係料金引き下げへ!』http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/puresu/press_tokkyohoutou_ryoukin.htm
●『期間延長請求書の提出方法について』http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/ryoukin/tokkyoryou_enchou.htm
●『2007年末までの中国特許出願数400万件を突破』http://www.newschina.jp/news/%E7%9F%A5%E8%B2%A1%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%BA%A6/%E7%9F%A5%E7%9A%84%E8%B2%A1%E7%94%A3%E6%A8%A9/45578
●『iPS細胞の特許 世界で共有できないか』http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200804200122.html