●平成19(ワ)4822 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟(2)

  本日は、昨日に続いて、『平成19(ワ)4822 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟平成19年11月16日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071119153006.pdf)について取り上げます。


 本件では、「3 争点(2)(著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)侵害の有無)について」の判断も、参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 阿部正幸 裁判長裁判官)は、

3 争点(2)(著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)侵害の有無)について

(1) 氏名表示権侵害の有無について


  本件書籍に,本件全イラストの作成者として原告の氏名が表示されておらず,かえって本件書籍の奥書にはカバーデザイン及びデザインを行った者として他者の氏名が表示されていることは,当事者間に争いがない。


 上記の事実によれば,被告スタジオダンクは,本件書籍の製作に当たり,本件全イラストの作成者としての原告の氏名表示権を侵害したというべきであり,このことについて少なくとも過失がある。


 前記2(2)で説示したところによれば,被告泉書房は,原告の氏名表示権を侵害する本件書籍を出版したことについて少なくとも過失が認められ,被告スタジオダンクと共同不法行為責任を負うと解すべきである。


(2) 同一性保持権侵害について

ア イラストの色について

(ア) 前記1で認定した事実によれば,原告は,被告スタジオダンクから,すべてのイラストにつき,1点のイラストに用いる色を2色とするとの指示の下に発注を受け,同指示に従い,別紙著作物目録に記載のとおり,本件各イラストのそれぞれにつき,2色を用いて着色をした上,これを被告スタジオダンクに交付したところ,同被告は,本件各イラストの複製に,原画には用いられていなかった青,緑,茶,黄等,複数の色を着色した上,本件書籍に掲載したものであり,これにより,本件各表紙イラストが与える印象は原画とは異なるものとなっていることは明らかである。


  一般に,イラストは,線描のみならず,その色調の違いのみによっても見る者に異なる印象を与えるから,色の選択は,基本的には,イラストレーターが自己の作風を表現するものとして,イラストレーターの人格的な利益に関わるというべきであり,本件各イラストの色を変更した被告スタジオダンクの行為は,著作者である原告の意に反する改変に当たり,本件各イラストについての原告の同一性保持権を侵害したというべきである。


 本件全証拠によっても,上記の改変につき,原告の明示ないし黙示の同意があったとも,やむを得ない改変に当たる事情があったとも認めることはできない。


(イ) そうすると,本件各イラストの色を変更して本件書籍に用いた被告スタジオダンクの行為は,原告の著作者人格権を侵害するものであり,被告泉書房がこのような本件書籍を出版したことについて被告スタジオダンクと共同不法行為責任を負うべきことは既に説示したところと同じである。


イ イラストの大きさについて

(ア) イラストの大きさ,特に,他のイラストとの関係で認識される相対的な大きさについても,色調と同様,その違いによって見る者に異なる印象を与えるから,その選択は,イラストレーターが自己の作風を表現するものとして,イラストレーターの人格的な利益に関わるものであるということができる。


 前記1で認定した事実によれば,原告は,本件イラスト5の(i)ないし(iii)において,リスのキャラクターを,可愛さ,幼さという性格を持たせることを意図して,他のキャラクターより小さく描いたところ,被告スタジオダンクは,本件イラスト5の(ii)のリスのキャラクターにつき,本件書籍の表紙に他のキャラクターと同じ大きさで描いたものであり,このような改変は,著作者である原告の意に反するものであるということができるから,原告の本件イラスト5の(ii)の同一性保持権を侵害したというべきである。


 本件全証拠によっても,上記の改変につき,原告の明示ないし黙示の同意があったとも,やむを得ない改変に当たる事情があったとも認めることはできない。


(イ) そうすると,本件イラスト5の(ii)のリスのキャラクターの大きさを他のキャラクターと同じ大きさにして本件書籍に用いた被告スタジオダンクの行為は,原告の著作者人格権を侵害するものであり,このような本件書籍を出版した被告泉書房が被告スタジオダンクと共同不法行為責任を負うべきことは既に説示したところと同じである。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。