●昭和59(オ)1204 音楽著作権侵害差止等「クラブキャッツアイ事件」

  本日は、『昭和59(オ)1204 音楽著作権侵害差止等 著作権 民事訴訟「クラブキャッツアイ事件」昭和63年03月15日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 福岡高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120549006120.pdf)について取り上げます。


 本件は、カラオケスナック等におけるカラオケ演奏を伴奏とする客の歌唱も、スナック経営者による歌唱と同視しうるものであり、演奏権の侵害になると判示した最高裁判決です。


 つまり、最高裁第三小法廷は、


『                   主    文

     原判決中カラオケ演奏を伴奏とする歌唱による演奏権侵害を理由とする被上告人の損害賠償請求にかかる部分に関する本件上告を棄却する。

     その余の本件上告を却下する。
     訴訟費用は上告人らの負担とする。         
                    理    由

 上告代理人安部千春の上告理由について

 原審の適法に確定したところによれば、上告人らは、上告人らの共同経営にかかる原判示のスナツク等において、カラオケ装置と、被上告人が著作権者から著作権ないしその支分権たる演奏権等の信託的譲渡を受けて管理する音楽著作物たる楽曲が録音されたカラオケテープとを備え置き、ホステス等従業員においてカラオケ装置を操作し、客に曲目の索引リストとマイクを渡して歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による演奏を伴奏として他の客の面前で歌唱させ、また、しばしばホステス等にも客とともにあるいは単独で歌唱させ、もつて店の雰囲気作りをし、客の来集を図つて利益をあげることを意図していたというのであり、かかる事実関係のもとにおいては、ホステス等が歌唱する場合はもちろん、客が歌唱する場合を含めて、演奏(歌唱)という形態による当該音楽著作物の利用主体は上告人らであり、かつ、その演奏は営利を目的として公にされたものであるというべきである。


 けだし、客やホステス等の歌唱が公衆たる他の客に直接聞かせることを目的とするものであること(著作権法二二条参照)は明らかであり、客のみが歌唱する場合でも、客は、上告人らと無関係に歌唱しているわけではなく、上告人らの従業員による歌唱の勧誘、上告人らの備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲、上告人らの設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて、上告人らの管理のもとに歌唱しているものと解され、他方、上告人らは、客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ、これを利用していわゆるカラオケスナツクとしての雰囲気を醸成し、かかる雰囲気を好む客の来集を図つて営業上の利益を増大させることを意図していたというべきであつて、前記のような客による歌唱も、著作権法上の規律の観点からは上告人らによる歌唱と同視しうるものであるからである。


 したがつて、上告人らが、被上告人の許諾を得ないで、ホステス等従業員や客にカラオケ伴奏により被上告人の管理にかかる音楽著作物たる楽曲を歌唱させることは、当該音楽著作物についての著作権の一支分権たる演奏権を侵害するものというべきであり、当該演奏の主体として演奏権侵害の不法行為責任を免れない。


 カラオケテープの製作に当たり、著作権者に対して使用料が支払われているとしても、それは、音楽著作物の複製(録音)の許諾のための使用料であり、それゆえ、カラオケテープの再生自体は、適法に録音された音楽著作物の演奏の再生として自由になしうるからといつて(著作権法(昭和六一年法律第六四号による改正前のもの)附則一四条、著作権法施行令附則三条参照)、右カラオケテープの再生とは別の音楽著作物の利用形態であるカラオケ伴奏による客等の歌唱についてまで、本来歌唱に対して付随的役割を有するにすぎないカラオケ伴奏とともにするという理由のみによつて、著作権者の許諾なく自由になしうるものと解することはできない。


 右と同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、これと異なる見解に立つて原判決を論難するものであって、採用することができない。


 なお、上告人らは、原判決中カラオケ演奏を伴奏とする歌唱による演奏権侵害を理由とする被上告人の損害賠償請求を除くその余の請求にかかる部分については、上告理由を記載した書面を提出しない。

 よつて、民訴法四〇一条、三九九条、三九九条ノ三、九五条、八九条、九三条に従い、上告理由に対する判断につき裁判官伊藤正己の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。