●平成7(ワ)2692不正競争差止等請求事件「結露水掻き取り具事件」

本日は、『平成7(ワ)2692 不正競争差止等請求事件「結露水掻き取り具事件」平成12年07月27日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/E6E810601C66494F49256A77000EC370.pdf)について取り上げます。


 本件は、被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであるから、被告商品の販売は、不正競争防止法二条一項三号に定める不正競争行為に該当し、また、被告商品の意匠は、本件登録意匠に類似するから、被告商品の販売は本件意匠権を侵害するとして、意匠法および不正競争防止法に基づき損害賠償を請求した事案です。


 本件では、不正競争防止法上の争点として、

(一) 原告は原告商品の形態保護を主張し得る地位を有するか。
(二) 原告商品の形態に要保護性があるか。
(三) 被告商品の形態は原告商品の形態を「模倣」したものか。

 等について判示されています。


 つまり、大阪地裁(第二一民事部 小松一雄 裁判長裁判官)は、

一 争点1(二)(原告商品の形態に要保護性があるか)について


1 甲13及び弁論の全趣旨によれば、原告商品の最初の販売日は、平成六年八月三一日であると認められる。


 他方、乙3、丙1ないし3によれば、平成四年一〇月には、アズマ工業から、同種の結露水掻き取り具(検乙1)が販売されていたことが認められる。


2 検乙1の存在を前提とすると、原告商品(検甲1)の形態の基本的部分は、原告商品が販売される以前から市場に存在したものであるといえるが、原告商品は、(i)漏斗部の大きな三角形状、(ii)漏斗部の上面壁の中央部に設けた三角形の吊り下げ部、(iii)タンク部の下端に設けた大径の球状部、の点でアズマ工業商品の形態とは異なる独自性を有するから、原告商品の形態には要保護性があるというべきである。


二 争点1(三)(被告商品の形態は原告商品の形態を「模倣」したものか)について(一)


 不正競争防止法二条一項三号にいう「模倣」とは、既に存在する他人の商品の形態をまねてこれと同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいい、客観的には、他人の商品と作り出された商品とを対比して観察した場合に、形態が同一であるか実質的に同一といえるほどに酷似していることを要し、主観的には、当該他人の商品形態を知り、これを形態が同一であるか実質的に同一であるといえる程に酷似したと客観的に評価される形態の商品を作り出すことを認識していることを要する。


 また、ある商品の形態が、不正競争防止法二条一項三号によって保護を受けるのは、資金、労力を投下して創作・開発した成果である商品を他者に先駆けて市場に提供したことによるものと解されるから、ある商品の形態が、当該商品の販売開始時点において既に市場に存在した形態と独自的形態からなる場合には、二つの商品の形態が実質的に同一か否かを判断するに当たって、独自的要素の部分に重点を置いて判断すべきである。


 しかるところ、原告商品と被告商品とは、(i)漏斗部下表面及び円筒形タンク部の首部のコジットマークの有無、(ii)円筒形タンク部の下半部の外周面に形成された筋状の膨出部の本数、(iii)漏斗部に付く成形過程での押し出しピンの跡、(iv)円筒形タンク部の表面状態(透明度)において些細な相違があるだけで、基本的形態はもとより、先に争点1(二)において述べた原告商品の独自的形態部分も同一であるから、両者の形態は客観的に見て実質的に同一と認められる。


 なお、「模倣」の主観的要件の有無については、他の争点と併せて次に検討する。


三 争点1(一)(原告は原告商品の形態保護を主張し得る地位を有するか)、争点1(三)(被告商品の形態は原告商品の形態を「模倣」したものか)(二)について


1 不正競争防止法二条一項三号が、他人の商品形態を模倣した商品の販売行為等を不正競争行為とする趣旨は、先行者の商品形態を模倣する後行者は、先行者が商品開発に要した時間、費用や労力を節約でき、しかも商品開発に伴うビジネスリスクを負うことも回避できる一方で、先行者の市場先行のメリットが著しく損なわれることにより、後行者と先行者との間に競業上著しい不公平が生じるが、このような行為は、他人が資金や労力を投下した成果を盗用するものとして競争上不正な行為であるという点に基づくと解される。


 このような趣旨からすれば、同号所定の不正競争行為につき差止めないし損害賠償を請求することができる者は、形態模倣の対象とされた商品を、自ら開発・商品化して市場に置いた者に限られるというべきである。


2 そこで、原告が原告商品を自ら開発・商品化して市場に置いたといえるか否かについて検討する。


 ・・・省略・・・


(三) 右(一)の認定事実によれば、原告商品は原告が自ら開発・商品化して市場に置いたものと認められ、原告の形態保護を主張し得る地位にあるというべきである。


 この点について被告は、原告商品は・・實業有限公司が開発した商品であり、原告も被告も同社から同商品を購入したにすぎず、金型も同社が所有していると主張する。


 確かに、原告商品の金型代が・・實業有限公司に支払われたのかについては、甲7が単に手書きの領収証にすぎないことや乙2のような企業番号を記す統一用紙が使用されていないことから疑問もないわけではない。


 しかし、先に認定した事実に加え、原告商品には原告固有の商標(甲9)が刻印されており、金型にもそのマークが成形されている(検甲4)ことからすれば、原告商品を開発したのが・・實業有限公司であるとは認められない。補助参加人代表者は、検甲4の撮影場所には金型製造業者は所在していても、・・實業有限公司は所在してはいない(丙7)と証言をするが、いずれにせよ前記認定を左右するものではない。


(四) また、右(一)の認定事実に(二)の認定事実を併せ考えれば、被告商品は、・・實業有限公司又は・鉅企業有限公司が、原告商品の形態を模倣して製造したものと推認するのが合理的である。


 したがって、被告は、原告商品を模倣した被告商品を譲り受けて販売したものというべきである。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。