●平成19(ワ)7324 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟

 本日は、『平成19(ワ)7324 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成19年07月25日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070726132242.pdf)について取上げます。


 本件は、本判決文の事案の概要に記載されているように、小説を執筆し,その原稿を新聞社に送付した原告が,上記送付後に同新聞社発行の新聞に連載された小説の表現の多くが,原告の上記小説の表現と同一であり,上記新聞に連載された小説を執筆したことは,原告の上記小説の該当部分についての著作権(複製権)の侵害に当たるとして,上記連載小説の執筆者である被告に対して,民法709条に基づき,著作権侵害不法行為による2000万円の損害賠償を請求している事案で、その請求が棄却された事案です。


 つまり、東京地裁(第29部 清水節 裁判長)は、

著作権法による保護の対象となる著作物は,思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である(著作権法2条1項1号)ところ,「創作的に表現したもの」というためには,作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り,厳密な意味で,独創性が発揮されたものであることまでは必要ないが,言語からなる作品においては,表現が平凡かつありふれたものである場合や,文章が短いため,その表現方法に大きな制約があり,他の表現が想定できない場合には,作成者の個性が現れておらず,「創作的に表現したもの」ということはできないと解すべきである。


 原告は,被告小説侵害主張部分が原告小説被侵害主張部分と同一であり,被告小説の執筆は,原告小説被侵害主張分について原告が有する著作権を侵害する旨主張するので,当該主張部分を個別に検討するに,まず,原告小説被侵害主張部分(753頁13行から15行)については,アイディアの同一性を主張するものであって,表現の同一性をいうものではないし,原告小説被侵害主張部分(504頁10行から14行目及び981頁5行から6行目)と,それに対応する被告小説侵害主張部分(平成16年11月16日付け)とは,同一であるとも類似しているともいえないことが明らかである。


 また,上記以外の原告小説被侵害主張部分は,地名を表示するもの(240頁4行目及び994頁19行から995頁2行目の一部)を含むほか,いずれも,日常的によく使用されている,極めてありふれた表現であって(しかも,そのほとんどは,1ないし2単語の語句である。),同部分に著作物性が認められないことが明らかであるから,原告の上記主張は,いずれも採用できない。

 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。


第4 結論

 以上の次第で,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。


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