●平成10(ワ)13353 不正競争「猫の手シミュレーションゲーム事件」

  本日は、『平成10(ワ)13353 不正競争 民事訴訟「猫の手シミュレーションゲーム事件」平成12年07月12日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/BBC1A8BED578CEA249256A77000EC38F.pdf)について取り上げます。


 本件は、原告の製造に係る商品の形態を模倣した商品を、輸入、販売した被告らの行為が不正競争防止法二条一項三号に該当すると原告が主張して、被告らに対し、損害賠償を請求した事案です。


  本件では、原告と被告とが共同で商品化した商品は、共同開発した両者の間では、不正競争防止法二条一項三号所定の「他人の商品」に該当しないと、判示しています。


 つまり、東京地裁(民事第二九部  飯村敏明 裁判長裁判官)は、

一 争点1(他人の商品)について

1 不正競争防止法二条一項三号は、「他人の商品」の形態を模倣した商品を譲渡、貸し渡し、輸入する行為等につき不正競争行為とする旨規定する。右規定が設けられた趣旨は、費用、労力を投下して、商品を開発して市場に置いた者が、費用、労力を回収するに必要な期間の間(最初に販売された日から三年)、投下した費用の回収を容易にし、商品化への誘因を高めるために、費用、労力を投下することなく商品の形態を模倣する行為を規制することとしたものである。


  したがって、同号の保護を受けるべき者に当たるか否かは、当該商品を商品化して、市場に置くに際し、費用や労力を投下した者といえるか否かを吟味することによって決すべきことになる。仮に、甲、乙それぞれが、当該商品を商品化して市場に置くために、費用や労力を分担した場合には、第三者の模倣行為に対しては、両者とも保護を受けることができる立場にあることはいうまでもない。しかし、甲、乙間においては、当該商品が相互に「他人の商品」に当たらないため、当該商品を販売等する行為を不正競争行為ということはできない。


 そこで、右の観点から、被告らが、本件第一商品の商品化について、費用や労力を投下したか否かについて、検討する。


2 証拠(甲一四、一五、一八、乙一七及び一八)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない(なお、各箇所に証拠の一部を掲記した。)。


  ・・・省略・・・


3 以上認定した事実を前提として、以下検討する。

 右のとおり、(i)本件第一商品の商品化の過程をみると、確かに、ゲームのシナリオを作成し、ゲーム機の外観を猫の掌の形状にするとの着想を提示したのは原告であるが、その後本件第一商品の外観デザイン、名称、パッケージデザイン及び取扱説明書を作成したのは被告らであり、その後も試作品を作成する過程においても、被告らが、細部にわたり、詳細な指示を与えていたこと、(ii)ゲーム機において、その外観のデザイン、パッケージデザイン、商品の名称は消費者の購買意欲に影響を与え、商品化における重要な要素であるが、内容、形状の最終的な決定は被告らが行ったこと、(iii)本件において、新規商品である本件第一商品一〇万個を市場に流通させ、これを販売することによって費用の回収を図ることができるか否かのリスクを専ら負担していたのは、被告らであったといえること等の事実に照らすならば、被告らは、本件第一商品の商品化に当たり、費用及び労力を投下して、その制作に関与した者と解するのが相当である。


 なお、原告は、ゲームとしてのストーリーや猫の掌を模した形態が原告の発案によるものであることを理由に、本件第一商品は、専ら原告の商品に当たる旨を主張する。


 しかし、同法三号は、その開発者を模倣者との関係で保護しようとするものであって、そのアイデア自体を保護する趣旨の規定ではないこと、本件第一商品の商品化に当たっての被告らの関与の程度が前記のとおりであることに照らし、右原告の主張は採用できない。


 そうすると、被告らにとって、本件第一商品は「他人の商品」に該当せず、被告らの行為は、不正競争防止法二条一項三号の定める不正競争行為には該当しない。


 二 結論


   以上のとおり、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成18(行ケ)10477 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「デサチュラーゼを使用しての植物油の改変」平成19年10月18日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071019110805.pdf


追伸2;<気になった記事>

●『特許庁、ドイツと特許審査迅速化で合意・来年3月から』http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071019AT3S1901F19102007.html
●『日独特許庁、特許審査ハイウェイの試行に合意(経産省) 』http://www.meti.go.jp/press/20071019001/01_press_er7-1.pdf
●『Amazonの1クリック特許が再審査の結果、無効に』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/19/news009.html
●『米でトヨタハイブリッドカーに特許侵害判決、1台25ドルの賠償金は無効(CAFC)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=2056
●『要約: 特許侵害で韓国lgsを提訴=米3m』http://home.businesswire.com/portal/site/google/index.jsp?ndmViewId=news_view&newsId=20071017005686&newsLang=ja