●『平成19(行ケ)10061 審決取消請求事件 商標権「CUBS」

  本日は、『平成19(行ケ)10061 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「CUBS」平成19年08月08日』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070808163449.pdf)について取上げます。


 本件は、メジャーリーグの「CUBS」の商標の拒絶審決の取消を求めた訴訟で、商標が被類似と判断され、請求が認容された事案です。


 つまり、知財高裁(第三部 飯村敏明 裁判長)は、


『 ・・・・

(2) 本願商標と引用商標との対比

 前記認定のとおり,本願商標からは「カブス」の称呼が生ずるのに対し,引用商標1ないし4からは「ユービーエス」の称呼が,引用商標5からは「ユービーエス」ないし「ユニオン・バンク・オブ・スイッツアランド」の称呼が生ずるので,本願商標と引用商標とは,称呼において類似しない。


3 結論

(1) 審決は「本願商標と引用商標とは,外観及び観念の差異を考慮しても,『ユービーエス』の称呼を共通にする類似の商標である」と記載するように,本願商標と引用商標とは,称呼が共通することを理由に,両商標は類似するとの結論を導いたものである。


 したがって,本願商標と引用商標とは,称呼において類似しない以上,その余の点を判断するまでもなく,審決には誤りがある。


(2) 補足的判断(その1−外観)

 被告は,本訴において,本願商標と引用商標とは,外観において類似すると主張する。すなわち,本願商標における図形部分と文字部分とは,分離して認識され,これらを常に不可分一体のものとして把握しなければならないとする格別の事情もなく,これに接する取引者及び需要者は,読みやすい文字部分に着目して取引に当たる場合が多いといえるので,「UBS」の文字部分が図形部分と独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり,本願商標と引用商標の文字部分「UBS」は,その綴り字のすべてを同じくするので,両者は時と所を異にして離隔的に観察するときは,外観上類似すると主張する。


 しかし,被告の上記主張は,外観において差異があるとした本件審決の判断に反するものであり,本訴において独立の主張(反論)として取り扱うべきではないが,念のために判断する。


 前記1(2)で認定したとおり,本願商標は,シカゴ・カブスのロゴと同一形状であること,シカゴ・カブスの名称は我が国においてよく知られ,また,シカゴ・カブスのロゴも我が国において相当程度知られていることに照らすならば,本願商標では,「円輪郭状図形」部分を「C」と「UBS」部分とは,一体のものと理解し,「CUBS」すなわち「カブス」と認識するのが自然である。そうすると,本願商標は「UBS」の文字部分と円輪郭状図形とが一体となって「CUBS」との外観を有するものということができ,「UBS」の文字部分のみが看者の注意を惹くということはできない。確かに,本願商標の円輪郭と上記円輪郭状図形とはその太さがほぼ同一であり「UBS」の文字部分がこれらより細い線で描かれているが,この点も,前記認定のとおり,欧文字等で構成される商標において,先頭の「C」を,他の文字を囲む形状に大きく表記する例は少なくないことに照らすならば,本願商標の「UBS」部分のみが,外観の上で,看者の注意を惹く特徴的部分であるとはいえない。


 そうすると,本願商標と引用商標1とは,本願商標には「UBS」部分が含まれているものの,本願商標の場合,上記文字と併せて欧文字の「C」の文字を連想させる円輪郭状図形と一体となっており,「UBS」部分のみで認識されるものではないこと,外側に円輪郭を配置していること,円輪郭状図形の占める部分が大きいこと等の点において,引用商標1と相違する。また,引用商標2ないし4については,独特の鍵状図形が付加されていること,引用商標5については,下部に「Union Bank of Switzerland」の文字が付加されていることから,本願商標と引用商標2ないし5とも相違する。


(3) 補足的判断(その2ー観念)

 さらに,念のため,本願商標と引用商標との観念についても対比する。

前記のとおり,シカゴ・カブスのロゴが我が国において相当程度知られていることに照らせば,本願商標からは,前記円輪郭状図形及び内側の「UBS」の文字とが一体となって「CUBS」との文字を認識し,「CUBS」の文字から,「シカゴ・カブス」を観念することができ,他方,引用商標1からは格別の観念を生ずることはなく,引用商標2ないし4の左側に配置された鍵状図形により,鍵などの観念を生ずることがあり,引用商標5からは,下段の「Union Bank of Switzerland」により「スイスユニオン銀行」の観念を生ずる。したがって,本願商標と引用商標とは,観念において相違するか,少なくとも類似することはない。

4 結語

 以上のとおり,審決の認定,判断には誤りがあり,違法である。よって,主文のとおり判決する。 』


 と判断されました。


 審判段階では、称呼類似により類似と判断したようですが、審決取消訴訟では、称呼だけでなく、外観、観念も非類似と判断しています。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。

 
 なお、商標の類比の判断は、小僧寿し事件(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/F72BAB3A2C1D4F9F49256A8500311DC6.pdf)や、「大森林事件」(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070314105355.pdf)等の判決文中で引用されている「氷山印事件」(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/C20EFADEA9BCA1F249256A850031236C.pdf)の、

商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標が外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。右のとおり、商標の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にすぎず、したがって、右三点のうち類似する点があるとしても、他の点において著しく相違するか、又は取引の実情等によって、何ら商品の出所を誤認混同するおそれが認められないものについては、これを類似商標と解することはできないというべきである最高裁昭和三九年(行ツ)第一一〇号同四三年二月二七日第三小法廷判決・民集二二巻二号三九九頁参照)。」

 に基づく具体的な出所の混同の有無が基本です。