●平成15(ワ)23648 特許権「軟弱地盤の改良工法及びその改良施工装置

  本日は、『平成15(ワ)23648 特許権 特許権差止請求権等不存在確認請求事件「軟弱地盤の改良工法及びその改良施工装置」平成16年06月23日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/39427359A55773D249256F2B00306CAC.pdf)について取上げます。



 本件は、特許権差止請求権等の不存在確認請求事件であり、均等論について判断され、均等侵害の第5要件の出願経過の参酌により、原告のイ号方法等が意識的に除外されたと認定され、非侵害と判断された事案です。


 つまり、東京地裁(第29部  飯村敏明 裁判長)は、

『争点(2)(均等侵害の成否)について

  (1) 本件発明1の構成要件Bについて

    被告は,仮に原告方法が本件発明1の構成要件Bを文言上充足しないとしても,原告方法の「袋状の繊維シートと凹凸を付したプラスチック成型板からなる」帯状の通水材は,構成要件Bの「ネットとネット表面に取り付けた繊維シートとからなる」帯状の通水材と均等であるから,原告方法は,本件発明1の技術的範囲に属する旨主張するので,以下判断する。


   ア 意識的除外等の特段の事情の有無

    前記第2,1,(6)の本件特許の出願経過に係る事実及び証拠(甲29ないし33)によれば,本件特許の出願人である被告は,出願時の当初明細書の「特許請求の範囲」欄の請求項1において,「通水材」の構成につき何らの限定を加えていなかったこと,その後,被告は,特許庁審査官の拒絶理由通知に対し,「通水材」の構成を「ネットとネット表面に取り付けた繊維シートとからなる帯状の通水材」と補正したこと,手続補正書と同時に提出した意見書において,補正に係る「ネットとネット表面に取り付けた繊維シートとからなる帯状の通水材」は,「水及び空気の排出経路としてサンドマット」を用いる引用例とは構成及び作用効果が異なる旨説明していること,本件特許の出願当時,本件発明1の「通水材」に対応する土木用の部材として,「凹凸を付した板状の芯材を不織布で覆う」構造を有する排水材料が当業者に周知であったこと等の事実が認められる。


 これらの事実に照らすならば,被告は,本件特許の出願過程において,本件発明1に用いる通水材の構成を「ネットとネット表面に取り付けた繊維シートとからなる帯状の通水材」に限定したものと認められ,「凹凸を付した板状の芯材を不織布で覆う」構造を有する周知の排水材料等これと異なる構成を有する通水材を本件発明1の「通水材」から意識的に除外したものと認めるのが相当である。


   イ 小括

 そうすると,原告方法における「袋状の繊維シートと凹凸を付したプラスチック成型板からなる帯状の通水材」(構成b)は本件発明1から意識的に除外されたものというべきであるから,原告方法は本件発明1の構成と均等なものであるとは認められない。


  (2) 本件発明2の構成要件Gについて

    被告は,原告方法と同様に,原告装置の「袋状の繊維シートに挿入した凹凸を付したプラスチック成型板からなる」帯状の通水材は,構成要件Gの「ネットとネット表面に取り付けた繊維シートとからなる」帯状の通水材と均等であるから,原告装置は,本件発明の構成要件Gを充足する旨主張する。

    しかし,前記(1)で判断したのと同様の理由により,被告の主張には理由がない。

  (3) 均等についての結論

    以上のとおり,均等侵害に関する被告の主張は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。


 3 まとめ

   よって,原告方法及び原告装置の使用は,いずれも本件特許権の侵害行為には当たらないから,被告の反訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がなく,原告の請求は理由がある。


第4 結論

   以上のとおり,原告の請求は理由があるからこれを認容し,被告の反訴請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。

 
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