●平成19(行ケ)10230 審決取消請求事件 商標権「NUK」

 本日は、『平成19(行ケ)10230 審決取消請求事件 商標権「NUK」平成20年02月21日知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080221164645.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標法4条1項11号を理由とする無効審決の取り消しを求めた訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、太字斜体ゴシックで横書きされた「NUK」の欧文字の周囲を略楕円形で囲った本件商標と、中央に配されたゴシック体で横書きされた「LUK」の欧文字の周囲を楕円形で囲った引用商標とが非類似と判断している点で、参考になる事案かと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 三村量一、裁判官 上田洋幸)は、


『当裁判所は,本件商標の登録が商標法4条1項11号に違反してされたものではないとした審決の認定判断には,結論において誤りはないと判断する。その理由は,次のとおりである。


1 本件商標と各引用商標との外観の類否について


(1)本件商標と各引用商標とは,構成中の欧文字3文字中,語頭において「N」と「L」の差異を有するところ,3文字という短い文字構成における,印象に残りやすい先頭文字における差異は,視覚上,大きなものというべきであるから,本件商標と各引用商標が外観において類似するということはできない。


(2) 原告は,「N」と「L」は,いずれも直線で構成されており,その字形が近似したものであるとした上で,本件商標と引用商標1は,他の配列構成文字「U」「K」及び欧文字3文字を楕円で囲んだ構成を共通にするものであるから,視覚上において極めて似かよったものと印象付けられると主張する。


 しかし,「N」が左右両端部の縦線の間に左上と右下を結ぶ斜線を配した構成であるのに対して,「L」は左端部の縦線及び底部の横線(下線)を配し,中央部,上部及び右端部を空白とする構成であり,両者の字形は,全体形状において大きく異なる。本件商標及び引用商標1においては,いずれも,中央に配置された文字部分が看る者の注意をひくものであって,要部を構成するものであるところ,3文字中,最も看る者の注意をひく頭文字において上記のとおり構成を大きく異にするものであるから,本件商標と引用商標1が外観において類似するということはできない。原告の主張は,失当である。


2 本件商標と各引用商標との称呼の類否について

 (1) 本件商標及び各引用商標か1 らは,それぞれ「エヌユーケー」及び「エルユーケー」の称呼を生ずるところ,共に欧文字を綴り合わせて一連の成語を形成するものではなく,アルファベット3文字を羅列してなるものであるから,通常は,一文字一文字を区切って明確に発音されるというべきであり,その場合に,本件商標は「エヌ」,「ユー」,「ケー」,各引用商標は「エル」,「ユー」,「ケー」とそれぞれの文字ごとに区切って発音されるのが自然である。


 そして,本件商標と各引用商標とで相違する語頭部「エヌ」と「エル」における「ヌ」音と「ル」音の間では,「ヌ」音の子音は鼻音であるのに対し,「ル」音の子音は弾音であって,両音は異なるから,両商標は,文字ごとに区切って発音されるものであることと相まって,称呼において,音感,音調が異なり,類似するということはできない。


 原告は,欧文字が日常的に用いられ親しまれている今日の取引実情の下では,本件商標及び各引用商標は,「エヌユーケー」「エルユーケー」とよどみなく一連に称呼されると主張する。


 しかし,そもそも,アルファベットに,「a,e」,「c,d,g,t」など,これを単独で発音する場合には,音声として相紛らわしい文字が存在することは,これを用いる者にとって周知の事項である。本件商標や各引用商標を口頭で伝達する際,商標を構成する個々の欧文字を誤りなく伝達するためには,文字ごとに区切って明瞭に発音するのが,取引者の通常の態様というべきである。したがって,ことさら、相互に聞き誤られるような称呼が生ずることを前提として,両商標が相紛れるおそれがあるとする原告の上記主張は,その前提において採用できない。


(2) 原告は,本件商標からは「エヌユーケー」のほかに「ヌク」「ナック」の称呼が生じ,各引用商標からは「エルユーケー」のほかに「ルク」「ラック」の称呼が生ずるものであるところ,「ヌク」と「ルク」,「ナック」と「ラック」とは相紛れるものであると主張する。


 確かに,本件商標からは,「エヌユーケー」のほかに,その構成文字をそのままローマ字読みにより「ヌク」の称呼,ドイツ語読みにより「ヌーク」の称呼を生ずる余地があり,また,各引用商標からは,「エルユーケー」のほかに「ルク」「ルーク」の称呼を生ずる余地がある(もっとも,本件商標及び各引用商標から,「ナック」「ラック」の称呼を生ずると認めることはできない。ちなみに,原告は「Luk」と表記して「ルーク」の称呼を生ずるものである。)。


 しかし,本件商標の「ヌク」「ヌーク」の称呼と各引用商標の「ルク」「ルーク」の称呼を対比すると,両者は,2音ないし長音を含む3音という短い称呼であるところ,これを聞く者にとって,最もその注意をひく語頭部の音である「ヌ」と「ル」において,上記の「エヌ」と「エル」との対比において指摘したのと同様の相違点があるから,両者が称呼において類似するということはできない。


(3) そうすると,本件商標と各引用商標が,称呼において類似するものではないとした審決の判断は,結論において相当である。


3 結論


 上記によれば,本件商標と各引用商標とは,外観及び称呼において類似するものではなく,また,本件商標と各引用商標はいずれも特定の観念を有しない造語であるから,両者が観念において類似するということもできない。


したがって,審決が,本件商標と各引用商標は,外観,称呼及び観念のいずれからみても非類似の商標であるから,本件商標の指定商品中「陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,自動車並びにその部品及び附属品」についての登録を,商標法4条1項11号に違反してされたものということはできないとした判断に誤りはない。


 よって,原告の請求は理由がないので,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


詳細は、本判決文を参照してください。