●平成18(行ケ)10358審決取消請求事件 商標権「EIGOTOWN」

 本日は、『平成18(行ケ)10358審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「EIGOTOWN」平成19年03月26日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070327162127.pdf)について取上げます。


 本件は、不使用の商標登録取消審判の取消(認容)審決の取消を求めた訴訟で、原告の請求が棄却された事案です。


 本件では、原告の開設するウェブサイトにおける本件商標の表示等では、本件審判請求登録前に登録商標を使用していたものとは認めることができないと判断された点で、参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 飯村敏明裁判長裁判官)は、

『1 当裁判所は,本件各証拠によって,原告トップページにおいて,平成17年5月20日に本件吹出し切替画像が掲載され,以降閲覧可能となっていたことを認めることはできず,審決には事実認定を誤った違法はないと判断する。その理由は,以下のとおりである。


(1) 原告ウェブサイトにおける表示態様(甲10)について

 甲10は,コンピュータ上に起動した3つのウィンドウ画像をプリントアウトしたものである。左上に位置する第1のウィンドウ画像には,Address欄に「D:\www\images\etown.gif」と表記され,青色の吹き出し形状の図形の中に白色の「eigo」の欧文字とその右側にオレンジ色の「town.com」の欧文字が表示されており,右上に位置する第2のウィンドウ画像には,Address欄に「D:\www\images」と表記され,ファイル表示欄の3列目に 「Name 」として 「etown.gif 」, 「Size」として「23KB」,「Type」 として「GIF Image」,「Date Modified」として「5/20/2005 10:16AM」と各表示され,下側に位置する第3のウィンドウ画像には,アドレス欄に「http://www.englishtown.co.jp/」と表記され,当該ページの左上に,左から順に,青色の吹き出し形状の図形の中に白色の「eigo」の欧文字,及びその右側にオレンジ色の「town.com」の欧文字が表示されている。

 そうすると,確かに,これら3つのウィンドウ画像をみる限りにおいてはサーバーの中のDドライブにある「etown.gif」は,平成17年5月20日に修正され,同日以降,原告トップページにアクセスすれば,本件吹出し切替画像を閲覧することができたように見える。


 しかし,一般的に,コンピューターの画面上に表されている作成日やアドレス,ファイル名(甲10においては,「etown.gif」ファイルの「etown」の部分)等は,これを書き換えたり,あるいは画面(コンテンツ)自体を差し替えることが容易であり,例えば,ウェブサイトにデータをアップロードした日時,すなわちデータの更新日時は,個々のコンピュータに連動しているため,これを操作することで容易に真実と異なる日時を表示させることができる(乙2参照)。したがって,甲10の表示内容をもって,直ちに原告トップページにおいて平成17年5月20日以降本件吹出し切替画像が閲覧可能な状態にあったと認めることはできない。


(2) 原告関係者の陳述書及び電子メール等の資料について

 原告は,原告代表者フィッシャー並びに日本子会社の大前及び武部の陳述書並びにこれらの者の間で送受信した電子メール等(甲16ないし甲18)によれば,原告トップページ上の本件吹出し切替画像が平成17年5月20日以降閲覧可能な状態にあったことが明らかであると主張する。

 しかし,上記主張には理由がない。

 まず,電子メール(甲16ないし18の陳述書添付資料)については,その作成日は,作成者が使用するコンピュータで設定した日時に依存して記録されるものであって,容易に真実と異なる日時を表示することができるし,また 受信した電子メールの内容をその後に容易に訂正することもできる(乙3ないし5参照)。しかるに,フィッシャー,ホー,大前及び武部の間で送受信された電子メールのファイルを保存したものとして原告が提出したCDロム(検甲1)に記録されたファイルの内容を検討すると,これらのファイルには,電子メールファイルに受信日時の記録がなく,送信日時と添付ファイルの変更日時・作成日時が矛盾しているなどの点が認められる(乙1の1ないし8参照。なお,この点を指摘する被告の主張に対して,原告は,何ら具体的な説明ないし反論をしていない。)。


 また,原告は,本件吹出し切替画像が掲載された具体的経緯として,原告代表者フィッシャーの発案により,カルビン・ホーが画像を作成したと主張する。


 しかし、日本人ではないフィッシャー及びホーが,Englishの日本語訳である「英語」という語をローマ字表記して「Eigo」というロゴを使用することを発案したというのは不自然であるし,自らを表す表示として「Englishtown」という名称を用いて世界的に事業展開していた原告が,原告トップページの目立つ位置に 「Eigotown.com」 (これは,競業者である被告の会社名と同一である。)のロゴを含む本件吹出し切替画像を掲載することは,経営判断としても合理性を欠くものといえる。これらの点を指摘する被告の主張に対して,原告は,何ら具体的な説明ないし反論をしていない。なお,甲16及び弁論の全趣旨によれば,本件訴訟の係属時を通じて,原告トップページに,本件吹出し切替画像を掲載していないが,このことは,そもそも本件吹出し切替画像を掲載する合理性及び必要性が存在しなかったことを推認させる この点について 大前はその陳述書(甲16)において,審決の結果を受けて原告トップページから本件吹出し切替画像を外したとの理由を述べているが,合理的な理由とは到底いえない。)。


 さらに,フィッシャー,大前及び武部の各陳述書(甲16ないし18 )も画一的で似通った内容であって,直ちに措信できるものではない。


(3) ウェイバックマシンにおける原告ウェブサイトの保存

 原告は,ウェイバック・マシンに原告のウェブサイトのデータが収集・保されており,同サイトにおけるリストの「May 22, 2005」と書かれた部分をクリックすると,本件吹出し切替画像の表示された原告トップページの映像が現れるから,平成17年5月22日当時の原告トップページには,本件吹出し切替画像が掲載されていたことは明らかであると主張する。


 しかし,ウェイバック・マシンについては,利用規約に記録内容の正確性について保証しないことが記載されている上(乙9),現に,ウェイバックマシンに記録されている日経新聞のウェブサイトの内容について,真実と異なる内容が表示されている例が存在すること(乙11の1ないし5,12)。


 なお,このことは,原告は積極的に争っていないに照らせば,甲19ないし24をもって,直ちに原告トップページにおいて平成17年5月20日以降本件吹出し切替画像が閲覧可能な状態となっていたことを認めることはできない。


2 結論

 以上によれば,本件における全証拠に照らしても,原告トップページにおいて平成17年5月20日以降本件吹出し切替画像が閲覧可能であったことを認めるに足りず,結局,本件商標については,本件審判請求登録前3年以内に商標権者,専用使用権者又は通常使用権者がこれを使用したことについて,原告による証明がないことに帰するから,本件商標の登録を取り消すべきものとした審決の認定判断に誤りはない。原告の主張する取消事由には理由がなく,その他,審決には,これを取り消すべき誤りは見当たらない。

 よって,主文のとおり判決する。  』

と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。



追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成18(ネ)10082 商標権移転登録抹消登録手続請求控訴事件 商標権 民事訴訟 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070327162127.pdf
●『平成18(行ケ)10358審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「EIGOTOWN」平成19年03月26日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070327162127.pdf
●『平成18(行ケ)10296 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「フィールド酸化膜アイランドが除去されたメモリアレー及び方法」 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070327155048.pdf
●『平成18(行ケ)10197 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「遊技機」 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070326170818.pdf
●『平成18(行ケ)10196 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「遊技機」 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070326170609.pdf
●『平成18(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070326170054.pdf
●『平成18(行ケ)10162 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070326165910.pdf


追伸2;<気になった記事>

●『WSJ-ノキアクアルコム、ライセンス契約をめぐるせめぎ合い続く』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070327-00000020-dwj-biz
●『オラクル、オープンソース特許管理グループに参画へ』http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000056022,20345936,00.htm
●『オラクル、オープンソース特許管理グループに参画へ』http://japan.zdnet.com/oss/story/0,3800075264,20345936,00.htm
●『VoIP特許侵害訴訟,米Vonageはどこまでも強気』http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070327/266442/?ST=ittrend
●『Vonage、特許侵害問題は未だ最終局面ではないと改めて強調』http://japan.internet.com/busnews/20070327/10.html
●『特許庁住基カードで認証するネット出願受け付け開始(日刊工業新聞)』
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=1107
●『進歩性検討会報告書』
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/kenkyukai/sinpasei_kenotukai.htm