●平成18(ワ)5172 損害賠償請求事件(一部判決) 不正競争 民事訴訟

   本日は、『平成18(ワ)5172 損害賠償請求事件(一部判決) 不正競争 民事訴訟 平成19年05月10日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070514165435.pdf)について取上げます。


 本件は、原告が不正競争防止法2条1項4号の不正競争行為に対し損害賠償を求めた事案で、被告が本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出せず,請求原因事実を明らかに争われなかっため、いわゆる被告欠席による擬制自白(民訴159条)により、原告の請求がほぼ認容された事案です。


 つまり、大阪地裁は(第21民事部 田中俊次裁判長)は、

『1 被告は,適式の呼び出しを受けながら,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出せず,請求原因事実を明らかに争わないから,これを自白したものとみなす。

2(1) 上記事実によれば,本件プログラム及び本件顧客情報が営業秘密であること,被告がP2と共に本件プログラム及び本件顧客情報を原告イープランニングから不正に取得し,かつ,不正取得した営業秘密をP4,P5及びP3に対して開示したことが認められ,このような被告及びP2の行為は,不正競争防止法2条1項4号所定の不正競争行為に該当する。さらに,P4,P5及びP3は,被告及びP2による本件プログラム及び本件顧客情報の不正取得行為が介在することを知って,営業秘密である本件プログラム及び本件顧客情報を取得して,各被告サイトの運営に使用したことが認められ,これらの行為は,不正競争防止法2条1項5号所定の不正競争行為に該当する。


 そして,被告らは,本件プログラムを各被告サイトの運営のために使用することを共謀し,一体となって営業秘密である本件プログラムの不正取得行為及び不正使用行為を行ったのであるから,被告らの不正競争行為は,共同不法行為民法719条1項前段)に該当するものである。


(2) そして,原告イープランニングは,被告らが無断で本件プログラムを用いて4つの出会い系サイトを運営し,少なくとも1174万5521円の売上げを上げたことによって,得べかりし利益として初期導入ライセンス料相当損害金600万円及びランニングロイヤリティ相当損害金として1174万5521円の20%である234万9104円,合計834万9104円の損害を被ったと認めることができる。


(3) 他方,原告マテリアルがP1に対して支給したという給与333万3333円は,被告らによる本件プログラムの不正取得行為等がなくても,P1との間の雇用契約に基づいて支払うべきであることは,同原告の主張自体から明らかである当裁判所は同原告に対して第1回口頭弁論期日前に原告マテリアルに生じた損害について,P1氏に支払った給与全額を調査費用としているが,それらには本件被告らの行為がなくても支出した費用も含まれていると思われるので,通常支払うべき費用以外に別途かかった費用を損害として主張することを検討されたい(例:P1氏が通常行っている業務ができなくなった結果,「発生した外部委託費用等」。)との求釈明を行ったが,同原告はこれに対して回答をしていない(当裁判所に顕著な事実)。また,原告マテリアルは,P1が被告らによる本件プログラムの不正取得行為の調査に従事したことによって,同原告がP1との雇用契約に基づいて支払うべき給与以外に,同原告の通常の業務のために支出を余儀なくされた費用があったとの主張をしない。


 さらに,原告マテリアルが被告らからの侵害行為を予防するために購入したソフトウェアの購入費用を支出したと主張するところ,同費用相当額は,被告の本件プログラムの不正取得行為等と相当因果関係があるとは認められないというべきである。すなわち,被告らの上記行為は,同ソフトウェア購入の契機となったということはできるとしても,被告らは既に本件プログラムを取得しているのであるから,さらに本件プログラムにアクセスする必要性に乏しい上,具体的に被告らが再度本件プログラムを不正取得しようとしていたことを窺わせるに足りる事情の主張がない。これらによれば,むしろ原告マテリアルは,今後の被告ら以外の第三者による本件プログラムの不正取得行為等を予防するために購入したものであると認めるのが相当である。


 そして,金銭賠償による原状回復を旨とする損害賠償制度においては,被告らによる本件プログラムの不正取得行為等が存在しなかった状態への金銭による原状回復がなされれば足りるのであるから,原告マテリアルが主張する上記ソフトウェア購入費用は,かかる原状回復の限度を超える損害を主張するものというべきである。よって,原告マテリアルが主張するソフトウェアの購入費用は,上記被告らによる本件プログラムの不正取得行為等と相当因果関係のある損害であると認めることはできない。


(4) そして,上記不正競争行為と相当因果関係を有する弁護士費用は,本件事案の性質,内容,請求認容額等を考慮すると,83万円の限度で認めるのが相当である。


3 よって、原告イープランニングの本訴請求は、不正競争防止法4条に基づき917万9104円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年3月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の同原告の請求及び原告マテリアルの本訴請求はいずれも理由がないから棄却する。


 なお,原告らは,口頭弁論終結後の平成19年4月27日に,本件プログラムのライセンス料相当損害金が本件プログラムを使用したことによって得た売上げの20%であることを立証するため,供給先とのライセンス契約の契約書を書証として提出するべく弁論再開を申し立てた。しかし,上記2(2)のとおり,原告イープランニングに生じたランニングロイヤリティ相当損害金が被告らの上げた売上げの20%であることについては擬制自白が成立しており,上記契約書によって認容額が左右されるものではないから,口頭弁論を再開する必要はない。


 よって,主文のとおり判決する。   』

と判示されました。


詳細は、本判決文を参照して下さい。



 追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成18(ワ)5172 損害賠償請求事件(一部判決) 不正競争 民事訴訟 平成19年05月10日 大阪地方裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070514165435.pdf
●『平成18(ワ)8752等 送信可能化権確認本訴請求事件,反訴請求事件 著作権 民事訴訟音源の送信可能化権 平成19年04月27日 東京地方裁判所http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070514160103.pdf


 追伸2;<気になった記事>

●『エーザイ、抗潰瘍薬の米国特許係争で勝訴 』http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200705/15/02801_2121.html
●『サントリーが類似品販売で2社を訴訟 』http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200705150026a.nwc
●『「Linuxベンダーは特許侵害の対価を払え」−−Microsoftが主張』http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070515/271048/?ST=win
●『MicrosoftLinuxベンダーらに特許侵害の賠償金を要求――「オープンソース・ソフトウェアはわれわれの特許を235件も侵害している!」 』http://opentechpress.jp/enterprise/07/05/15/1011207.shtml
●『マイクロソフトLinuxベンダーらに特許侵害の賠償金を要求』http://www.computerworld.jp/news/trd/64430.html
●『「出願の変更」及び「実用新案登録に基づく特許出願」の審査基準(案)等に寄せられたご意見について』(特許庁)http://www.jpo.go.jp/iken/iken20041222_kekka.htm