●平成17(ワ)16218 損害賠償請求事件 著作権「土地宝典」(3)

 本日も、『平成17(ワ)16218 損害賠償請求事件 著作権「土地宝典」平成20年01月31日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080205115907.pdf)について取り上げます。


 本日は、争点6〜8について取り上げます。



 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 設樂隆一、裁判官 関根澄子、裁判官 古庄研)は、争点6〜8について、


5 争点6(著作権法38条4項の趣旨は法務局窓口での本件貸出に及ぶか)について


 被告は,著作権法は,38条4項に基づいて書籍等を借り受けた者が,私的使用以外の目的で複製した場合についても,著作物の貸出しが著作権を侵害することを予定していないと解するのが相当である,と主張する。


 しかし,著作権法38条4項は,昭和59年の法改正により貸与権(26条の2)が創設されたのに伴って,改正前から行われていた図書館,視聴覚ライブラリー等の社会教育施設やその他の公共施設における図書や視聴覚資料の貸出を,地域住民の生涯学習の振興等の観点から,改正後も円滑に行うことができるようにする目的で,貸与権を制限することにしたものである。


 このように,著作権法38条4項は,貸与権との関係を規定したものにすぎず,複製権との関係を何ら規定したものではないのであって,ましてや,貸出を受けた者において違法複製が予見できるような場合にまで,貸出者に違法複製行為に関して一切の責任を免れさせる旨を規定しているとは到底解することはできない。被告の主張は採用することができない。


 また,本件土地宝典については,その利用者である不動産関係業者や金融機関の関係者が業務上利用する目的で,貸出を受けた上でこれを複写することが多いことは明らかであるから,これらの行為が著作権法30条1項の私的使用目的での複製に該当しないことも自明である。この点に関する被告の主張も採用することができない。


6 争点7(二次的著作物の原著作者の複製についての許諾権により違法性が阻却されるか)について


 被告は,原著作者である被告は,本件土地宝典について二次的著作権を有する者と同一の種類の権利を有するから(著作権法28条),複製についての許諾権も有していることになり,不特定多数の第三者が法務局において本件土地宝典を複写したことについて被告に幇助行為があったと観念できるとしても,違法性が阻却されるため,不法行為は成立しない,と主張する。


 しかし,本件土地宝典が公図の二次的著作物であり,被告が公図の原著作者であるとしても,本件土地宝典の複製には,原著作者の許諾とともに,二次的著作物の著作権者である原告らの許諾を要するのであるから,原告らの許諾を得ずに複製を行うことが違法であることは明らかであり,被告の主張は採用することができない。


7 争点8(信義則違反の有無)について


 被告は,原告らが,本件土地宝典の著作権を損害賠償請求権と共に譲り受け ,その数年後に権利を行使したのは,信義則に反し,権利の濫用である,と主張する。


 しかし,本件に顕れたすべての証拠を精査検討しても,原告らの損害賠償請求権の行使が,信義則に反し権利の濫用に当たると認めるに足りる証拠はなく,被告の主張は失当である。

 
 被告は,Cが法務局における第三者による無断複製行為を黙認していたと主張する。


 しかし,そのような事実を認めることができないことは既に述べたとおりである。


 また,権利者が権利を行使するかしないか,行使するとしてもそれをいつ行使するのかは権利者の自由であり,権利者が一定期間権利を行使しなかったことは消滅時効制度によって権利者に不利益となるのが原則であり,権利の濫用を基礎付ける有力な事情の一つとして評価されるのは例外的な場合に限られるというべきである。


 本件においても,原告らは ,後に述べるとおり ,一定期間権利を行使しなかったことにより,消滅時効制度により不利益を被っているのであり,それ以上に,これを権利の濫用を基礎付ける有力な事情の一つとして評価して,自ら不法行為を継続した被告を救済すべき事情は見当たらない。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。