●平成19(行ケ)10079 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「鯖寿司」

  本日は、『平成19(行ケ)10079 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「鯖寿司」平成19年09月13日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070914140336.pdf)について取り上げます。


 本件は、被告の請求した商標登録の無効審決に対し、原告がその取消しを求めた審決取消し訴訟であり、その請求が棄却された事案です。


 本件では、4条1項10号の周知性の判断に際し、周知商標の創作者が誰であるかは何ら関係を有するものではなく,仮に,引用商標が原告の創作に係るものであり,原告の許諾を得て被告が使用するものであるとしても,上記の他人性を肯定することに何ら影響するものでない、と判示された点で、参考になる事案かと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 田中信義 裁判長)は、


『1 取消事由1について


  原告は,引用商標は,原告が独自に創作したものであり,被告は単なる通常使用権者にすぎないから,同商標は,商標法4条1項10号の「他人の業務に係る商品・・・を表示するものとして需用者の間に広く認識されている商標」に該当しないと主張するので,以下において検討する。


  商標法4条1項10号は 「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するもの,として需用者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって,その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」については商標登録を受けることができないと定めている。


  上記規定の趣旨は,特定人の業務等に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標(以下「周知商標」という。 )について,同一又は類似の商品等につき,同一又は類似の商標の登録を上記特定人以外の者に認めたのでは商品等の出所を識別することが困難となり,商品流通秩序が損なわれるため,後者の商標登録を許さないとする点にある。


  そうすると,上記規定の「他人」とは出願者以外の者を広く指称するものと解するのが相当であるところ,引用商標が被告の商品に使用されていることは原告も認めるところであるから,これが上記規定にいう「他人の商標」に当たることは明らかである。


  以上の説示から明らかなように,上記規定の適用においては,周知商標の創作者が誰であるかは何ら関係を有するものではないから,仮に,引用商標が原告の創作に係るものであり,原告の許諾を得て被告が使用するものであるとしても,上記の他人性を肯定することに何ら影響するものでないことは明らかであって,引用商標が「被告の商品である焼き鯖寿司」を表すものとして需要者の間に広く認識されているとするならば(この点は次項において認定判断する。),引用商標は被告の商品の出所を示すものとして,商標法4条1項10号にいう「他人の業務に係る商品・・・を表示するものとして需用者の間に広く認識されている商標」というべきである。


  したがって,この点に関する原告の主張は,失当であり,採用することができない。  』


 と判示されました。


 なお、同日に出された『平成19(行ケ)10093 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「鯛寿司」平成19年09月13日 知的財産高等裁判』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070914150928.pdf)、『平成19(行ケ)10092 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「鯖寿司」平成19年09月13日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070914150824.pdf)、および『平成19(行ケ)10080 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「鯖寿司」平成19年09月13日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070914144313.pdf)も同様の判断かと思います。


 詳細は、判決文を参照してください。