●平成19(行ケ)10051 審決取消請求事件 商標権「PINK’S ピンクス」

 本日は、『平成19(行ケ)10051 審決取消請求事件 商標権「PINK'S ピンクス」行政訴訟平成19年07月19日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070725135804.pdf)について取上げます。


 本件は、商標法4条1項11号違反の拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、請求が棄却された事案です。


 本件では、引用登録商標を無効に可能?な原告所有の先願先登録の登録商標があったのに、当該引用登録商標を無効にしていなかったため、本願商標の当該引用登録商標による商標法4条1項11号違反による拒絶が維持された事案です。



 つまり、知財高裁(第2部 中野哲弘 裁判長)は、


『原告は,本願商標と引用商標とは「ピンクス」の称呼を共通にする類似の商標であって,かつ,指定役務も同一又は類似するものであることは争わないので,以下,原告主張の取消事由の当否について判断する。

2 原告の主張に対する判断

(1) 本件における事実関係

ア証拠(甲1の1ないし3,2ないし4,5の1,2,6ないし10)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件における事実関係は以下のとおりであったことが認められる。

(ア) 前記のとおりの内容を有する本願は,原告により平成17年9月12日に出願され,平成18年4月14日(起案日)に拒絶査定を受け,平成18年6月16日付けで不服の審判請求を行うも,平成18年12月26日付けで特許庁から前記のような理由で請求不成立の審決がなされた。

(イ) また,前記のとおりの内容を有する引用商標は,Aから平成12年9月8日に出願され,複数回の補正手続を経て,平成14年9月17日に登録査定がされ,平成14年11月15日に登録されたものである。

(ウ) 一方,原告が所有し,前記のとおりの内容を有する原告商標1・2・3は,出願日は順に平成9年11月4日・同10年5月20日・同10年3月18日であり,登録日は順に平成11年3月5日・同11年7月9日・同11年6月25日である。

(エ) 原告が本願に関する前記(ア)の不服審判請求において理由としたことは別添審決写し記載のとおり,本願商標の指定役務中,第43類の「飲食物の提供」と引用商標の指定役務中第42類の「キャバレー・カフェ・ナイトクラブ・ダンスホール・喫茶店及びバーにおける飲食物の提供」は非類似の役務である等とするものであり,本訴においてなす原告の取消事由の主張は,本訴に至って初めてなされる主張である。

(オ) その後原告は,本訴提起後の平成19年4月13日付けで,Aを被請求人として引用商標につき特許庁に商標登録無効審判請求を行い,現在,その審理中である。


イ 以上の認定事実に基づき,以下,原告主張の当否について判断する。

(2) 原告は,引用商標は,引用商標よりも先に出願され,登録された原告商標1ないし3との類否判断を誤った過誤登録に係る商標であるから,原告請求の引用商標に係る無効審判の結論を待つことなく,本件訴訟において当然無効と判断すべきであると主張する。


  しかし,引用商標が無効であるかどうかは,引用商標権者を被請求人とする特許庁の商標登録無効審判手続において対比される商標(本件では原告商標1ないし3)との関係を中心に判断されるものであり,かつその類否判断の基準も「対比される両商標が同一または類似の商品ないし役務に使用された場合に,その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品または役務に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品または役務の取引の実情を明らかにしうるかぎり,その具体的取引状況に基づいて判断」される(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)のであるから,引用商標が原告商標1ないし3との関係で無効と判断される可能性が高いとしても,上記のような手続上及び実体上の不確定要素がある以上,平成14年9月17日になされた引用商標の査定処分に明白かつ重大な瑕疵があったということはできない。


 そもそも,法4条1項11号の規定は,商品の出所の混同防止のためのものであるから,その類否の判断は当該出願に係る商標と特定の他人の登録商標(本件においては前記引用商標)との対比においてのみ決定されるべきものであり,たとえ上記他人の登録商標(引用商標)が,第三の登録商標たる原告商標1ないし3との関係において登録を無効とされるべき瑕疵を有していたとしても,そのことによって類否の判断を異にするにいたるものではない。


 原告は,法39条が特許法104条の3を準用していることを理由に,裁判所は商標法の定める無効審判手続における無効審決の確定を待たずして商標登録の無効性を判断できる旨主張するが,同条が適用されるのは,「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」(商標法に則していえば「商標権又は専用使用権の侵害に係る訴訟」)についてであるから,前提において失当であり,本件のような拒絶査定不成立審決の取消訴訟に適用されるものではない。


 原告の上記主張は理由がない。

(3) 次に原告は,平成19年4月13日付けで引用商標の無効審判請求をしており,その手続の中で無効審決がなされることが確実である等と主張するが,上記(2)で説示したように,無効審決がなされるかどうか確実でなく, かつ未だ無効審決はなされていないのであるから(なお原告は,前記のとおり本件訴訟提起後,初めて引用商標の無効審判請求を行ったところ,それまでも原告において無効審判請求を行うについては何らの障害もなかったものであり,本件訴訟において引用商標の無効を前提問題として判断することを相当とする事情は全く存しない。),その余について判断するまでもなく,原告の主張は理由がない。


3 結語
 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,本願商標が法4条1項11号に該当するとした審決の認定判断に誤りはない。

 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。


 商標は専門ではありませんが、個人的には、原告の先願先登録商標の指定役務第42類の「飲食物の提供」と、引用商標の指定役務の第42類の「キャバレー・カフェ・ナイトクラブ・ダンスホール・喫茶店及びバーにおける飲食物の提供」とは同一または類似の役務であり、標章も同一であるので、引用登録商標は商標法4条1項11号違反の過娯登録であって、無効とされる可能性が高いのであれば、無効審判が請求されている以上、その結果等を待つなどして、本願商標の拒絶審決は取消されても良いのではないのかな、と思いました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。


追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成19(行ケ)10099 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「編み機およびヤーン切替え装置」 平成19年07月23日 知的財産高等裁判所』(一部認容判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070725101545.pdf
●『平成18(行ケ)10539 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「白さばふぐ或いは黒さばふぐの加工方法」平成19年07月20日 知的財産高等裁判所』(認容判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070725134916.pdf
●『平成19(行ケ)10049 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「チェチェ CHECHE」平成19年07月19日 知的財産高等裁判所』(認容判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070726161906.pdf)
●『平成18(行ケ)10519等 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟餃子の王将」「元祖餃子の王将」 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所』(認容判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070725141109.pdf
●『平成19(行ケ)10051 審決取消請求事件 商標権「PINK'S ピンクス」行政訴訟平成19年07月19日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070725135804.pdf
●『平成18(行ケ)10487 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「水性接着剤」平成19年07月19日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070725133656.pdf


追伸2;<気になった記事>

●『第4回:日本の携帯メーカーが独り立ちできなかった3つの理由』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070724/278110/?ST=network
●『TPLグループはテキサス州裁判所におけるムーアマイクロプロセッサー 特許™ (MMP)侵害裁判の日程組み直しの申し立てを申請』
http://home.businesswire.com/portal/site/google/index.jsp?ndmViewId=news_view&newsId=20070724005541&newsLang=ja
●『韓国の国際特許出願数、4年連続20%以上の増加(YONHAP NEWS)』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070725-00000022-yonh-kr