●平成19(ネ)10047損害賠償請求控訴事件「デファレンシャルギヤ二段

  本日は、『平成19(ネ)10047 損害賠償請求控訴事件 実用新案権 民事訴訟「デファレンシャルギヤ二段差伝達の無段変速機」平成19年09月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071001165147.pdf)について取り上げます。


  本件は、損害賠償請求事件の控訴事件であり、民法709条に基づき,損害賠償金180億円の一部請求として100万円を請求したところ,被控訴人が上記増速機構は控訴人考案の技術的範囲に属さないと主張して争っている事案で、当該控訴が棄却された事案です。


 本件では、当たり前ですが、登録実用新案の技術的範囲は、願書に添付した実用新案登録請求の範囲の記載に基づいて考案の技術的範囲を確定しなければならない旨を判示しています。


 つまり、知財高裁(第2部 中野哲弘 裁判長裁判官)は、

『(2)ア控訴人は,考案の構成要件をα「考案として特定された物品の形状,構造又は組合せ」とβ「当該αを特定するために必要と認める事項」に分け,前者のみが権利の範囲内であるとの主張に基づき,本件考案に係る実用新案登録請求の範囲に記載されている構成のうち,以下のi)〜iii)の構成が被控訴人製品に存すれば,本件考案の技術的範囲に属することになると主張する。

i) 二段差の回転力の一方を直接的に,他方をすべりを許容する継手
介して同時に出力シャフトへ伝えるデファレンシャルギヤ

ii) i)の二段差を設けるための減速ギヤまたはこれに類するもの

iii) i)及びii)を介して二段差の回転力を受ける基本軸を兼ねた出力シャフト


イ しかし,実用新案の侵害を理由とする損害賠償請求訴訟において,相手方の製造等をする製品(以下「対象製品」という。)が考案の技術的範囲に属するかどうかを判断するに当たっては,願書に添付した実用新案登録請求の範囲の記載に基づいて考案の技術的範囲を確定しなければならず(法26条が準用する特許法70条1項),実用新案登録請求の範囲に記載された構成中に対象製品と異なる部分が存する場合には,対象製品は,考案の技術範囲に属するということはできない。


ウ 控訴人の上記主張は,対象製品が実用新案登録請求の範囲に記載された構成のすべてを充足しないとしても,一部の構成を充足すれば,考案の技術的範囲に属する旨の主張であり,その根拠として法1条及び5条5項を挙げるが,法1条は,法の目的を規定したものであり,法5条5項は,願書に添付すべき実用新案登録請求の範囲を作成するに当たって出願人が遵守すべき記載要件を定めたものであって,いずれも控訴人主張のように解する根拠となるものではない。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸1;<新たに出された知財判決>


●『平成18(ワ)4494 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「防災瓦」平成19年10月01日 大阪地方裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071002113209.pdf
●『平成18(ワ)15809 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟「円盤状半導体ウェーハ面取部のミラー面取加工方法」平成19年09月28日 東京地方裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071001111621.pdf
●『平成18(ネ)10032 不正競争行為差止等・損害賠償等反訴事件 不正競争 民事訴訟平成19年09月27日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071001093807.pdf
●『平成19(行ケ)10146 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「断熱調理器具」平成19年09月27日知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071001160721.pdf
●『平成19(行ケ)10122 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「層状吸収体構造,この構造を含む吸収体製品,及びその製造方法」平成19年09月27日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071001160239.pdf
●『平成18(ネ)10085 損害賠償請求控訴事件 商標権 民事訴訟「一枚甲」平成19年09月27日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071001155324.pdf
●『平成18(ネ)10070 商標権移転登録手続事件 商標権 民事訴訟極真会館」平成19年09月27日知的財産高等裁判所』(一部認容判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071001101019.pdf
●『平成18(ネ)10032 不正競争行為差止等 損害賠償等反訴事件 不正競争 民事訴訟 平成19年09月27日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071001093807.pdf


追伸2;<気になった記事>

●『HP、特許侵害訴訟で Cenzic と和解』http://japan.internet.com/webtech/20071002/11.html
●『「ブリヂストンスポーツ、米国アクシネット社と特許係争について和解」』http://www.bs-sports.co.jp/press/2007/c1002_wakai/c1002_wakai.html
●『ブリヂストンスポーツ特許権訴訟で米社と和解』
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20071002AT1D0206T02102007.html
●『クアルコムに反トラスト違反の疑い、欧州委が調査を開始 』http://www.computerworld.jp/topics/smg/80829.html
●『欧州委、クアルコム特許権使用料について調査強化』http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djBUK5139.html
●『「ホームページ・ビルダー11」の販売をめぐり日本IBMソースネクストを反訴〜4/11付のソースネクスト側提訴を受けて』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071002-00000016-rbb-sci