●平成12(ネ)2909「筋組織状こんにゃくの製造方法びそれに用いる製造

 本日は、『平成12(ネ)2909 特許権 民事訴訟「筋組織状こんにゃくの製造方法及びそれに用いる製造装置事件」平成13年06月27日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/88815E793C62E78849256AC500233012.pdf)について取上げます。


 本件も、均等侵害について判断した事案であり、均等侵害を認めた事件です。


 つまり、東京高裁(第13民事部 篠原勝美 裁判長)は、

『(3) そうすると、控訴人製造方法及び控訴人製造装置の各構成のうち本件製造方法発明及び本件製造装置発明と異なる部分は、結局、本件製造方法発明及び本件製造装置発明の各構成の「(孔間にスリットのない)多孔のノズル」が、控訴人製造方法及び控訴人製造装置において「孔間を0.2〜0.5mm幅のスリットで連結した多孔のノズル」に置換されている点で異なることに帰着するところ、被控訴人は、この相違する部分が本件製造方法発明及び本件製造装置発明と均等なものとして、その各技術的範囲に属する旨主張するので、この点について検討する。


    まず、本件特許明細書(乙第2号証)の・・・省略・・・との各記載によると、本件発明は、多数本の糸状こんにゃくを接触する部分でのみで接着させて集束一体化することにより、風味、歯切れ等が改良されたこんにゃくを得る製造方法及び製造装置につき、従来技術が複雑であったのを改良して簡略化することを課題とし、従来、孔径1〜3mmφ、孔間隔10mm程度であった一般的なノズルの孔間隙又はノズル押出し直後の成形体間のすき間を3mm以下と小さくする構成を採用したことにより、多数本の糸状こんにゃくのり同士が、ノズル加圧押出し直後の圧力開放により膨張し、ゲル化前の短時間のうちに接して、何ら外力を加えなくとも互いに接着するようにし、加熱処理を経て一体化強度が大きい筋組織状こんにゃく製品が、簡略な工程及び装置によって得られるとの作用効果を奏するものであることが認められる。


    これによれば、本件製造方法発明及び本件製造装置発明の本質的部分は、こんにゃくのりを押出し孔間隙が3mm以下の、又は押出し直後の糸状こんにゃくのり間のすき間を3?以下とした多孔のノズルで押し出す点にあり、控訴人製造方法及び控訴人製造装置と異なる部分、すなわち、本件製造方法発明及び本件製造装置発明の当該ノズルに、孔間を連結する0.2〜0.5mm幅のスリットがないことは、本件発明の本質的部分ではないというべきである。


    次に、上記(1)の(カ)のとおり、控訴人製造方法及び控訴人製造装置において、スリット部分から吐出したこんにゃくのりが薄肉こんにゃくを形成しようとしても、孔の部分から押し出された糸状こんにゃくのりの膨張によっていわば押し潰されてしまい、糸状こんにゃくのりの接合一体化は当該膨張によって果たされるものと認められるから、「孔間を0.2〜0.5mm幅のスリットで連結した多孔のノズル」の構成は特段の作用効果を奏するものではなく、技術的意義を見いだすことができない。そうであれば、本件製造方法発明及び本件製造装置発明の「(孔間にスリットのない)多孔のノズル」を、控訴人製造方法及び控訴人製造装置の上記構成に置換したとしても、本件発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏することは明らかである。


    また、本件製造方法発明及び本件製造装置発明の各構成は、平成6年5月18日発行の特公平6−36727号公報(本件特許明細書、乙第2号証)に掲載されたものであること、控訴人代表者の陳述書(甲第14号証)及び原審における控訴人代表者尋問の結果によれば、控訴人は、その当時、スリットのない独立孔を設けた目皿の製造販売をしていたことが認められること、上記のとおり、控訴人製造方法及び控訴人製造装置の「孔間を0.2〜0.5mm幅のスリットで連結した多孔のノズル」の構成が特段の作用効果を奏するものではないことを併せ考えれば、控訴人が控訴人目皿の製造販売を開始した平成6年6月ないし平成7年2月当時、控訴人目皿を使用して、本件製造方法発明及び本件製造装置発明の「(孔間にスリットのない)多孔のノズル」を、控訴人製造方法及び控訴人製造装置の上記構成に置換することは、当業者が容易に想到することのできたものというべきである。


    さらに、控訴人製造方法及び控訴人製造装置が、本件発明の特許出願時である昭和61年3月1日当時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に想到することができたものであると認めるに足りる証拠はない。


    また、控訴人製造方法及び控訴人製造装置における「孔間を0.2〜0.5mm幅のスリットで連結した多孔のノズル」との構成が、本件発明に係る特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情の存在を認めるに足りる証拠もない。この点につき、控訴人は、被控訴人が、本件実用新案の登録出願中に、拒絶理由通知に応じて実用新案登録請求の範囲を補正し、引用例の一体型凹凸穴を有するノズルから、1本のリボン状に押し出したものと製造工程が異なることを強調した意見書を提出したことにより、控訴人製造方法及び控訴人製造装置が本件製造方法発明及び本件製造装置発明と均等なものとして、その各技術的範囲に属すると主張することが禁反言の法理に反する旨主張するが、本件実用新案と本件発明に係る特許とは別個の出願手続を経たものであるから、本件実用新案の登録出願中に生じた事由が、本件発明について均等の主張をすることの妨げになるということはできない。


  (4) したがって、控訴人製造方法及び控訴人製造装置は、それぞれ本件製造方法発明及び本件製造装置発明の構成と均等なものであって、その各技術的範囲に属するものというべきであるから、本件謹告書に記載された事実が虚偽の事実であると認めることはできない。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。


追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成18(ワ)7073 職務発明の対価金請求事件 特許権 民事訴訟「エレクトレットコンデンサマイクロホン事件」 平成19年07月26日 大阪地方裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070815095259.pdf