●平成18(行ケ)10087 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

  本日は、『平成18(行ケ)10087 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成19年06月13日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070613162437.pdf)について紹介します。


 本件は、商標法4条1項11号、10号、15号違反の拒絶審決の取消を求めた訴訟で、原告の請求が棄却された事案です。



 つまり、知材高裁(第3部 飯村敏明裁判長)は、

『1 商標法4条1項11号の該当性について

 本件商標が商標法4条1項11号に該当性しないとした審決の認定,判断に誤りはない。その理由は,以下のとおりである。

(1) 本件商標について

ア 構成
 本件商標は,別紙審決書の写し中の別掲(1)記載のとおり,歯車様黒塗り円図形の内部に白抜き綱様円輪郭を配置し,さらにその白抜き綱様円輪郭の中に足跡様図形を配置し,足跡様図形は,白抜きの不整形の山形図形とその凸部に沿うように5つの白抜きの縦長楕円様図形が並べてなるものである。

イ 外観,観念及び称呼
(外観)本件商標では,足跡様図形は白抜きで,縦長楕円様の図形が5つ並んでいること,歯車様黒塗り図形及び白抜き綱様円輪郭が足跡様図形を囲んでいること,外側図柄の占める面積は中央部分の図形より,はるかに大きいことという点で外観上の特徴がある。

(観念)本件商標は,その中央の足跡様図形を取り囲む歯車様黒塗り図形及び白抜き綱様円輪郭は,格別の観念を生ずるものではないが,強いていえば,「歯車」あるいは「円状の物体が破裂した状況」などを連想させる。中央の図形のみに着目するならば,「動物の足跡」の観念を生じる余地がないではないが,外側の図形を含めて図形全体からどのような観念が生じるかを検討すると,①円状の図形が中央の図形と比べて極めて広い面積を占めていること,②外側の歯車様図形には装飾が施され,歯車のような印象を与えていること,③中央の足跡様図形は,丸みを帯びて,抽象化されて描かれていること,④外側の図形の存在が,機械的,無機質的な印象を与えるため,中央の図柄に注目したとしても「垂直上方に進む動物が残した1足の足跡」との観念を抱かせることに大きな障害があるといえること等を総合すると,本件商標を看た者が,確定的に動物の足跡と観念することはないと理解するのが相当である。

(称呼)本件商標は,上記のとおり,動物の足跡を連想させる余地もあるものの,なおかつ,それを取り囲む歯車様黒塗り図形及び白抜き綱様円輪郭と併せると一体の図形としては何らの称呼も生じさせることはない。

(2) 引用商標について

ア 構成
 引用商標は,別紙審決書の写し中の別掲(2)記載のとおり,黒塗り図形で,①中央下部に丸みのある不整形の山形図形,②その上部に上記山形図形の凸部に沿うように4つの縦長楕円様図形,③その先に4個の丸みのある二等辺三角形の図形から構成され,これらの図形はいずれも右斜め上方約45度の角度で配置されている。

イ 外観,観念及び称呼
(外観)引用商標では,黒塗りで右斜め上方45度に傾けられて描かれていること,縦長楕円様図形が,また,その先に二等辺三角形の図形が,それぞれ4つ描かれている。
(観念)引用商標では,不整形の山形図形,4つの縦長楕円様図形及びそれに対応する4つの二等辺三角形を併せると,全体として爪のある獣の足跡との観念を生じる。
(称呼)引用商標では,取引実務において,爪のある獣の足跡という観念に相当する的確な称呼は生じない。


(3) 本件商標と引用商標との類否
ア 以上を前提として本件商標と引用商標を対比する。①外観について,後述イのとおり,本件商標の足跡様図形のみと引用商標とを対比したとしても,本件商標は,引用商標と異なるのみならず,本件商標の全体形状(足跡様図形の周りに歯車様黒塗り図形及び白抜き綱様円輪郭が設けられている形状)と引用商標とを対比するならば,両者は明らかに異なること,②観念について,前記のとおり,引用商標からは「爪のある獣の足跡」を観念できるが,本件商標からは動物の足跡を観念できず,③称呼について,本件商標には何らの称呼も生じないので対比できないこと,との点を総合すれば,本件商標と引用商標とは類似しない商標ということができる。

イ これに対して,原告は,本件商標と引用商標を離隔観察した場合,外観上,最も取引者又は需要者に強い印象を与えるのは,山形図形を配し,その上部に縦長楕円様図形を山形図形の凸部に沿うように並べてなり,一見して獣類の足跡と認められる点にあり,この部分によって商品の出所を識別するのであって,色彩や爪の有無のような細部は捨象されると主張する。

 しかし,引用商標は,「右斜め上方に向いた爪のある獣の足跡」と明白に認識できる独特の形状から構成されているのに対して,本件商標は,中央部に配置された山形図形と5つの縦長楕円様図形と外側に配置された歯車様の図形から構成されるものであり,中央の図形は全体的に丸みを帯びたものであって,引用商標と本件商標(全体に着目した場合及び中央の図形に着目した場合のいずれも)の相違は決して微細なものとはいえない。 


 取引者又は需要者が本件商標と引用商標を離隔観察した場合,各図形の向き,縦長楕円様図形の有無,上記色彩や二等辺三角形の図形の有無等を総合して観察した場合に,本件商標と引用商標との間において,商品等の出所を識別するに足りるほどに相違しているというべきである。原告の上記主張は理由がない。


2 商標法4条1項10号及び15号の該当性について

 前記1で認定判断したとおりの理由から,本件商標と引用商標とは類似しているとはいえないので,他の要件の存否について判断するまでもなく,商標法4条1項10号に該当するとはいえない。また,同様に,前記1で認定したとおりの理由から,本件商標と引用商標において,引用商標の指定商品等の取引者又は需要者において普通に払われる注意力を基準としても,本件商標と引用商標(引用標章を含む。)とはその出所を区別することができ,混同(広義の意味での混同を含む。)を生ずるおそれがあるということはできず,他の要件の存否について判断するまでもなく,商標法4条1項15号に該当するとはいえない。

 なお,被告が本件商標の一部分を使用したりするなど,本件商標の使用態様を変更すること等によって,原告商品との出所の混同を来すような場合があるとすれば,これに対する救済は別途の手段によりされるべきであって,審決のした判断の違法性の有無に消長を来すものとはいえない。


3 結論

 以上に検討したところによると,原告の請求は理由がない。よって,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照ください。


 追伸1;<気になった記事>

●『任天堂Wiiをめぐる新たな特許訴訟に直面』http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20350980,00.htm
●『パテントトロール対策、米・大手IT主導で−「特許」の質向上へ(日刊工業新聞)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=1536
●『ACCESS、LZW特許の訴訟を600万ドルで和解』http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0706/15/news126.html
●『ACCESSと米Unisysが「GIF」圧縮・伸長技術巡る特許訴訟で和解』http://journal.mycom.co.jp/news/2007/06/15/045/
●『「GIF特許」ライセンス料訴訟でACCESSとUnisysが和解』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/15/news117.html