●平成18(行ケ)10561審決取消請求事件「各種伝送モードを使用するオ

 特許庁より「平成19年度弁理士試験論文式筆記試験合格発表」(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/benrishi/benrishi2/h19_ronbun_goukaku_menu.htm)が公表されました。


 論文試験に合格された方、おめでとうございます。口述試験に向けて油断しないで頑張ってください。


  さて、本日は、『平成18(行ケ)10561 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「各種伝送モードを使用するオーディオ情報拡布のための受信器」平成19年09月13日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070914110938.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消訴訟であり、請求が棄却された事案です。


 本件では、特許の要件を審理する特許出願に係る発明の要旨の認定においては,リパーゼ最高裁判決の通り、特段の事情のない限り,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきで,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許され、特許法70条2項は,特許権侵害訴訟等の場合のように,私権である特許権の保護範囲を決定するに当たって適用されるものであって,本件のような審決取消訴訟においては,上記特段の事情がない場合でも明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されると解することはできない、と判示した点で、知財高裁における発明の要旨および特許発明の技術的範囲の認定基準の考え方を示しており、その点で、重要な判決であると思います。


 つまり、知財高裁(第2部 中野哲弘 裁判長)は、


『(2) 次に原告は,特許法70条2項によれば,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意味を解釈すべきであるとして,本願補正発明の明細書(甲4,7,8)及び図面に記載された実施例によれば,請求項1の「データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し」との文言は,送信装置がデータを送信する際にカテゴリ別の指示情報をデータに付していることを指すものと解釈できる旨主張する。



 しかし,本件審決取消訴訟のように,特許の要件を審理する前提としてされる特許出願に係る発明の要旨の認定においては,特段の事情のない限り,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなど,特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないと解するのが相当である(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)。


 特許法70条2項(本願に適用される平成14年法律第24号による改正前のもの。以下同じ。)は「前項の場合においては,願書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」と規定しているが,同項は,特許権侵害訴訟等の場合のように,私権である特許権の保護範囲を決定するに当たって適用されるものであって,本件のような審決取消訴訟においては,上記特段の事情がない場合でも明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されると解することはできない。


  そして,上記(1)に述べたとおり,「データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し」との文言は,データにカテゴリを付すのが送信部であるか受信部であるかにつき,何ら特定するものでないことは明らかであって,その用語の意義が一義的に明確でないとはいえないのであるから,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すべき場合であるということはできない。したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。


(3)ア なお,原告の主張する本願補正発明の明細書の記載等を検討しても,以下のとおり,「データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し」との文言を,原告主張のように解すべき理由は見当たらない。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。