●平成19(ワ)4822 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟(3)

  本日も、一昨日、昨日に続いて、『平成19(ワ)4822 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟平成19年11月16日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071119153006.pdf)について取り上げます。


 本件では、「4 争点(3)(原告の損害)について」の判断も、参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 阿部正幸 裁判長裁判官)は、


4 争点(3)(原告の損害)について

(1) 前記2,3で説示したところによれば,(i)被告らが原告の許諾を得ずに本件各イラストの複製を本件書籍の表紙に使用した行為は,原告の有する著作権(複製権)を侵害するものであり,(ii)被告らが本件書籍に原告の氏名又はペンネームを記載しなかった行為は,原告の本件全イラストについての氏名表示権を侵害するものであり,(iii)被告らが本件各イラストの色を改変した行為及び本件イラスト5の(ii)のリスのキャラクターの大きさを改変した行為は,原告の同一性保持権を侵害するものであり,原告は,被告泉書房に対し,本件書籍の頒布の差止請求権を有するとともに,被告らに対し,著作権侵害及び著作者人格権侵害の共同不法行為に基づく損害賠償請求権を有する。


(2) 著作権(複製権)侵害についての損害額

 前記2で説示したところによれば,原告は,被告らの著作権(複製権)侵害行為により,本件各イラストを表紙に用いた場合の許諾料相当額の損害を被ったというべきである。原告は,前記許諾料相当額について,原告が他で表紙のイラストを作成した際に,原稿料として7万円が支払われたことを示す証拠として甲第7号証を提出し,この金額が許諾料相当額であると主張する。


 しかしながら,同号証は,原稿料の支払の対象とされたイラストの内容や点数,掲載の対象とされた物が不明であることから,同号証記載の金額を直ちに本件の損害額とすることはできず,他に使用許諾料相当額について的確な証拠のない本件においては,控え目な損害額の算定の観点から,許諾料相当額は3万円であると認めるのが相当である。


(3) 著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)についての損害額前記3で説示したところによれば,原告は,被告らの著作者人格権侵害行為によって精神的苦痛を被ったものと認められ,前記認定に係る侵害の態様等を勘案すると,原告の被った精神的苦痛に対する慰謝料額は30万円が相当である。


5 結論

 以上によれば,原告の本訴請求は,被告泉書房に対し本件書籍の頒布の差止め並びに被告らに対し連帯して33万円及びこれに対する不法行為の日(本件書籍の出版日)である平成18年10月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから,これをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法64条1項本文,61条,65条1項本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。  』


 と判示されました。


詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸;<新たに出された知財判決>

●『平成18(行ケ)10303 特許取消決定取消請求事件 特許権 行政訴訟「抗−血管形成性組成物およびそれにより被覆されたステント」平成19年11月22日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071122145144.pdf
●『平成18(行ケ)10524 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟半導体材料のウエファに形成された半導体素子のレーザ分割方法」平成19年11月22日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071122141552.pdf
●『平成19(行ウ)653 特許出願審査請求手続却下処分取消等請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年11月21日 東京地方裁判所』(却下決定)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071122151639.pdf
●『平成18(行ケ)10544 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「高減衰性ゴムを使用した積層ゴム体」平成19年11月14日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071121155110.pdf