●平成19(行ケ)10049 審決取消請求事件 商標権「チェチェ/CHECHE

  本日は、『平成19(行ケ)10049 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「チェチェ/CHECHE」平成19年07月19日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070726161906.pdf)について取上げます。


  本件は、商標登録不使用取消審判の取消審決の取消を求めたもので、その請求が認容され、商標登録取消審決が取消された事案です。


 本件では、登録商標と使用商標との社会通念上の同一性の判断が参考になります。



 つまり、知財高裁(第2部 中野哲弘 裁判長)は、

『1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。


2 原告主張の取消事由について

(1) 本件標章使用の有無


 ・・・省略・・・


イ 以上によれば,本件標章が,本件審判請求の予告登録の日である平成18年8月28日より前3年以内に,本件商標の指定商品である「履物」に付されていたと認めるのが相当である。

(2) 社会通念上の同一性の有無

 そこで,本件商標と本件標章とが社会通念上同一といえるかについて検討する。
本件商標は,前記第3の1(1)アに述べたとおり,「チェチェ/CHECHE」というものであって,カタカナによる「チェチェ」との文字とアルファベットによる「CHECHE」との文字を2段に配した構成によりなる商標であり,これに対し本件標章は,前記のとおり,「CHε・CHε」というものである。これを対比してみると,本件商標が2段の構成をしているのに対し,本件標章はアルファベットのみの構成である点,本件標章には「CHE」と「CHE」との間に「・」が挿入されている点,本件標章の「E」の部分が「ε」筆記体のとなっている点で,外観上の差異が認められる。

 ところで,本件商標のカタカナ部分は,アルファベット部分を日本語によって表記したものにすぎない。また,ハートの図形は,かわいらしさ,キユートさを想起させる図形として,女性用の衣料品・装身具類等のアクセントとしてしばしば用いられるデザインであり,本件標章におけるハートの図形についても,これが女性用の靴に用いられているものであって,しかも,同列のアルファベットの文字とほぼ同大,同間隔,同色であることからすれば,当該ハートの図形部分だけが看者に特別な印象を与えるものとはいえない。さらに,「E」の部分を「ε」としている点も,アルファベットの「E」を筆記体で表記したものとして,きわめてありふれたものであって,看者においてことさらに別異のものとして認識されるものではない。そして,ハートの図形部分や「E」の筆記体から独自の称呼は生じないことからすると,本件標章の称呼は,本件商標の称呼である「チェチェ」と同一と解して妨げなく,観念として新たなものを付加するものでもない。

 そうすると,本件標章は,本件商標と社会通念上同一と認めるのが相当である。。


(3) 本件婦人靴は原告の商品か


 ・・・省略・・・


(4) 信義則違反・権利濫用の有無

 被告は,原告が,審判手続において,答弁すら行わなかったことは信義則に違反し,又は権利濫用に該当する旨主張するが,商標登録の不使用取消審判に係る審決取消訴訟において,審判請求の登録前3年以内における登録商標の使用の事実の存否の立証は,事実審の口頭弁論終結時に至るまで許されるものと解するのが相当である(最高裁平成3年4月23日第三小法廷判決・民集45巻4号538頁)から,被告の主張は採用の限りでない。


3 結論

 以上によれば,原告は,本件審判請求の予告登録の日である平成18年8月28日より前3年以内に,本件商標と社会通念上同一と認められる標章を本件商標の指定商品である履物に付して使用していたことになるから,これと結論を異にする審決は違法として取消しを免れない。

 よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。