●平成6(ネ)2857 特許権民事訴訟「インタフェロン事件」

 本日は、『平成6(ネ)2857 特許権 民事訴訟「インタフェロン事件」平成9年07月17日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/A385765522FFF9F949256A7700082C55.pdf)について取上げます。


 本件は、プロダクト・バイ・プロセス特許の技術的範囲について判示した著名な事案であり、特許請求の範囲が生産方法によって特定された物である場合には、特許の対象はあくまで生産方法によって特定された物であり、他の生産方法によって生産された物でも、物として同一である限り、その技術的範囲に含む、と判示した事案です。


 つまり、東京高裁は、

『4 次に、本件特許請求の範囲記載の「ヒト白血球インタフェロン」がヒトの白血球を産生細胞とするインターフェロンを意味すると解する結果、ヒト白血球以外を産生細胞とするインターフェロンは本件発明の技術的範囲から当然除外されることとなるか否かについて検討する。

 まず、本件発明は、医薬組成物の発明として新規な化学物質に係る用途発明に当たると認められるが、右用途発明に用いられる新規な化学物質の特定の問題自体は、化学物質特許における物の特定の問題と同じであると考えられる。


 そして、一般に、特許請求の範囲が生産方法によって特定された物であっても、対象とされる物が特許を受けられるものである場合には、特許の対象は飽くまで生産方法によって特定された物であると解することが発明の保護の観点から適切であり、本件において、特定の生産方法によって生産された物に限定して解釈すべき事情もうかがわれないから、本件特許請求の範囲にいう「ヒト白血球インタフェロン」は、産生細胞たる「ヒト白血球」から得られたものに限らず、他の細胞から得られたものであっても、物として同一である限り、その技術的範囲に含むものというべきである。


 このように解することは、特許請求の範囲の記載要領につき、

「(1) 化学物質は特定されて記載されていなければならない。化学物質を特定するにあたっては、化合物名又は化学構造式によって表示することを原則とする。化合物名又は化学構造式で特定することができないときは、物理的又は化学的性質によって特定できる場合に限り、これら性質によって特定することができる。また、化合物名、化学構造式又は性質のみで十分特定できないときは、更に製造方法を加えることによって特定できる場合に限り、特定手段の一部として製造方法を示してもよい。ただし、製造方法のみによる特定は認めない。」と定めている特許庁の「物質特許制度及び多項制に関する運用基準(昭和五〇年一〇月)」

の趣旨とも合致するものである。


 これに反する被控訴人らの主張は採用できない。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。


追伸;<気になった記事>

●『アステラス、抗生物質の特許侵害で損賠請求訴訟=大洋薬品工業を相手に』http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007080900852
●『アステラス、抗生物質の特許侵害で損賠請求訴訟=大洋薬品工業を相手に(時事通信)』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070809-00000186-jij-biz