●平成18(ワ)8621商標権侵害差止等請求事件「マイクロクロス」(2)

  本日は、昨日に続いて『平成18(ワ)8621 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟「マイクロクロス」平成19年12月13日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071213154152.pdf)について取り上げます。


 本日は、争点(3)の「原告マイクロクロス社に対する不法行為の成否」を取り上げます。


 争点(3)では、被告の行為が本件商標権を侵害するものであるとしても,通常使用権を侵害するものとはいえないとする判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官山田知司 裁判官高松宏之 裁判官村上誠子)は、

4 争点(3)(原告マイクロクロス社に対する不法行為の成否)について


(1) 原告マイクロクロス社が本件商標権について有する権利として主張するのは通常使用権である(なお原告マイクロクロス社は,本件訴訟提起当初の平成18年9月15日付原告第1準備書面では,自己が有する権利を専用使用権であると主張していたが,本件商標権の登録原簿[甲1の各号]に専用使用権の設定登録がないこともあって,平成19年1月12日の第2回弁論準備手続期日において,自己の有する権利を通常使用権であると変更するに至った。)。


 ところで,商標権の通常使用権というものは,使用許諾を受けた被許諾者が,許諾をした商標権者に対して,当該商標権に基づく権利行使をしないことを請求し得る権利にすぎず,第三者が当該商標権を侵害する行為を行ったことによって,そのような内容である通常使用権が何ら侵害されるものではない。


 したがって,被告の行為が本件商標権を侵害するものであるとしても,原告マイクロクロス社の有する通常使用権を侵害するものとはいえないから,被告の行為は原告マイクロクロス社に対する不法行為を構成しない。


(2) もっとも,原告マイクロクロス社の主張は,本件使用契約に基づき本件商標権の独占的通常使用権の設定を受けたとの趣旨に理解できなくもない。


 本件使用契約においては,「株式会社ワンズハート(甲)の取得している下記記載の商標の使用を株式会社マイクロクロス社(乙)と専属的に契約を結び,全ての権利を株式会社マイクロクロス社に一任します。」とされ,後にP1がそれを追認しているから,この文言からすると,原告マイクロクロス社が独占的通常使用権の設定を受けたようにも見える。



 しかし,原告ワンズハートは,上記のとおり本件使用契約において原告マイクロクロス社に本件登録商標の使用について専属的に契約するとしておきながら,ジャパンケミテックに平成17年6月ころから本件商標権の使用を許諾してきたことのほか,他1社にも本件商標権の使用を許諾していることを自認している。そして,原告ワンズハートの代表者と原告マイクロクロス社の代表者とは同一人物であるから,原告ワンズハートが上記各社に使用許諾をするに当たっては,原告ら代表者の意思次第で自由に決定することができるのである。


 これらのことからすれば,原告ワンズハートと原告マイクロクロス社との間で,本件使用契約の契約文言どおりに,本件登録商標の使用を原告マイクロクロス社のみに専属的(独占的)に認め,原告ワンズハートは他社に使用許諾をしない義務を負うという合意が真にされたとは認め難いというべきである。


 したがって,原告マイクロクロス社が独占的通常使用権の設定を受けたとも認めるに足りない。


(3) 以上より,被告商品の販売行為は原告マイクロクロス社に対する不法行為を構成しないから,原告マイクロクロス社の損害賠償請求は理由がない。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。