●平成18(行ケ)10045 審決取消請求事件 特許 車両積み下ろし方法

 今日は、『平成18(行ケ)10045 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「車両積み下ろし方法および同装置」 平成19年02月26日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070227113942.pdf)について取上げます。


 本件は、原告が請求した特許無効審判において被告が請求した訂正請求を認めた上で棄却した無効審決の取消を求めた審決訴訟で、原告の請求が棄却された事件です。


 本件は、昨日紹介した、『平成18(行ケ)10126 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「地下構造物用錠装置」平成19年02月22日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070222162724.pdf)とは異なり、訂正が正当なものと判断されており、この点で参考になるものと思われます。



 つまり、知財高裁(第3部 三村量一裁判長裁判官)は、

『1 取消事由1(本件訂正の許否の判断の誤り)について

(1) 本件明細書(甲第21号証)には,発明が「解決しようとする課題は,従来の車両Cを運搬台90に載せて搬送する車両運搬車Rの車両積み下ろし装置は,地面Eが軟弱等である場合,ブリッジ91を容易に降ろしきることができず運搬が困難となるので,こうした問題を解決する。また,より有意義な使用態様を探求する。」(段落【0006】)との記載があり,発明の効果として,「このように本発明に係る車両積み下ろし方法および車両積み下ろし装置10によれば,荷台20を水平姿勢を維持したまま下降させることとしたので,その先端部が地面Eに食い込むことがなく,よって軟弱な地面E,積雪のある地面E,あるいは損傷し易いアスファルト等,あらゆる条件の地面Eで車両Cを車両運搬車Rに容易に載せることができる。従って,車両C等の運搬作業効率を大幅に向上させることができる。」(段落【0032】)との記載があり,これらの記載は,訂正されていない。

 訂正事項ロに関し,訂正明細書(甲第22号証)には,「本実施形態にあって,荷台20は,図9等に示すように,その前端部の荷台連結部20bに回動自在の接続ピン20cを介してキャリッジ23を有し,このキャリッジ23に,上下四つのキャリッジ用コロ24を回転自在にレール21を挟む状態で取付けると共に,左右方向のぶれを防止するために側面ガイドコロ24aを取付けている。このキャリッジ23には,チェーン22の両端部を固定している。…レール21のシャーシーS中心側は,レール21に沿い荷台20の下面に接し,荷台20の前後方向移動を円滑に達成するための荷台用コロ26を回転自在に取付けている。…また,荷台20がレール21から左右方向に外れるのを防止するための荷台20下面に設けた…ガイド20aの側面に接触する側面ガイドコロ26bをシャーシーSに取付けている。シャーシーSの中間部分には駆動鎖車28を固定し,この駆動鎖車28によってチェーン22を駆動させている。…駆動鎖車28の前後両側には遊び鎖車29を設け,駆動鎖車28とチェーン22との噛合い範囲を大きくし,動力の伝達をより確実なものとしている。」(段落【0016】〜【0017】)との記載がある。


 上記の記載によれば,訂正事項ロに係る「荷台用コロ(26)に下面を接触させ而も荷台下面に設けたガイド(20a)の側面を側面ガイドコロ(26b)に接触させ」は,荷台20の前後方向移動を円滑に達成するための構成であり,「レール21を挟む上下四つのキャリッジ用コロ(24)と左右方向のぶれを防止する側面ガイドコロ(24a)を有し…レール(21)を周回するチェーン(22)の両端部を固着したところのキャリッジ(23)」は,荷台20を移動させるための構成であり,「噛合範囲を大きくする遊び鎖車(29)を有する駆動鎖車(28)に噛合う」は,動力の伝達をより確実なものとする構成であるものと認められる。訂正事項ニ及びホも,訂正内容としては訂正事項ロと同様である。


 訂正事項ロ,ニ,ホのいずれも,本件特許発明1及び2の効果を奏するための「荷台を水平姿勢を維持したまま下降させる」との技術事項を実施するに際しての使用態様を具体化したものであって,付加された構成要件に多少の技術的意義は認められるにしても,本件特許発明1及び2の目的に沿ったものであり,発明の目的や作用効果を異にするような新たな構成を付加したものということはできない。


上記によれば,訂正事項ロ,ニ,ホについては,特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものということはできない。


(2) 原告は,本件訂正を認めると,モーターショーを観覧した第三者(原告を含む。)又は甲第1ないし第3号証の雑誌を読んだ第三者が本件訂正前の発明は公然実施発明であると確信して実施した場合に,本件訂正前には侵害とならなかった行為が本件訂正後には侵害行為とみなされるに至り,第三者は著しく不利益を受けることになると主張する。


 しかしながら,特許について無効審判が請求されたとしても,特許権者において当該審判手続において訂正請求をし,あるいは訂正審判を請求することによって特許請求の範囲を減縮することなどによって,無効審決を免れ得ることは,特許法上も予定されていることであるから,特許法の規定に照らして許容されるべき訂正がされ,それによって特許権者が無効審決を免れたからといって,第三者が不測の損害を被ったということはできない。原告が主張するところは,要するに本件訂正が許容されるべきものに該当しないことをいうに帰するものであって,およそ審決が本件訂正を認めたことについての違法をいう事由に該当するものとはいえない。


 
(3) 上記によれば,本件訂正を認めた審決の判断に誤りはない。   』


 と判断されました。


 詳細は、判決文を参照して下さい。



追伸;<新たに出された知財判決>

●『平成18(行ケ)10079 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「インビトロにおける組織の生存能力及び増殖能力を測定する,自生状態法及びシステム」平成19年02月26日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070227115710.pdf
●『平成18(行ケ)10045 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「車両積み下ろし方法および同装置」平成19年02月26日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070227113942.pdf
●『平成17(ワ)15552 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「サイクリック自動通信による電子配線システム」平成19年02月16日 東京地方裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070226173926.pdf



追伸;<気になった記事>

●『中外製薬、味の素に高裁でも勝訴=医薬品の製法特許めぐり』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070227-00000150-jij-biz
●『中外製薬、味の素に高裁でも勝訴。医薬品の製法特許めぐり』
http://news.braina.com/2007/0227/judge_20070227_002____.html
●『半導体特許侵害で調査開始=ルネサスの訴え受けて―米国際貿易委』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070227-00000132-jij-biz
●『SEDパネルの特許訴訟でキヤノンに厳しい判決』http://www.nikkeibp.co.jp/news/manu07q1/526681/
●『技術革新における欧米格差縮まる』http://jpn.cec.eu.int/home/news_jp_newsobj2110.php
●『Microsoft対AT&Tの裁判が注目される理由』http://www.nikkeibp.co.jp/news/it07q1/526703/
●『Google、中国でもGmailをめぐるドメイン論争に直面』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0702/27/news043.html
●『知的創造サイクル専門調査会(第10回)議事次第』http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai10/10gijisidai.html
●『知財戦略本部の専門調査会、海賊版対策で著作権法改正など提言 』http://news.braina.com/2007/0227/move_20070227_002____.html
●『ネット上の権利侵害、発信者情報の開示基準でISPガイドライン
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/02/26/14900.html