●平成7(ワ)2692不正競争差止等請求事件「結露水掻き取り具事件」(2)

昨日に続いて『平成7(ワ)2692 不正競争差止等請求事件「結露水掻き取り具事件」平成12年07月27日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/E6E810601C66494F49256A77000EC370.pdf)について取り上げます。


 本件では、さらに、争点として、

(四) 被告は被告商品を善意無重過失で譲り受けたものか(不正競争防止法一一条一項五号の適用の有無)
(五) 原告は不正競争防止法上の権利行使をすることが許されるか。
(六) 被告に故意又は過失があるか。

について判示しています。


つまり、大阪地裁(第二一民事部 小松一雄 裁判長裁判官)は、


四 争点1(四)(被告は被告商品を善意無重過失で譲り受けたものか)、争点1(六)(被告に故意又は過失があるか)について


1 先に認定した事実によれば、原告が原告商品の販売を開始したのは平成六年八月三一日であり、その後に原告商品の形態が周知のものとなったことを窺わせることはなく、他方、被告が被告商品の販売を開始したのは同年一〇月ころであるから、被告は、被告商品の販売を開始した時点においては、原告商品の存在及び形態を認識しておらず、そのことについて重過失もなかったと認めるのが合理的である。


2 しかしながら、原告は被告に対して平成六年一二月一日到達の内容証明郵便により(甲10、18)、被告商品が原告商品の形態模倣商品であることを告知し、被告商品の販売を即時中止するよう警告したことが認められる。右内容証明郵便では、原告商品の形態は示されていないが、右内容証明郵便を受け取った被告としては、原告に連絡を取る等して、原告商品の形態やその製造経緯を調査するのは極めて容易なことであったというべきであり、そのような措置をとれば、前記のとおり原告商品と被告商品とはわずかな点しか相違がない酷似商品であることや、原告がデザインを作成した上で・・實業有限公司に製造を委託したものであることを認識することができたというべきであるが、それにもかかわらず、被告は右のような措置をとらなかったのであるから、被告が補助参加人代表者から被告商品は・・實業有限公司の商品であるとの説明を受けていたことを前提としても、右内容証明郵便の到達以後は、被告商品が原告商品を模倣したものであると認識しないことについて重過失があるというべきである。


 したがって、少なくとも右内容証明郵便の到達の翌日(平成六年一二月二日)以後に譲り受けた被告商品については、被告がそれを販売する行為は不正競争行為を構成する。


3 そして、右によれば、右の時点以後は、被告商品の販売につき被告には過失があるというべきである。


五 争点1(五)(原告は不正競争防止法上の権利行使をすることが許されるか)について


1 丙6によれば、アズマ工業は、次の実用新案権を有していることが認められる。


 …省略…


2 原告商品である検甲1を検すると、確かに原告商品は、右アズマ工業の考案の実用新案登録請求の範囲に記載された構成のすべてを具備しているものと認められるから、右考案の技術的範囲に属すると考えられる。そして、被告は、本件において原告が不正競争防止法による保護を主張している原告商品がアズマ工業の実用新案権を侵害するものであることを根拠に、クリーンハンドの原則により、原告には当該侵害商品の形態の保護を求める資格はないと主張する。


 しかしながら、不正競争行為の被害者に他人の実用新案権を侵害する点があったとしても、それだけでは直ちに当該被害者が不正競争行為者に対して不正競争防止法上の権利を主張する妨げとはならないものと解すべきである。なぜなら、不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を確保するために、一定の行為類型を不正競争行為とし、それを規制したものであって、この趣旨を実現するためには、右のように解することが必要であり、また、右被害者自身の実用新案権侵害行為は、不正競争行為とは別個の法律関係であって、実用新案権者と右被害者との間において別途規律されることが可能であり、それで足りるからである。もっとも、不正競争防止法の前記趣旨からすれば、不正競争行為の被害者による実用新案権侵害行為自体が、単に第三者との間での別途の規律に委ねるだけでは足りず、被害にかかる不正競争行為を事実上容認することとなっても、なおかつ規制する必要があると考えられる程度の強い違法性を有する場合には、当該被害者が不正競争防止法上の権利の主張をすることが許されない場合もあるものと解されるが、本件でそのような事情を認めるに足りる証拠はない。


 したがって、被告の主張は採用できない。  』


 と判示されました。

 
 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸1;<気になった記事>

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●『米ITC、エプソンのインク特許の有効性認定・販売禁止を命令』http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20071022AT1D220BJ22102007.html
●『米ITC、エプソンの訴え認める=プリンター用インクの特許侵害訴訟で』http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2007102200899
●『特許侵害訴訟:あらすじ』http://opentechpress.jp/opensource/07/10/22/0119223.shtml
●『Vonageに新たな特許侵害訴訟,今度はAT&Tが提訴』http://opentechpress.jp/opensource/07/10/22/0119223.shtml
●『特許庁、ドイツと特許審査迅速化で合意・来年3月から』http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071019AT3S1901F19102007.html
●『モバイルTV規格DVB―H共同特許ライセンス着手=伊シズベル〔BW〕』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071022-00000036-jij-biz