●平成19(ワ)7380 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟

 本日は、『平成19(ワ)7380 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟「百貨店向け筆耕用アプリケーションプログラム」平成19年11月28日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071130110501.pdf)について取り上げます。


 本件は、「事案の概要」に記載されている通り、別紙物件目録記載の百貨店向け筆耕用アプリケーションプログラム(以下「本件プログラム」という。)を制作した原告が,被告会社との間で本件プログラムの使用許諾契約を締結し,本件プログラムを被告会社のコンピュータにインストールしていたところ,被告Bにおいて,本件プログラムを複製し,被告らにおいて,上記契約の解約後も,同複製物を使用して筆耕作業を行い,これによって,被告会社は,解約時の,本件プログラムの不使用及び消去の各義務を負う旨の合意に違反し,被告B及び被告Cは,違法に複製された本件プログラムの複製物を使用するなどして,原告の本件プログラムについての著作権を侵害したとして,被告会社に対しては,解約時の合意に基づいて,被告B及び被告Cに対しては,著作権法112条に基づいて,本件プログラムの複製物の使用差止め等を請求するとともに,民法709条に基づき,被告会社が受けた利益に相当する金員6603万円及び弁護士費用660万円が原告の損害であるとして,被告らに対し,連帯して,それらの合計7263万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である,平成19年4月15日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案です。


 本件では、争点2(被告B及び被告Cによる著作権侵害の有無)の判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第29部 清水節 裁判長裁判官)は、

2 争点2(被告B及び被告Cによる著作権侵害の有無)について

 原告は,本件プログラムの著作物性について,プログラムは,指令の組合せ方に作成者の個性が現れるので,誰が作成しても同様になってしまうという極めて単純なプログラム以外のプログラムについては,著作物性が認められるのであり,本件プログラムも,アプリケーションシステムの開発用に販売されているシステム開発用のソフトウェアであるアクセスを使用して作成されたプログラムであり,特徴的な機能を有するのであるから,著作物性を有するというべきである旨主張する。


 しかしながら,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであり(著作権法2条1項1号),著作物性を肯定するためには,表現それ自体において創作性が発現されること,すなわち,表現上の創作性を有することが必要とされるものであるから,著作物性は,当該表現物の具体的な表現に即して,その創作性の有無を検討することにより判断されるべきものであり,具体的な表現を離れて論ずることは相当ではない。


 そして,複製権の侵害が問題とされる場合には,当該表現物と複製物と主張されている対象物のうち,同一性を有する部分の創作性の有無が検討されるのであるから,プログラムを複製されたと主張する場合には,自己のプログラムの表現上の創作性を有する部分と,対象プログラムの表現との同一性が認められることを主張する必要がある。すなわち,複製物であると主張する対象において,アイディアなどの表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,同一性を有するにすぎない場合には,既存の著作物の複製に当たらない(最高裁平成11年(受 )第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)ことから,通常,表現の同一性のある部分を抽出して,同部分の表現の創作性の有無を検討することによって,著作物性及び複製権侵害の有無が並行して判断されるのである。


 この点につき,原告は,本件プログラムについて,機能面での特徴を指摘するのみで,被告らが使用するプログラムとの対比及びその同一性についての具体的な表現上の創作性について何ら主張するものではないから,本件プログラムについての複製権侵害を基礎付ける,本件プログラムの著作物性,被告らが使用するプログラムとの同一性の有無についての主張・立証がないものといわざるを得ない。


 なお,原告は,被告Cに対する請求について,同被告が本件プログラムの複製物を使用したことが著作権を侵害したと主張するのみで,当該使用行為が著作権のどのような支分権を侵害するのか明らかにしないから,上記主張はそれ自体失当であり,これを採用する余地はない。


 したがって,著作権侵害に関する原告の主張を認めることはできない。


3 まとめ

 そうすると,争点3について論ずるまでもなく,原告の請求は,いずれも認められない。


第4 結論

 以上の次第で,原告の請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸;<新に出された知財判決>

●『平成18(行ケ)10268 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「自動食器洗浄機用粉末洗浄剤」平成19年11月28日 知的財産高等裁判所』(認容判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071130133629.pdf
●『平成19(行ケ)10094 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟ジェットエンジン用一体型羽根付きロータの修理方法及び製造方法」平成19年11月28日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071130132338.pdf
●『平成19(ネ)10055 不正競争行為差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟オービックス ORBIX」平成19年11月28日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071130131627.pdf
●『平成16(ワ)10667 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟「データ伝送方式」平成19年11月28日 東京地方裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071130131328.pdf
 ・・・『通信技術の特許侵害認めず 東京地裁富士通が敗訴』http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007112801000527.htmlの判決のようです。

●『平成19(ワ)7380 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟「百貨店向け筆耕用アプリケーションプログラム」平成19年11月28日 東京地方裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071130110501.pdf