●平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 番組サーチ装置および番組

 今日は、飲み会があり、日記は休もうと思いましたが、今年は今のところ毎日続いているので、何とか休まずに続けようと思います。



  今日は、下記に示すように、新たに知財関連判決が6件ほど出されていましたが、知財高裁から出された3件の判決

●『平成18(行ケ)10072 審決取消請求事件 番組選択装置および番組選択方法 平成19年01月25日 知財高裁』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070126144515.pdf
●『平成18(行ケ)10071 審決取消請求事件 放送内容受信装置 平成19年01月25日 知財高裁』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070126144253.pdf
●『平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 番組サーチ装置および番組サーチ方法 平成19年01月25日 知財高裁』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070126143853.pdf

において、特許庁の出した訂正審判の請求を認めないとする訂正審決が取消されたようです。


 そのうちの『平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 番組サーチ装置および番組サーチ方法 知財高裁』において、知財高裁は、


『 取消事由2(訂正事項bについての判断の誤り)について、

 便宜,取消事由2についてまず判断する。
(1) 「番組表出力手段」及び「更新手段」について

ア 「番組表出力手段」(上記記憶手段に記憶されている情報に基づき,番組がチャンネルと時間とに対応した位置に配置された番組表であって,その日の番組表の一部を出力するための手段)について(ア) 当初明細書(甲1)には,次の記載がある。


・・・


(イ) 上記(ア)の記載によれば,当初明細書に記載された番組サーチ装置は,「記憶手段に記憶されている情報に基づき,番組がチャンネルと時間とに対応した位置に配置された番組表であって,その日の番組表の一部を出力するための手段」,すなわち,「番組表出力手段」を有していることが明らかである。


イ 「更新手段」(上記番組表出力手段が出力する番組表を,上記カーソルの移動に伴い移動後の上記カーソル位置に応じた上記番組表に更新させると共に,上記カーソルの移動に伴い上記カーソルの位置情報をRAMに記憶させてその情報を更新させるための手段)について


(ア) 当初明細書(甲1)には,次の記載がある。


・・・


(イ) 上記(ア)の記載によれば,当初明細書に記載された番組サーチ装置は,「番組表出力手段が出力する番組表を,カーソルの移動に伴い移動後のカーソル位置に応じた番組表に更新させると共に,カーソルの移動に伴いカーソルの位置情報をRAMに記憶させてその情報を更新させるための手段」,すなわち,「更新手段」を有していることが理解できる。


ウ そうであれば,訂正事項bに係る「番組表出力手段」,「更新手段」の内容は,いずれも,当初明細書に記載されているということができる。


(2) 訂正事項bについて

ア 当初明細書(甲1)には,次の記載がある。

「【従来の技術】

 テレビ番組は,通常,その放映開始時刻やチャンネルが不変であるため,毎週(あるいは毎日)見ている番組については,放映開始時刻やチャンネルを人が憶えておけばよい。

 しかしながら,その番組の前にスポーツ中継がある場合や,放映開始時刻が一定していない番組については,新聞やテレビ番組専門雑誌の番組欄を見て,チャンネル,放映開始時刻等を確認するのがよい。そして,その時刻になったらテレビのスイッチをONにしたり,チャンネルを合わせたり,あるいはビデオ録画装置に録画をしたりする。」(段落【0002】)


「【発明が解決しようとする課題】

 しかしながら,番組欄で確認した番組をテレビ受像機に表示させるには,テレビの画面と番組欄とを突き合わせる必要があり,煩わしい。また,番組欄で所望の番組の放映開始時刻等を確認するのに失敗する場合がある。例えば,昨日の新聞の番組欄を今日の番組の番組欄と誤って見てしまったり,所望の番組が見つからなかったりする場合もある。後者の場合,その番組が放映されないのなら良いが,その週に限って,異なる時間帯や異なる曜日に放映されるために見つからない場合には,所望の番組を見逃してしまうことになる。


 本発明は上記課題を解決するためになされたものであり,請求項1および5に記載の番組表示装置は,所望の番組の放送チャンネルおよび放映開始時刻を確実に知ることができ,一旦,ある番組をサーチすると,翌週以降に放映される同じ番組を簡単にサーチすることができるようにすることを目的とする。


 そして請求項2および6に記載の本発明は,請求項1および5に記載の本発明の目的を達成し,且つサーチした番組を自動的に受信することを目的とする。本発明の請求項3記載の番組サーチ装置および請求項7記載の番組サーチ方法は,所望の番組の放送チャンネルおよび放映開始時刻を確実に知ることができ,且つサーチした番組を自動的に受信することを目的とする。


 請求項4および請求項8に記載の本発明は,サーチした番組を予約録画することを目的とする。」(段落【0003】,【0004】)


「【発明の効果】
 ・・・請求項3に記載の本発明によれば,サーチした番組を自動的に受信することができ,当該番組サーチ装置の操作者などが所望の番組を見逃す危険性を非常に低くすることができる。・・・」(段落【0029】)


イ 上記アの記載によれば,従来,新聞やテレビ番組専門雑誌の番組欄で確認した番組をテレビに表示させるには,テレビの画面と番組欄を突き合わせなければならなかったり,日を誤まる等して所望の番組の放映時刻等を確認するのに失敗するという不都合があったところ,このような不都合を解消し,所望の番組の放送チャンネル及び放映開始時刻を確実に知り,かつ,サーチした番組を自動的に受信することを可能にすることが,特許査定時の請求項3に係る発明の技術的課題(目的)であり,そのための構成が,特許査定時の請求項3に規定した番組サーチ装置の構成であるものと認められる。


ウ そして,訂正事項bの「番組表出力手段」と「指定手段」は,特許査定時の請求項3における「記憶手段」と「指定手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであり,「更新手段」と「サーチ手段」は,特許査定時の請求項3の「記憶手段に記憶されているテレビ放送の内容の中から,上記指定手段により指定された内容と同一の番組を,異なる時間帯の番組よりサーチするサーチ手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであるから,訂正事項bの具体的内容は,いずれも,特許査定時の請求項3に係る発明の目的に含まれるということができる。


(3) そうであれば,訂正事項bは,特許査定時の請求項3に係る発明の目的を逸脱したということはできず,訂正事項bに係る訂正によって,実質上特許請求の範囲を変更するものではない。


(4) 被告の主張について

ア 被告は,当初明細書には,特許査定時の請求項3に係る発明の目的について,「所望の番組の放送チャンネルおよび放映開始時刻を確実に知ることができ,且つサーチした番組を自動的に受信すること」,「当該番組サーチ装置の操作者などが所望の番組を見逃す危険性を低くする」と示されているだけであり,このような極めて一般的な目的から,請求項1における,番組を表形式でその一部を出力するという具体的な目的,該番組表を更新させるという具体的な目的及び「毎週キーという一種の専用キーで,一旦,ある番組をサーチすると,翌週以降に放映される同じ番組を簡単にサーチすることができる」という具体的な目的が直ちに導出されるということはできないから,訂正事項bは,特許査定時の請求項3に記載された発明の具体的な目的の範囲を逸脱すると主張する。


 しかしながら,発明の目的は特許請求の範囲の請求項において規定された構成によって達せられるものであり,新たに構成が付加されたり構成が限定されれば,目的も,それに応じて,より具体的なものになることは当然であって,訂正後の発明の構成により達せられる目的が訂正前の発明の構成により達せされる上位の目的から直ちに導かれるものでなければ,発明の目的の範囲を逸脱するというのであれば,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正は事実上不可能になってしまうから,相当でない。


 そうであれば,訂正事項により付加,限定された構成により達成される内容が,訂正前の発明の目的に含まれるものであれば足りると解するのが相当であり,本件においては,上記(2)のとおり,訂正事項bの具体的内容は,いずれも,特許査定時の請求項3に係る発明の目的に含まれる。


  被告の上記主張は,採用することができない。


イ また,被告は,請求項1に係る発明は,新たに「番組表出力手段」及び「更新手段」が付加されたことにより,特許査定時の請求項3に係る発明の目的に加えて,新たに,番組を表形式で出力し,その番組表を更新するという(具体的な)目的が併せて付加され,毎週キーという一種の専用キーで,一旦,ある番組をサーチすると,翌週以降に放映される同じ番組を簡単にサーチできるようにするという具体的な目的が付加されるから,このような新たな構成要件の付加及び付加された構成要件に基づく他の構成要件の新たな限定は,特許査定時の請求項3に記載された発明の具体的な目的の範囲を逸脱するものというべきであると主張する。


 しかしながら,訂正事項bに係る「番組表出力手段」,「更新手段」の内容は,いずれも,当初明細書に記載されているものであって,訂正事項bの「番組表出力手段」と「指定手段」は,特許査定時の請求項3における「記憶手段」と「指定手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであり,「更新手段」と「サーチ手段」は,特許査定時の請求項3の「記憶手段に記憶されているテレビ放送の内容の中から,上記指定手段により指定された内容と同一の番組を,異なる時間帯の番組よりサーチするサーチ手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであるから,訂正事項bの具体的内容は,いずれも,特許査定時の請求項3に係る発明の目的に含まれるということができる。


  被告の上記主張も,採用することができない。


ウ さらに,被告は,請求項1において新たに付加された「番組表出力手段」,「更新手段」という構成要件については,その用語自体,当初明細書には何ら記載されていなかったものであって,訂正明細書の段落【0014】,【0015】において,上記ステップ110から120に至る処理を「番組表出力手段」,上記ステップ120から150に至る処理を「更新手段」として,それぞれ新たに定義し直し,明細書に初めて出現させたものであるところ,明細書に記載されているからといって,必ずしもその全てが訂正可能であるとは限らないと主張する。


  しかしながら,特許請求の範囲を減縮する場合には,新たな構成要件を付加したり,構成を新たに具体的に限定するのが通常であるから,新たな構成要素を付加したり,構成要素を新たに具体的に限定することが,直ちに,実質上特許請求の範囲を変更することに当たるものでないことは明らかである。


 訂正事項bに係る「番組表出力手段」,「更新手段」の内容は,いずれも,当初明細書に記載されているものであって,訂正事項bの「番組表出力手段」と「指定手段」は,特許査定時の請求項3における「記憶手段」と「指定手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであり,「更新手段」と「サーチ手段」は,特許査定時の請求項3の「記憶手段に記憶されているテレビ放送の中から,上記指定手段により指定された内容と同一の番組を,異なる時間帯の番組よりサーチするサーチ手段」により実現される内容をより具体的に規定したものであるから,明細書に接した第三者であれば,訂正が可能であることを予測することができるのであって,訂正事項bによる訂正が一般第三者の利益を損なうものとはいえない。


 被告の上記主張は,採用の限りでない。


(5) 上記(3)のとおり,訂正事項bは,特許査定時の請求項3に係る発明の目的を逸脱したということはできず,訂正事項bに係る訂正によって,実質上特許請求の範囲を変更するものではないから,「特許査定時の請求項3に記載された事項によって構成される発明の具体的な目的の範囲を逸脱してその技術的事項を変更するものであり,実質上特許請求の範囲を変更するものであることは明白である。」とした審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由2は理由がある。



2 取消事由3(訂正事項cについての判断の誤り)について

 請求項2は,請求項1を引用するのであるから,上記1のとおり,請求項1についての訂正事項bによる訂正が実質上特許請求の範囲を変更するものでない以上,請求項2についての訂正事項cによる訂正も実質上特許請求の範囲を変更するものではない。


 そうであれば,「請求項2(特許査定時の請求項4)についての訂正も実質上特許請求の範囲を変更するものであることは明白である。」とした審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由3は理由がある。


第5 結論

 以上のとおりであって,原告主張の審決取消事由2及び3は理由があるから,その余について判断するまでもなく,審決は取り消されるべきである。』

と判示されました。


 まだ、詳細には検討していませんが、これら3件の判決は、訂正審判の重要な判決の一つになりそうな気がします。


 ちなみに、裁判長は、知財高裁第4部のの塚原朋一裁判長です。




追伸:<新たに出された知財判決>

●『平成18(行ケ)10072 審決取消請求事件 番組選択装置および番組選択方法 平成19年01月25日 知財高裁』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070126144515.pdf
●『平成18(行ケ)10071 審決取消請求事件 放送内容受信装置 平成19年01月25日 知財高裁』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070126144253.pdf
●『平成18(行ケ)10070 審決取消請求事件 番組サーチ装置および番組サーチ方法 平成19年01月25日 知財高裁』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070126143853.pdf
●『平成17(ワ)9396 特許権侵害差止等請求事件 車両運転モード表示装置 平成19年01月25日 大阪地裁』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070126133758.pdf
●『平成17(ワ)8520 特許権侵害差止等請求事件 車両運転モード表示装置 平成19年01月25日 大阪地裁』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070126132623.pdf
●『平成17(ワ)7781 特許権侵害差止等請求事件 自動車自動運転ロボットの制御方法 平成19年01月25日 大阪地裁』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070126131008.pdf




追伸;<気になったニュース>
●『経産省、日本技術「アジア標準」に−経済統合へ基板づくり(日刊工業新聞)』
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=726
●『休眠特許”ネットに掲載、企業の再活用促進へ』
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20070126i212.htm
●『【知はうごく】ネットからみ著作権複雑化 法体系の見直し急務』
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070127/sng070127000.htm
●『アステラス製薬、契約期間訴訟でファイザーと和解』
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070126AT1D2606N26012007.html
●『アステラスと米ファイザー、「リピトール」契約訴訟で和解』
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200701260078.html

●『知的創造サイクル専門調査会(第9回)議事次第』
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/cycle/dai9/9gijisidai.html
●『まん延する“違法着うた”の実態』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0701/26/news073.html
●『番組の違法流通阻止 地デジ推進協 競売サイト重点』
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200701260030a.nwc
●『iPhoneの商標争いは「些細ないさかい」――Cisco CEO』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0701/26/news046.html
●『JASRACYouTube内の著作権侵害対策を語る』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070126/259740/


●『中国の知的財産権保護分野で得られた進展(1)』
http://www.people.ne.jp/2007/01/25/jp20070125_67254.html
●『中国の知的財産権保護分野で得られた進展(2)』
http://www.people.ne.jp/2007/01/25/jp20070125_67255.html
●『中国の知的財産権保護分野で得られた進展(3)』
http://www.people.ne.jp/2007/01/25/jp20070125_67256.html


●『知的財産訴訟に関する講演会 〜知財関連訴訟の現状と今後の課題〜』
http://www.nichibenren.or.jp/ja/event/070205.html
・・・日弁連主催の無料セミナーです。申込みは必要のようです。なお、講師は、東京地方裁判所の設樂隆一判事とのことです。