●パテント3月号の「改正意匠法24条2項について」

  一昨日、意匠の類比判断について、弁理士会の今月(3月)号のパテントの「改正意匠法24条2項について」(小谷悦司先生)に詳細に掲載されていると紹介しました。


 本論文を読むと、意匠の類比判断について、従来主流であった混同説(高田説)や、創作説(牛木説)等の内容や、各説の代表的な判決例等が紹介されているので、参考になります。


 特に、本論文には、混同説および創作説の紹介だけでなく、混同説および創作説の批判(欠点)、そして両説の欠点を解消した修正混同説(創作的混同説)、という説明もされているので、受験生の方にも、とても参考になるものと思います。


  例えば、「意匠の類似について論ぜよ」という問題が仮に出題された場合、1.混同説と創作説の紹介→2.混同説および創作説の欠点→3.そこで、両説の欠点を解消した修正混同説(創作的混同説)。という論理展開でそのまま使えるのではないかと思います。


 確か、私が受験生のころは、上記混同説および創作説以外に、加藤先生の需要説、斎藤先生の形態要部基準説などがあり、創作説の観点から混同説を修正する修正混同説(創作的混同説)はなく、しかも混同説と創作説とは相対立するもので、その両説を折衷的に修正すること等は許されてなく?、そのような答案を書いたら点数がつかなかったような時代であったので、どの説で意匠の類比を論じるのか結構苦労した記憶があります。


 意匠法24条、1条、3条や、意匠権の効力を類似範囲にまで認めることを等を総合的に考えると、個人的にも、意匠の類比は、修正混同説(創作的混同説)がバランスがとれている説であると思います。


 また、本論文には、最近の判決からみた意匠の類比判断基準の傾向として、修正混同説(創作的混同説)を採用して判断した意匠権侵害訴訟事件として、次の3つの判決例が掲載されています。


●『平成18(ネ)448 意匠権侵害差止等請求控訴事件 意匠権 民事訴訟「手さげかご」平成18年08月30日 大阪高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060831101149.pdf
●『平成18(ワ)13406 謝罪広告等請求事件 意匠権 民事訴訟「ゴルフ用ボールマーカー」平成18年10月30日 東京地方裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061030175415.pdf
●『平成18(ワ)7014 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟「ブロックマット」平成18年12月21日 大阪地方裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061222095935.pdf


 これに、一昨日、当方が紹介した知財高裁の、

●『平成18(行ケ)10084 謝罪広告等請求控訴事件 意匠権 民事訴訟「ゴルフ用ボールマーカー」平成19年03月27日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070328112638.pdf

もあります。


 こう見ると、最近の東京地裁、大阪地裁、大阪高裁、知財高裁とも全て、意匠の類比は、

 「意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,取引者・需要者の注意を最も惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と相手方意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。」、


 という修正混同説(創作的混同説)の立場を採用していることになります。
 

 ともかく、意匠の類比判断について興味のある方は、弁理士会の今月(3月)号のパテントの「改正意匠法24条2項について」(小谷悦司先生)を一読することをお薦めします。