●平成18(行ケ)10528 審決取消請求事件 商標権「POLO COUNTRY」

 本日は、『平成18(行ケ)10528 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟POLO COUNTRY」平成19年05月31日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070604104819.pdf)について紹介します。


 本件は、商標法4条1項11号の商標登録に対する無効審判請求の不成立(棄却)審決の取消しを求める訴訟で、その請求が認容された事案です。


 本件では、商標法4条1項11号の商標の類否について,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否かによって決すべきとした最高裁判決を引用している点で、参考になる判決かと思います。



 つまり、知財高裁は(第4部 石原直樹 裁判長)は、


『1 原告主張の審決取消事由(類否判断の誤り)について

(1) 商標法4条1項11号は,「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって,その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務・・・又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」については,商標登録を受けることができない旨規定している。この場合,商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否かによって決すべきであり,誤認混同を生じるおそれがあるか否かは,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者及び需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察し,これらに加え,その商品についての取引の実情を明らかにし得る限り,具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和43年2月27日第二小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。


 そこで,引用商標1及び3並びにこれらに係る指定商品との対比において,上記の観点から,本件商標の指定商品中「被服」に係る登録が商標法4条1項11号の規定に違反してされたものであるか否かについて検討する。


(2) 本件商標につき,原告は,「POLO」の文字部分がその要部である旨主張するのに対し,被告は,「POLO」の文字部分が要部であると解することはできず,本件商標は一体としての「POLO COUNTRY」として理解されるべきである旨主張するので,まず,この点について検討する。


ア 掲記の証拠によれば,次の事実が認められる。

・・・省略・・・

イ 上記認定事実によれば,「COUNTRY」又は「カントリー」の語は,一般には,「国」,「地方」,「田舎」,「郊外」等の意味を有するものであるが,服飾用語としては,専ら「田舎」,「郊外」又はこれに類する意味に限定され,「カントリー・ウェア」,「カントリー・ジャケット」などのように,「田舎風の」というような意味で,他の語句の修飾語として用いられる場合,「カントリー調」,「カントリー風」などのように,物事の様子やおもむきを表す語と結び付いた状態で「田舎風」という趣旨で用いられる場合,さらに,「COUNTRY」又は「カントリー」単独で,あるいは「ブリティッシュ・カントリー」のように,他の語句に修飾されて,「田舎風」という意味で用いられる場合などがあることが認められる。


 そうであれば,「COUNTRY」又は「カントリー」の語が被服について使用された場合には,これに接した取引者・需要者は,これらの語が,当該被服がカントリー・ウェア,あるいはカントリー風のデザイン,色彩等を備えた被服であることを示すものと認識,理解するのが通常であるということができ,そうだとすると,「POLO COUNTRY」の欧文字から成る本件商標が,その指定商品である「被服」について用いられた場合,本件商標の構成中の「COUNTRY」の部分は,当該被服の形状,品質等を表すものとしか認識されず,「POLO」の部分のみが,自他商品の識別機能を果たすものと,取引者・需要者に認識されることは明らかである。したがって,本件商標のいわゆる要部は,「POLO」の文字部分にあるものと認めるのが相当である。


 被告は,「COUNTRY」又は「カントリー」の語のみでは,単に「国,地方」との意味合いしかないとか,「COUNTRY」又は「カントリー」を用いた語が,被服等の商品分野において,特定の品質,用途,デザイン,傾向,指向性を表すものとして一般に用いられているということはない旨主張するが,当該主張を認めるに足りる的確な証拠はなく,かえって,上掲各証拠により,上記説示のとおり認められるのであるから,被告の上記主張を採用することはできない。


(3) 一方,引用商標1及び3は,まさに「POLO」の文字のみからなるものであるから,上記(2)において認定した本件商標の要部と対比すると,称呼において同一であるということができる。


 また,「POLO」の語が,主として英国及び旧英国領の諸地域等において行われている馬上競技を示す普通名詞であること,襟付の半袖のカジュアル衣料を示す「ポロシャツ」の語が,本来ポロ競技の選手が着用したことにちなむもので,今日広く各国において普通名詞として用いられていることは,公知の事実であり,本件商標の要部と引用商標1及び3とは,いずれも,取引者及び需要者に,ポロ競技又はその略称であるポロの観念を生じさせるものと認められる。


 そうすると,本件商標と引用商標1及び3とは,称呼及び観念において類似するというべきである。


(4) 以上に加え,本件商標の指定商品中「被服」と引用商標1及び3の指定商品とは重複し,その需要者が通常は特別の専門知識を有しない一般消費者であることをも併せ考慮すれば,本件商標と引用商標1及び3とは,本件商標の指定商品中「被服」について使用される場合,商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあると認められる。


したがって,本件商標の指定商品中「被服」に係る登録は,商標法4条1項11号の規定に違反してされたものというべきであり,これと異なる審決の判断は誤りであるといわざるを得ない。


2  以上のとおりであるから,原告の本件請求は理由があり,審決は取消しを免れないというべきである。


第5 結論

 よって,原告の本件請求を認容することとし,訴訟費用の負担並びに上告及び上告受理の申立てのための付加期間について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,96条2項の規定を適用して,主文のとおり判決する。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照ください。



追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成18(行ケ)10528 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟POLO COUNTRY」平成19年05月31日 知的財産高等裁判所』(認容判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070604104819.pdf
●『平成18(行ケ)10428 審決取消請求事件 実用新案権 行政訴訟「一体成型によるブラジャーの構造」平成19年05月31日 知的財産高等裁判所』(認容判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070604104218.pdf
●『平成18(行ケ)10560 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「一葉 KAZUHA」」平成19年05月31日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070604103620.pdf
●『平成18(行ケ)10394 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「ドライビングゲームにおけるコースマップの表示方法及び画像処理方法並びにそれらの方法を用いた電子遊戯機器」平成19年05月31日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070604101329.pdf


追伸2;<気になった記事>

●『知的財産推進計画2007(H19.5.31)』http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/060531keikaku.pdf
●『知的財産戦略の進捗状況 知的財産推進計画2007 参考資料』
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/060531siryou.pdf
●『トヨタとのハイブリッド車向け技術の特許侵害訴訟で米ソロモンが控訴(ソロモン・テクノロジーズ)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=1472
●『WIPO研究プロジェクト・シンポジウム『知的財産制度が経済に与える影響』』http://www.ipnext.jp/event/houkoku/houkoku_detail070604.html
●『産総研イノベーションズ、関連知財をパッケージ化(日刊工業新聞) 』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=1467
●『FSF、GPLv3最終ドラフトを発表--MSとノベルの協定を容認』http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20350099,00.htm
●『プラグイン特許訴訟--米特許商標庁、問題の特許の抵触審査手続きを実施へ』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070604-00000011-cnet-sci
●『「プレステ3で特許侵害」カナダ企業がソニー提訴』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070605-00000501-yom-bus_all