●平成18(行ケ)10202 審決取消請求事件 特許権 光ディスク

  本日は、『平成18(行ケ)10202 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「光ディスク、再生装置および再生方法」平成19年02月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070301101750.pdf)について紹介します。


 本件は、拒絶審決に対する取消を求めた審決訴訟で、棄却された事案です。


 本件では、請求の範囲における「反射率が高い薄膜層」の用語の解釈が争点になり、「反射率が高い薄膜層」は引用例に記載されていると知財高裁でも判断され、進歩性無しの拒絶審決が認容されました。



 つまり、知財高裁(第3部 飯村敏明裁判長裁判官)は、

『2 取消事由2(相違点についての容易想到性判断の誤り)について

 原告は,(i)本願発明の構成「所定の波長の光に対する反射率が高い薄膜層」を「所定の波長の光に対する屈折率が高く,かつ吸光係数が低い材料からなる薄膜層」であると理解すべきであるとした上,(ii)本願発明は,データ面に設ける薄膜層の反射率を高めることにより,「複数データ層光媒体のいずれのデータ層からのデータでも明確に読み取ることができる」という特有の効果を奏するものであるという前提に立って,本願発明は引用例発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではないから審決の判断には誤りがあると主張する。


 しかし,原告の主張は,以下のとおり,理由がない。


(1) 本願発明の内容

 ア本願明細書等の記載

 本願明細書(甲1,7)の特許請求の範囲の記載(請求項1)は,「第2 当事者間に争いのない事実2」のとおりである。


 また,本願明細書の記載によれば,発明の詳細な説明において,(i)本願発明の透明部材を構成する基板の表面がデータ面であること,(ii)データ面におけるデータは,ピットまたはその他のマークとして基板表面に直接形成されていること,(iii)データ面は薄膜層を有するものであって,データ面が薄膜層で覆われていること,(vi)薄膜層は,本願発明に係る光ディスクを使用する際に,ディスク駆動装置の光ヘッドが各データ面から同量の光を受け取ることができるように,データ面における所望の量の光の反射をもたらすためのものであって,光システムで使用される光の波長またはこれに近い波長において低い光吸収率を示す材料からなることが記載されていることが認められる。


イ 本願発明の相違点に係る構成の意義について

 本願発明の構成中の「(所定の波長の光に対する)反射率が高い薄膜層」の意義については,(i)特許請求の範囲の記載において,「反射率が高いと」記載され,格別の限定はないこと,(ii)本願明細書の発明の詳細な説明には,薄膜層は,本願発明に係る光ディスクを使用する際に,ディスク駆動装置の光ヘッドが各データ面から同量の光を受け取ることができるように,データ面における所望の量の光の反射をもたらすためのものであることが説明されていることが認められ,上記記載に照らすならば,「反射率が高い薄膜層」とは,「該データ面のデータを読み取れる程度に再生波長(所定の波長が再生波長を指すことについて争いはない。)の光を反射する薄膜層」であると理解すべきであって,これをもって足りる。


 この点,原告は,「反射率が高い薄膜層」とは,「屈折率が高く,かつ吸光係数が低い材料からなる薄膜層」であると解すべきであると主張する。


 しかし,材料,屈折率及び吸光係数については,特許請求の範囲の記載において格別限定されていないし,発明の詳細な説明等を参照しても,そのように限定的に理解すべき根拠は見い出せない。原告のこの点の主張は採用できない。


(2) 引用例発明の内容及び本願発明との対比

 引用例発明における「第1の情報面」は,所望の量の光の反射をもたらす薄膜層を有するものであって,該情報面のデータを読み取れる程度に,再生波長の光を反射するものであることは,前記1(1)において判示したとおりである。


 したがって,引用例(甲1)には,光ディスクの入射面に近いデータ面(本願発明の「第1のデータ面」に相当)に,本願発明の「所定の波長の光に対する反射率が高い薄膜層」を設ける点が開示されていると解される。また,本願発明が奏する作用効果は引用例発明においても奏されることも明らかである。


 審決は,相違点として挙げているが,あくまでも判断の前提として形式的に取り上げたにすぎず,実質的な差異があるとしたものではなく,その判断に誤りはない。


 以上のとおり,本願発明について引用例発明に基づいて当業者が容易に想到し得るとした審決の判断は,これを是認することができる。


3 結論

 その他,原告は縷々主張するがいずれも理由がない。
以上のとおりであるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決に,これを取り消すべき誤りは認められない。

 したがって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 審決および判決とも妥当な判断と思います。



追伸;<気になった記事>

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http://www.asahi.com/national/update/0310/OSK200703100025.html
●『米3M ソニーなど11社提訴 リチウム電池特許侵害で 』http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200703090017a.nwc
●『ノキアケンブリッジ大学ナノテクノロジーなどの共同研究契約を締結(ノキア)』
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=1005
●『米コンテントガード社、デジタル著作権管理の関連特許を韓国LG電子にライセンス(コンテントガード)』
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