●平成11(ワ)29128 不正競争 民事訴訟「リズシャルメル事件」(2)

 本日は、一昨日に続いて『平成11(ワ)29128 不正競争 民事訴訟「リズシャルメル事件」平成12年07月18日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/BE0F088A0B6944AF49256A77000EC379.pdf)について取り上げます。


 本件では、さらに、被告の行為が不法行為(債権侵害)になるか否か判示しています。


  つまり、東京地裁(民事第四六部 三村 量一 裁判長裁判官)は、


『二 不法行為(債権侵害)を理由とする差止請求について

 1 本件において、原告は、被告はリズシャルメル社に不当に働きかけて、同社から原告への製品供給を中止させ、原告に替わって同社の製品を輸入して国内で販売することとなったと主張し、被告の右行為は不法行為(債権侵害)として原告の輸入代理店としての営業権を侵害するものであるから、右不法行為に対する差止めとして、被告によるリズシャルメル製品の輸入販売の差止めを求めることができると主張している。


 しかし、不法行為に対する救済としては、金銭賠償を原則とするものというべきである(民法七〇九条参照)。仮に、不法行為に該当する法益侵害行為が現在行われており、将来にわたって同様の侵害行為が反復継続されるおそれが明らかに認められるときに、一定の要件の下にその差止めを請求することができる場合があると解し得るとしても、本件において原告の主張する被害法益の内容(輸入代理店としての営業権)は、生命身体のような普遍的な法益ではなく、これに対する侵害が不正競争防止法所定の不正競争行為に該当する場合に、同法の規定により差止めが初めて認められる経済上の利益に過ぎないものである。


 このような点を考慮すると、右のような経済上の利益については、不正競争防止法所定の不正競争行為に該当しない侵害行為についてまで、事後における損害賠償請求に加えて、不法行為を理由とする事前の差止請求を認めるべきものとは解されない。加えて、本件においては、以下に述べるとおり、被告の行為が債権侵害として原告に対する不法行為を構成すると認めることもできないから、いずれにしても、原告の不法行為を理由とする差止請求は、理由がない。


2(一) すなわち、債権は、排他性を有さず、債務者の意思を媒介として成立する権利であるから、被侵害利益としては弱いものであり、第三者による債権侵害が成立するためには、侵害行為に強い違法性が認められることを要するというべきである。原告のリズシャルメル社に対する権利は、同社の製品の供給を受けることを内容とする債権と考えられるが、第三者である被告による右債権の侵害が成立するためには、原告の主張するように、被告が原告を害する意図をもってリズシャルメル社に働きかけ、あるいは両者が通謀するなどして、原告に対して不当に製品の供給停止をさせることを要するものというべきである。


  (二) 原告は、被告は、原告がリズシャルメル社の輸入総代理店であることを知りながら、原告を害する意図でリズシャルメル社に積極的に働きかけ、同社に原告への供給を中止させたと主張する。


 しかし、本件において、被告がリズシャルメル社に積極的に働きかけ、あるいは両者が通謀して、原告への製品の供給を停止させたことを認めるに足りる証拠はない。なるほど、甲五二(原告の従業員成山正博の陳述書)には、もともと被告が取り扱っていたベルギーの「デヴェ」製品の生産をリズシャルメル社に依頼することにより、同社に対して強い立場に立った被告代表者が、その立場を利用してリズシャルメル製品の輸入元となるべく、リズシャルメル社特にマネージャーのC氏に取り入ったものと思う旨の記載があるが、右は憶測をいうものに過ぎず、これを裏付ける客観的な証拠はなく、右記載は採用できない。かえって、右甲五二末尾に添付された報告書(原告従業員神山啓一の自筆の報告書)、甲四一ないし四三、乙三ないし五などの証拠によれば、(1) リズシャルメル社は、以前から、原告によるリズシャルメル製品の販売数量、価格政策(従前の、原告によるリズシャルメル社の婦人用下着の日本国内販売価格は、ブラジャーで一万数千円前後、ショーツで一万円弱と、高額である。)や、原告が同製品の販売拡張等のために十分な人的資源を投下していないことなどについて不満を有しており、原告に対して、原告がこれらの点について改善をしない場合は取引を続けることが不可能である旨を警告したことがあったこと、(2) この間、リズシャルメル社は、マネージャーを日本に派遣して市場や販売店、新たな提携先等の調査をさせたこと、(3) 平成一〇年九月にフランスのリヨン市で開催された見本市で、原告従業員の同伴した女性が、写真撮影が禁止されていたにもかかわらず、リズシャルメル社の商品を隠しカメラで写真撮影し、これを見とがめたリズシャルメル社の従業員により取り押さえられたことなどが認められる。これらによれば、従来からリズシャルメル社が原告に対して抱いていた不満が、リヨン市の見本市における事件を契機として高じて、それが一因となってリズシャルメル社が原告との輸入代理店契約を解除して製品供給を停止したものと推認することができる。


  (三) 右によれば、本件では、原告主張のように、被告が原告を害する意図でリズシャルメル社に積極的に働きかけたことを認めるには足りないから、被告が債権侵害を構成する行為を行ったということはできない。


三 以上によれば、原告の請求は、いずれも理由がない。よって、主文のとおり判決する。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸1;<気になった記事>

●『韓国IT業界、ロイヤルティー収入増え先進国構造に』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071014-00000013-yonh-kr
●『著作権分科会、「ダウンロード違法化」などについて16日から意見募集』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071012-00000033-imp-sci