●平成18(行ケ)10317 審決取消請求事件 意匠権「プーリー事件」知

 本日は、『平成18(行ケ)10317 審決取消請求事件 意匠権「プーリー事件」平成19年01月31日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070131145507.pdf )について取上げます。


 本件は、部分意匠出願に対する意匠法3条1項3号の拒絶の審決の取消を求めた審決取消訴訟で、原告の請求が容認され、審決が取消された事案です。



 つまり、知材高裁は、

1 取消事由1(本願実線部分と本件相当部分の「位置,大きさ,範囲」が共通するとした認定判断の誤り)について


(1) 原告は,審決の「本願意匠の意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,位置,大きさ,範囲と,引用意匠の本願意匠に該当する部分が共通(する)」(審決謄本2頁第7段落)との認定判断を争い,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分(本願実線部分)と引用意匠における本願実線部分に相当する部分(本件相当部分)は,ボス部を除いた円環状のディスク部の略中央部分に位置する点では共通するものの,本願実線部分は,凹陥部の底面に位置するのに対し,本件相当部分は,ディスク部全体に広がる平坦面に位置する点で差異がある旨主張する。


(2) 「物品の部分」の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」ということがある。)であって,視覚を通じて美感を起こさせるものも,「意匠」(意匠法2条1項)であり,部分意匠として,意匠登録を受けることができる。


 部分意匠においては,物品全体の形状等に係る意匠と同様,意匠登録出願の願書には,原則として,意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付する必要があり(意匠法6条1項柱書),願書に添付すべき図面は,意匠法施行規則の様式第6により作成しなければならない(同規則3条)。


 そして,上記様式第6において,物品の部分について意匠登録を受けようとする場合は,一組の図面において,意匠に係る物品のうち,「意匠登録を受けようとする部分」を実線で描き,「その他の部分」を破線で描く等により意匠登録を受けようとする部分を特定し,かつ,その特定する方法を願書の「意匠の説明」欄に記載するものとし(備考11),実線及び破線の太さ(備考5)などが定められている。


 そして,意匠登録を受けることができる物品については,意匠法施行規則7条において,別表第1の物品の区分が定められているものの,物品において,意匠登録を受けることができる「部分」についての規定はなく,出願人は,一定のまとまりがあり,視覚を通じて美感を起こさせる形状等からなる部分については,願書の「意匠の説明」欄の記載及び添付図面を用いて(同規則3条所定の様式第6の備考11参照),自ら,意匠登録を受けようとする部分を定めることができると解される。


 ここで,部分意匠制度は,破線で示された物品全体の形態について,同一又は類似の物品の意匠と異なるところがあっても,部分意匠に係る部分の意匠と同一又は類似の場合に,登録を受けた部分意匠を保護しようとするものなのであるから,破線で示された部分の形状等が,部分意匠の認定において,意匠を構成するものとして,直接問題とされるものではない。


 しかし,物品全体の意匠は,「物品」の形状等の外観に関するものであり(意匠法2条1項),一定の機能及び用途を有する「物品」を離れての意匠はあり得ないところ,「物品の部分」の形状等の外観に関する部分意匠においても同様であると解されるから,部分意匠においては,部分意匠に係る物品とともに,物品の有する機能及び用途との関係において,意匠登録を受けようとする部分がどのような機能及び用途を有するものであるかが確定されなければならない。


 そして,そのように意匠登録を受けようとする部分の機能及び用途を確定するに当たっては,破線によって具体的に示された形状等を参酌して定めるほかはない。


 また,意匠登録を受けようとする部分が,物品全体の形態との関係において,どこに位置し,どのような大きさを有し,物品全体に対しどのような割合を示す大きさであるか(以下,これらの位置,大きさ,範囲を単に「位置等」ともいう。)は,後記2(2)のとおり,意匠登録を受けようとする部分の形状等と並んで部分意匠の類否判断に対して影響を及ぼすものであるといえるころ,そのような位置等は,破線によって具体的に示された形状等を参酌して定めるほかはない。部分意匠は,物品の部分であって,意匠登録を受けようとする部分だけで完結するものではなく,破線によって示された形状等は,それ自体は意匠を構成するものではないが,意匠登録を受けようとする部分がどのような用途及び機能を有するといえるものであるかを定めるとともに,その位置等を事実上画する機能を有するものである。


 そして,部分意匠の性質上,破線によって具体的に示される形状等は,意匠登録を受けようとする部分を表すため,当該物品におけるありふれた形状等を示す以上の意味がない場合もあれば,当該物品における特定の形状等を示して,その特定の形状等の下における意匠について,意匠登録を受けようとしている場合もあり,部分意匠において,意匠登録を受けようとする部分の位置等については,願書及びその添付図面等の記載並びに意匠登録を受けようとする部分の性質等を総合的に考慮して決すべきである。


(3) そこで,本願実線部分の形状等及び位置について検討する。


ア 本願意匠は,別添審決謄本写しの別掲第1表示のとおりの意匠であり,意匠に係る物品はプーリーである。


・・・


 以上によれば,本件出願における意匠登録を受けようとする本願実線部分の形状等は,外周縁部に等間隔で位置する四箇所の略弧状の切り欠き部を有する平坦なドーナツ状の部分(以下「本件ドーナツ状平坦部分」という。)の形状等であると認められる。


イ 次に,本願実線部分の位置について検討すると,本件出願の願書添付の図面においては,破線等を用い,本件ドーナツ状平坦部分は,プーリーのディスク部の略中央部分であること,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて,ディスク部の凹陥部の底面に位置することが示されている。


 本件出願において,本願実線部分自体は,飽くまで平坦部として示されているのに対し,ディスク部のリブ部から続く平坦部及び凹陥部底面へと続く斜面部は,いずれも破線で示され,かつ,本件ドーナツ状平坦部の外側に位置している。ディスク部が凹陥部を有するという形態は,ディスク部のリブ部から続く平坦部及び凹陥部底面へと続く斜面部を必須の要素とするものであり,これらは,本件ドーナツ状平坦部の外側に位置しているものであるから,本件出願は,プーリーのディスク部が凹陥部を有するという形態そのものについて,意匠登録を受けようとするものでないことは明らかである。


 しかしながら,本件出願において,本願実線部分自体は,平坦部ではあるが,上記アのとおり,本件出願の願書添付の図面jにおける,意匠登録を受けようとする部分と他の部分との境界を示す一点鎖線の一方は,凹陥部底面の底面の平坦部が開始する位置に示され,A−A線切断部端面図において,ディスク部の略中央部分の,ボス部を除いた凹陥部底面の平坦部がすべて実線で示されている等の記載に照らせば,原告は,プーリーのディスク部の形状にかかわらず,プーリーのディスク部の平坦面に係る形状等について意匠登録を受けようとするものではなく,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおける,ディスク部の凹陥部の底面の平坦部の形状等について意匠登録を受けようとしているものと合理的に解釈できる。


また,このように解釈することにより,本件ドーナツ状平坦部分は,凹陥部の底面に位置する部分として,一定のまとまりがあり,視覚を通じて美感を起こさせるものととらえることができ,また,実線で表されている四箇所の略弧状の切り欠き部も,視覚的に想定し得る凹陥部底面の外周円の切り欠き部として,その形状を認識することができるものである。そして,意匠登録を受けようとする部分の位置をこのように解釈することは,本件手続補正書における前記アの記載とも合致する。


 そうすると,本件出願は,上記のように,プーリーのディスク部が凹陥部を有するという形態そのものについて,意匠登録を受けようとするものではないが,願書及びその添付図面等の記載並びに意匠登録を受けようとする本願実線部分の性質等を合理的に解釈すれば,本願実線部分である本件ドーナツ状平坦部分は,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて,ディスク部の凹陥部の底面に位置すると解釈するのが相当であり,本願実線部分は,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおける,ディスク部の凹陥部の底面の部分であって,ディスク部に凹陥部を有しないプーリーのディスク部の意匠とは,異なったところに位置するものであり,また,ディスク部に凹陥部を有しないプーリーのディスク部に位置することが予定されていないと認めるのが相当である。


 本件において,本願実線部分について,ディスク部の略中央部分に位置しさえすれば,凹陥部を有しないディスク部に位置するものも含み,また,そのようなものも予定されていると解することは,上記のような,図面等の記載から導かれる合理的な解釈や,本件ドーナツ状平坦部分の性質からして,失当であるし,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて,凹陥部の底面の平坦部の形状等について部分意匠として意匠登録を受けようとするためには,凹陥部に係る形態,すなわち,ディスク部のリム部から続く平坦部及び凹陥部底面へと続く斜面部に係る形態等についても,必ず意匠登録を受けようとする部分に含めてそれらの形状等を特定しなければならないとすることは,物品の部分であっても,一定のまとまりがあり,視覚を通じて美感を起こさせる形状等,本件についていえば,凹陥部の底面に位置する,本件ドーナツ状平坦部分の形状等を部分意匠として保護しようとする法の趣旨を没却することになりかねない。


 したがって,本願実線部分である本件ドーナツ状平坦部分は,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて,ディスク部の凹陥部の底面に位置するものと認められる。


(4) 一方,本件相当部分についてみると,甲2公報に所載のプーリーは,中心孔近辺のボス部,外側周面のリム部及び円環状のディスク部を有するとともに,同ディスク部が等間隔で位置する四個のおむすび状の透孔を有するが,ディスク部に凹陥部を有さず,ディスク部全面が平坦である。


 したがって,引用意匠においては,本件ドーナツ状平坦部分に相当するとされる部分は,ディスク部の略中央部分であって,四箇所の透孔のボス部側の四箇所の略弧状の切り欠き部を有するドーナツ状平坦部分であり,そのドーナツ状平坦部分は,ディスク部に凹陥部を有しないプーリーにおいて,全面が平坦なディスク部の略中央部分に位置するものである。


 以上のとおり,本願実線部分は,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて,ディスク部の凹陥部の底面に位置するものであるのに対し,本件相当部分は,ディスク部に凹陥部を有しないプーリーにおいて,全面が平坦なディスク部の略中央部分に位置するものであるから,本願実線部分と本件相当部分の位置には,差異があるというべきであり,本願実線部分と本件相当部分の位置が共通するとした審決の認定判断は誤りであるというほかはなく,この誤りは,後記2のとおり,審決の結論に影響を及ぼすものである。


(5) 被告は,本願実線部分と本件相当部分は,プーリーの略中央部分に位置している点で,共通していることは明らかである旨主張する。


 確かに,本件ドーナツ状平坦部分と本件相当部分の位置については,被告主張の共通点があり,また,本願意匠は,プーリーの凹陥部に係る形態について意匠登録を求めようとするものではないが,前記のとおり,本件ドーナツ状平坦部分についていうと,その位置は,単に,プーリーの略中央部分というものではなく,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて,ディスク部の凹陥部の底面に位置するものというべきであるから,ディスク部に凹陥部を有しないプーリーにおいて,全面が平坦なディスク部の略中央部分に位置する本件相当部分の位置とは差異があるというべきである。


 また,被告は,当該物品の属する分野において,ディスク部に凹陥部を設けることは,乙1公報等に示されているとおり,既に知られているものであり,使用の目的に応じて適宜選択される程度にすぎないものであって,本願意匠の凹陥部もそれらに比して格別特異なものとはいえないものである旨主張する。


 確かに,プーリーのディスク部に等間隔に四つの透孔を設け,その中心部側の切り欠きが略弧状であることは甲2公報に示され,また,乙1公報等によれば,ディスク部に凹陥部を設けることは既に知られていることから,本願意匠について,これらの事実に基づき,当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性の点から,創作が容易であるとされる余地のあることは否定することができない。


 しかし,本件は,本願意匠について,意匠法3条1項3号該当性を肯定した審決の認定判断に違法事由が存在するかが問われているのであって,審決では取り上げられていない同法3条2項所定の創作容易性の問題は別論であるというほかはない。そして,前記のとおり,本願実線部分は,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて,ディスク部の凹陥部の底面に位置するものであり,本件相当部分とは位置に差異があるのであるから,プーリーにおいて,ディスク部に凹陥部を設けることは,既に知られているものであり,使用の目的に応じて適宜選択される程度にすぎないものであるとしても,本願実線部分と本件相当部分とは位置に差異があるとした上記判断を左右する
ものではない。


(6) したがって,原告主張の取消事由1は理由がある。


2 取消事由2(本願意匠と引用意匠の類否判断の誤り)について


(1) 原告は,「共通点は,両意匠(注,本願意匠及び引用意匠)の形態全体に著しい共通感を奏するものであり,差異点を凌駕して類否判断を左右するというべきであるから,意匠全体として観察すると,両意匠は類似するものというほかない。」(審決謄本2頁第7段落)とした審決の判断を争い,本件においては,凹陥部の有無の視覚的効果の相違は大きく,実線部分の形態自体が共通する場合であっても,その形態が凹陥部の底面に位置している本願意匠と,ディスク部全体が平坦な場合の当該平坦面上に位置している引用意匠とでは,看者に与える印象は全く異なるのであり,両意匠の対比において,本願実線部分と本件相当部分の位置についての差異点は大きく評価されるべきであって,本願実線部分が,最も看者の注意をひくディスク部中央に存在し,その存否により全く別異の印象を与える凹陥部の底面に位置していることから,本願意匠と引用意匠を全体観察した場合,本願実線部分と本件相当部分の位置の差異により,本願意匠と引用意匠の形態自体の共通点を含むその他の共通点を凌駕して,本願意匠は,引用意匠とは全く異なる美感を醸成しているとして,審決が本願意匠と引用意匠の類否判断を誤った旨主張する。


(2) 部分意匠の類否の判断に当たっては,意匠登録を受けようとする部分の形状等と,同部分と位置等が大きく異なる部分についての形状等は,仮に,それらの形状等自体が共通又は類似していたとしても,美感上,看者に与える印象が異なる場合もあるから,意匠登録を受けようとする部分とそれに相当する部分が,物品全体の形態との関係において,どこに位置し,どのような大きさを有し,全体に対しどのような割合を占める大きさであるか(「位置等」)についての差異の有無を検討する必要がある。


 もっとも,部分意匠制度は,破線で示された物品全体の形態について,同一又は類似の物品の意匠と異なるところがあっても,部分意匠に係る部分の意匠と同一又は類似の場合に,登録を受けた部分意匠を保護しようとするものであることに照らせば,類否判断において,意匠登録に係る部分とそれに相当する部分の位置等の差異を考慮するに当たっては,上記部分意匠制度の趣旨を没却することがないようにしなければならない。


破線部の形状等や部分意匠の内容等に照らし,通常考え得る範囲での位置等の変更など,予定されていると解釈し得る位置等の差異は,類否判断に影響を及ぼすものではない。

(3) 本願実線部分は,外周縁部に等間隔で位置する四箇所の略弧状の切り欠き部を有する平坦なドーナツ状の部分であり,本願実線部分と本件相当部分とは,全体が,円環状のディスク部の下面において,その外周縁部の等間隔の四箇所に,略弧状の切り欠き部を形成したものである点において共通する。


 他方,本願実線部分は,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて,ディスク部の凹陥部の底面に位置するものであるのに対し,本件相当部分は,ディスク部に凹陥部を有しないプーリーにおいて,全面が平坦なディスク部の略中央部分に位置するものである。


 そして,本願実線部分は,上記のとおり,ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて,ディスク部の凹陥部の底面に位置するものとして,一定のまとまりがあり,美感を生じさせる形状等からなる部分ととらえることができ,本願実線部分は,その内容に照らし,それと相いれない,ディスク部に凹陥部を有しないプーリーに位置するものを予定していないと解するのが相当である。また,本願実線部分の外周縁部に等間隔で位置する四箇所の略弧状の切り欠き部も,視覚的に想定し得る凹陥部底面の円周の切り欠き部として,その形状を認識することができるのに対し,本件相当部分は,ディスク部全面の平坦部における略中央部分というものであり,本件相当部分と他の部分とを直ちに視覚的に区別するものがなく,四個の透孔による切り欠き部についても,どの範囲の切り欠きであるかを直ちに視覚上認識することはできない。そうすると,本願実線部分と本件相当部分との間に存在する位置の差異によって,本願意匠と引用意匠は,看者に対して,全く異なった美感を与えるものというほかないのであり,上記の位置の差異は,本願意匠と引用意匠の形状自体の共通点を凌駕し,両意匠に異なった美感をもたらすというべきである。


 したがって,本願意匠と引用意匠が類似するとした審決の判断は誤りであり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。


(4) 被告は,部分意匠についての類否判断は,基本的には,通常意匠の類否判断と異なるところはなく,本願実線部分と本件相当部分との形態の対比,及び,本願意匠と引用意匠の類否の判断に与える影響の評価についても同様であるが,本願実線部分以外の部分と本件相当部分以外の部分については,その用途及び機能と,当該物品全体の形態に対する,本願実線部分と本件相当部分とのそれぞれの相対的な位置,大きさ,範囲が,対比できる程度であれば足りるものである旨主張する。


 確かに,部分意匠の類否判断において,意匠登録を受けようとする部分の位置の差異を必要以上に考慮することは,実質的に,破線部分の形状等を部分意匠の内容に取り込んで類否判断等をすることにもなりかねず,部分意匠制度の趣旨を没却することになるものであるが,本件においては,前記(3)のとおり,本願実線部分は,その内容に照らし,それと相いれない,ディスク部に凹陥部を有しないプーリーに位置するものを予定していないと解するのが相当であって,本願実線部部と本件相当部分の位置の差異は,本願意匠と引用意匠に異なった美感をもたらし,その類否判断に影響を及ぼすものであるから,被告の主張は採用できない。


(5) したがって,原告主張の取消事由2は理由がある。


3 よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。』
(上記判決文より抜粋。)


と判示されました。



  部分意匠は,物品の部分であって,意匠登録を受けようとする部分だけで完結するものではなく,破線によって示された形状等は,それ自体は意匠を構成するものではないが,意匠登録を受けようとする部分がどのような用途及び機能を有するといえるものであるかを定めるとともに,その位置等を事実上画する機能を有するものである以上、本願実線部分と本件相当部分(引用意匠における本願実線部分に相当する部分)との間に存在する位置の差異によって,本願意匠と引用意匠が看者に対して全く異なった美感を与える場合、両意匠に異なった美感をもたらすものであり、部分意匠と引用意匠とは非類似と判断する、ということのようです。


  本事件は、部分意匠における破線部分の形状等が部分意匠の類似に影響を与える場合があることを判示した初めての判決で、特許庁の判断を否定しており、部分意匠の類似の判断基準を示す重要な判決の一つになるような気がします。


 詳細は上記判決文を参照して下さい。


 なお、本事件の裁判長は、知財高裁第1部の篠原勝美裁判長裁判官です。



追伸;<新たに出された判決>

●『平成17(ワ)4869 損害賠償等請求事件 商標権 エコリカ,ECORICA 平成19年02月01日 大阪地裁』(一部認容判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070205165615.pdf