●平成19(ワ)13265 損害賠償等請求事件 商標権「貴鶏屋」

  本日は、『平成19(ワ)13265 損害賠償等請求事件 商標権 民事訴訟「貴鶏屋」平成20年01月31日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080131144814.pdf)について取り上げます。


 本件は、「貴鶏屋」の登録商標の商標権者である原告が,「喜度利家」の標章を使用して営業する被告に対し商標権侵害に基づく損害損害賠償を求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、両商標は、称呼は共通するものの、外観が全く異なり、類似の観念も生じることがないため、両者は容易に区別でき、誤認混同は生じないので、全体として非類似であると判断した点で、参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官 田中俊次、裁判官 高松宏之、裁判官 西理香)は、

1 争点(1)(本件登録商標と被告標章との類否)について

(1) 証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば,本件登録商標は,漢字「貴鶏屋」から成り,「きどりや 」,「きけーや」等の称呼を生じること,被告標章は,漢字「喜度利家」から成り「きどりや」との称呼を生じることが認められる。


 被告は,被告標章は「きどりゃあ」と読むと主張し,なるほど,第1回口頭弁論調書末尾添付の被告の名刺に「今日もきどりゃあへ来てちょーよ」「マイク片手にきどりゃあ」との記載があることなど弁論の全趣旨によれば,被告自身が被告標章を「きどりゃあ」と呼び,これに伴って,被告経営の居酒屋を頻繁に訪れる地元名古屋市の常連客であれば,被告標章を「きどりゃあ」と呼ぶことが多いであろうことは窺える。したがって,被告標章は「きどりゃあ」との称呼も生じるものというべきである。


 しかし,被告標章は,これに「きどりゃあ」との振り仮名が付されているのであれば格別,そうでない以上,被告経営の居酒屋の所在地が名古屋市であることを考慮しても,居酒屋を訪れる一般の客等,本件登録商標の指定役務である「飲食物の提供」に係る需要者は,通常であれば被告標章をその当て字の通常の読みに従い「きどりや」と呼ぶものと認めるのが相当である。したがって,被告標章は,「きどりや」との称呼も生じ,本件登録商標と称呼を共通にする。

 なお,観念についてみると,本件登録商標と被告標章はいずれも当て字ではあるものの,本件登録商標「貴鶏屋」の「貴」には,(i) とうといこと。(ア)身分が高いこと。(イ)高価なこと。(ii) 相手に関する事柄に冠して敬意を表す語,との意味があること(広辞苑第5版 ),原告が居酒屋を経営していることからすると,本件登録商標からは,敢えて言えば「高価な焼き鳥屋」ほどの観念が生じ得るのに対し,被告標章からは特別な観念が生じるものとは認められない。


(2) 上記事実によると,本件登録商標と被告標章とでは,その外観を全く異にする上,類似の観念が生じるものでもないから,両者は容易に区別することができ,誤認混同は生じないというべきである。


 したがって,本件登録商標と被告標章とは,称呼に共通するものがあるとしても,全体として類似するものとは認められない。


2 結論

 以上によれば,原告の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


 詳細は,本判決文を参照してください。