●日弁連主催のセミナー『知的財産訴訟に関する講演会 −知財関連訴

 今日は、昨日(2/5)に聴講してきた日弁連主催のセミナーの『知的財産訴訟に関する講演会 −知財関連訴訟の現状と今後の課題−』について取上げます。


 講演者は、東京地裁第46部部長の設楽隆一判事です。途中10分程度の休憩も入れ2時間という短時間の講演で、職務発明の補償金請求事件あたりはもう少し話を聞きたかったのですが、とても内容の濃い講演だったと思います。


 以下、本講演のメモです。


 最近の特許権侵害訴訟の典型的な事件は、計画審理により訴状の提出から第5回口頭弁論期日までで最短で6ケ月くらいで侵害論の議論が終了し、以前に比べスムーズに進んでいるとのこと。


 また、最近は、裁判官が心証を形成した上で?、原告、被告の持ち時間を決めてパワーポイントによる最終プレゼンテーションをやり始めているとのこと。複雑な事件や職務発明の補償金事件の場合、準備書面や書証の厚さが50cmから1mを超えるものもあり、審理充実のため活用していきたいとのこと。


 「秘密保持命令(特許法105条の4)」の規定が平成16年改正により新設されたが、今のところ、本制度を利用しないでも、秘密保持契約をした上で、積極的に被告製品・被告方法の特定等のための営業秘密が開示されているとのこと。秘密保持命令になると、当該命令に違反した場合、刑事罰がつく場合があるので、秘密保持契約の方を望むとのこと。この点で、「秘密保持命令(特許法105条の4)」が伝家の宝刀的役割をなしているとのこと。


 最近の侵害訴訟の傾向は、被告製品は特許発明の技術的範囲に属するが、無効の抗弁(特許法104条の3)により権利行使が認められないというケースが多いとのこと。


 本日のメインテーマは、最近、侵害訴訟で被告が多く主張される特許無効の抗弁について。平成16年改正による無効の抗弁(104条の3)の規定の採用により、侵害訴訟が想定していなかった以上にガラリと変わったが、一事件の中で、侵害の属否と、無効の有無が争われるので、従来より良くなったのではとのこと。


 ただし、特許無効の抗弁の問題点として、特許無効の抗弁は平成3年リパーゼ最高裁判決の通り解釈し、クレーム解釈は特許法70条1項、2項で行っているが、一つの侵害訴訟事件のなかで、2つの解釈論が入り、おかしいのではと?。設楽判事の私見によれば、クレーム解釈で70条2項の利用されて明細書等の記載を参酌してクレームの用語の意義が解釈されるということは、クレームの用語の意義が一義的に決まらない場合であり、リパーゼ最高裁判決の例外が適用されると考えれば、特許無効の抗弁も、クレーム解釈も同様の判断になるのではとのこと(確かに、そのような気がします。)


 職務発明の補償金事件では、オリンパス事件最高裁判決により「相当の対価の額に満たない場合は追加請求できる。」、日立製作所事件最高裁判決では「職務発明の外国特許の譲渡への旧特35条3項、4項の類推適用」等、新たな判例が出ているとのこと。


 最近出されたキャノン事件一審では、

『「使用者等が貢献した程度」には、使用者等が「その発明がされるについて」貢献した事情のほか、特許の取得・維持・ライセンスの契約の締結に要した努力、費用、あるいは、特許発明の独占的な実施については、その実施品に係る事業が成功するに至った一切の要因・事情を、使用者等がその発明により利益を受けるについて貢献した一切の事情として考慮し得る。』等と判示したとのこと(レジュメより)。


 尚,職務発明の補償金請求事件は、平成16年に新規受任の件数が最も多く、最近1年間の新規受任件数は一桁(東京地裁分だけ?)とのことです。


追伸;<気になった記事>

●『アルダージ、ARIB標準規格特許の一括ライセンス開始 』
http://news.braina.com/2007/0205/enter_20070205_003____.html
●『サンコーワイズ、添加剤の特許協力条約特許2件を売却()日刊工業新聞)』
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=779
●『[田辺・三菱合併]「製薬業界再編の第2幕が開くか」』
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070205ig91.htm
●『知財権保護事業、国家特別計画の項目に 』
http://www.xinhua.jp/newsdetails.aspx?newsid=P100006530
●『リーバイス 特許権侵害で同業100社を次々提訴 』
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200702050032a.nwc
●『「古典読む自由を」著作権期間延長に反対署名 青空文庫
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY200702030264.html
●『総務省のモバイル研、SIMロック解除巡りドコモなどと対立鮮明』
http://www.asahi.com/digital/nikkanko/NKK200702050009.html
●『韓国LG電子、世界初のBlu-ray/HD DVD両対応プレーヤー「BH-100」を米国で販売開始』
http://www.rbbtoday.com/news/20070205/38250.html
●『Apple商標訴訟がついに決着――“Apple”はApple Inc.のものに』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0702/06/news006.html
●『[WSJ] MTVの親会社、YouTubeにビデオ大量削除を要求』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0702/05/news020.html
●『米ユーチューブ、JASRACと会談へ 違法投稿が焦点』
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY200702050361.html