●平成18(行ケ)10560 審決取消請求事件 商標権 「一葉 KAZUHA」

 本日は、『平成18(行ケ)10560 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 「一葉 KAZUHA」平成19年05月31日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070604103620.pdf)について紹介します。


 本件は、「一葉 KAZUHA」の商標につき商標法4条1項11号の拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、原告の請求が棄却された事案です。


 昨日紹介した『平成18(行ケ)10528 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟POLO COUNTRY」平成19年05月31日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070604104819.pdf)と同様、商標法4条1項11号の判断が参考になるかと思います。



 つまり、知財高裁は(第4部 石原直樹 裁判長)は、


『1 「本願商標の称呼の認定の誤り」との主張について

(1) 本願商標は,別紙商標目録記載のとおり,黒色の一枚の葉の図形,当該図形を背景として,そのほぼ全体にわたる大きさで白抜きの太線(ただし,該図形からはみ出している部分は,黒色の太線である。)により描かれた「一葉」の文字及び当該図形の下端部に,小さく白抜きの細線により描かれた「KAZUHA」の文字から構成されるものであるところ,本願商標に接した取引者及び需要者は,本願商標の上記構成に照らし,まず,視覚的に顕著に表された一枚の葉の図形及び「一葉」の文字に着目するとみるのが相当である(原告は,本願商標に接した取引者及び需要者が最初に最も注意を引かれるのは葉の図形である旨主張するが,本願商標の上記構成に照らし,最初に最も注意を引かれるのが,葉の図形のみであって,「一葉」の文字には注意を引かれないということはできない。)。


(2) そして,我が国の代表的な国語辞典である株式会社岩波書店発行の「広辞苑第五版」(平成10年11月11日発行,乙2)や,株式会社三省堂発行の「大辞林新装第二版」(平成11年10月1日発行,乙3)に,「一葉」の語につき,「イチヨウ」の読みと,「一枚の(木の)葉」,「(一隻の)小舟」等の語義が掲載されていることによれば,一般にも,「一葉」の語がそのような読みと意味とを有するものと理解されていると認められ,そうであれば,上記(1)のとおり,本願商標に接し,一枚の葉の図形及び「一葉」の文字に着目した取引者及び需要者は,当該図形と「一葉」の語に係る上記のような一般的な読み及び意味とに基づいて,自然に「イチヨウ」の称呼と「一枚の葉」の観念を得るものと認めることができる。


(3) 原告は,本願商標中に「KAZUHA」の文字が併記されていることから,「一葉」の文字の称呼は「カズハ」と特定され,「イチヨウ」の称呼は生じない旨主張する。確かに,本願商標に接した取引者及び需要者が,一枚の葉の図形及び「一葉」の文字に着目するとともに,「KAZUHA」の文字にも着目することがないとまではいえず,したがって,本願商標から,「KAZUHA」の文字の構成に相応して「カズハ」の称呼が生じ得ることも否定し得ないが,当該「KAZUHA」の文字は,一枚の葉の図形の下端部に小さく白抜きの細線により描かれたものであり,その文字の長さも,原告自らが主張するとおり,「一葉」の文字よりはるかに短く,前後の端部が「一葉」の文字と揃えられているものでもないから,「KAZUHA」の文字が「一葉」の文字の読みを示していると理解することは,必ずしも容易であるとはいえず,そうすると,たとえ,取引者及び需要者が,本願商標から「カズハ」の称呼を得た場合であっても,併せて「イチヨウ」の称呼が生ずることを妨げるものではない。


(4) 以上のとおりであるから,本願商標から「イチヨウ」の称呼が生じるのが自然であるとした審決の認定に誤りはないというべきである。


2 「本願商標と引用商標とが類似であるとの判断の誤り」との主張について

(1) 本願商標から,「イチヨウ」の称呼及び「一枚の葉」の観念が生じると認められることは,上記1のとおりである。他方,引用商標(甲1)は,標準文字で「一葉」の文字を書してなるものであるから,上記1の(2)において認定した「一葉」の語の一般的な読み及び意味に対応して,引用商標からも「イチヨウ」の称呼及び「一枚の葉」の観念が生じると認められ,したがって,両商標は,同一の称呼及び観念を有するものである。


(2) そうすると,本願商標と引用商標とは,少なくとも,称呼及び観念が同一であるから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当するものと認めるのが相当であり,これと同旨の審決の判断に誤りはないというべきである。


第5 結論

 以上のとおりであって,原告主張の審決取消事由は理由がないから,原告の請求は棄却されるべきである。  』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照ください。


追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成18(行ケ)10310 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「合成画像システム」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070605114002.pdf
●『平成18(行ケ)10463 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟「管継ぎ手」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070605113149.pdf
●『平成18(行ケ)10462 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟「管継ぎ手」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070605111443.pdf
●『平成18(行ケ)10461 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟「管継ぎ手」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070605110450.pdf
●『平成18(行ケ)10460 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟「管継ぎ手」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070605105214.pdf


追伸2;<気になった記事>

●『ソニーを特許侵害で提訴 カナダ企業が米連邦地裁に 』http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070605/sng070605010.htm
●『訴訟続くソニー、今度はデジタルセキュリティ特許で訴えられる』http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20350195,00.htm
●『LinuxディストリビュータXandrosMicrosoftと技術/特許契約を締結 』http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070605/273500/?ST=oss
●『マイクロソフトとザンドロス、Windows-Linux相互運用で提携 ノベルに続き、ザンドロスもマイクロソフトの知的財産使用権を取得 』http://www.computerworld.jp/topics/osst/66229.html
●『米3M、Liイオン2次電池材料の特許侵害訴訟で松下電器らと和解』http://www.nikkeibp.co.jp/news/manu07q2/535634/