●平成18(行ケ)10307 審決取消請求事件 商標権 Heads、ヘッズ 

  今日は、本日出された『平成18(行ケ)10307 審決取消請求事件 商標権 Heads、ヘッズ 平成19年01月23日 知財高裁』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070124134736.pdf)について取り上げます。


 本件は、4条1項15号による商標登録の無効審決の取り消しを求めた審決取消し訴訟で、原告の請求は棄却されました。なお、被告は、テニスラケットやスニーカー、その他のスポーツ用品について著名な等で有名なあのヘッド社です。


 つまり、知財高裁は、取消事由3(出所の混同についての認定判断の誤り)について、

『(1) 原告は,審決の「本件商標より生ずる『ヘッズ』の称呼と、引用商標より生ずる『ヘッド』の称呼とを比較するに、両者はともに促音を含めた3音よりなり称呼における識別上重要な要素を占める語頭音を含めた2音『ヘッ』を同じくするものであるから,称呼上極めて近似した商標であるということができる。」との判断(この判断における「引用商標」も,上記2と同様「引用構成商標」を意味するものと解すべきである。)に対し、「ヘッズ」と「ヘッド」の各称呼の相違音である「ズ」と「ド」は,子音,母音のいずれも共通にしていないから,本件商標と引用商標(引用構成商標)は,称呼上,むしろ近似していないと主張する。


 しかしながら、「ズ」と「ド」の各音の子音が異なるとしても、現代仮名遣い(昭和61年7月1日内閣告示1号)が,本来は「づ」である音を,原則として「ず」と表記するよう定めていることから窺えるように「ズ」と「ヅ」の音はほぼ同一といってよい程に近似しているものであり、したがって、「ズ」と「ド」の各音は実質的に,母音「u」と「0」が相違するだけであるところ,このことに,審決が指摘するとおり,本件商標と引用構成商標が,ともに促音を含めた3音より成り,称呼における識別上,重要な要素を占める語頭音を含めた2音「ヘッ」を同じくすることを併せ考えれば,本件商標と引用構成商標の称呼は,近似するものということができ,審決の上記判断に誤りはない


 なお,原告は,本件商標が,頭部を表す円輪郭の図形と帽子のひさしに見立てた文字部分から成るものであって「帽子をかぶった顔」の観念が生ずるとした上,「頭」の観念が生ずる引用商標(引用構成商標)と,観念においても類似しないと主張する。

 しかしながら,本件商標の図形部分は,明瞭な筆記体による「Heads」の文字部分の背後にある,単純で極めてありふれた円輪郭にすぎず,例えば,人の顔を連想させるような特徴などもないから,たとえ,本件商標が,商品「帽子」に付されていたとしても,これに接した取引者,需要者の注意は,まず上記文字部分のみに向かうと考えられ,したがって,上記文字部分は,本件商標において,独立した自他商品識別機能を有するものであると認められる。そうすると,本件商標が,その文字部分と図形部分とを一体として把握され「帽子をかぶった顔」の観念を生ずるか否かはともかく,本件商標から,文字部分に応じて「頭」の観念が生ずることは明らかであるから,原告の上記主張は,その前提において失当である。


(2) 審決の「引用商標が使用されている『テニス用ラケット,スキー板,テニス用衣服,テニス用靴,ゴルフ用具など』と本件商標の指定商品である『帽子』に包含される『テニス用の帽子,スキー用の帽子,ゴルフ用の帽子など』は,同時に使用される場合が多く,また,需要者の多くを共通にするものであるから,両者は密接な関連を有する商品であるということができる」との判断(この判断における「引用商標」も,上記2と同様「引用構成商標」を意味するものと解すべきである。)に対し,原告は,自己がファッション性のある帽子の販売を専業としており,販売場所も専門店等であるとして,本件商標を付した商品と引用構成商標を付した商品とが,取引者,需要者を共通にするということはできないと主張する。

 しかしながら,本件商標の指定商品から「テニス用の帽子,スキー用の帽子,ゴルフ用の帽子など」が除かれているわけではなく,また,本件商標が「テニス用の帽子,スキー用の帽子,ゴルフ用の帽子など」に使用されることが,現在及び将来にわたってあり得ないという事情を認めるに足りる証拠もないから,原告の上記主張は失当であり,審決の上記判断に誤りはない。

 

 (3) 原告は,審決の「本件商標をその指定商品について使用するときは,これに接する取引者,需要者は,その商品が請求人の製造,販売に係る商品であると連想,想起し,請求人又は同人と組織的,経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない」との判断に対し,商標「HEAD」については,引用2商標と同一構成の商標(引用2構成商標)が,スキー用具及びその他のスポーツ用品並びにスキー靴について,広く認識されているものと考えられるのに対し,本件商標は図形部分によって受ける印象が極めて強いものであり,取引者,需要者が,本件商標の付された商品を,引用2商標の権利者又は同人と組織的,経済的に何らかの関係を有する者の製造販売に係る商品と混同するおそれは皆無であると主張するが,引用2構成商標のほか,引用1構成商標も,スキー用具及びその他のスポーツ用品について著名と認められることは,上記2のとおりであり,また,本件商標に接した取引者,需要者の注意が,まず文字部分のみに向かうと考えられることは,上記(1)のとおりであるから,原告の上記主張は,その前提において失当である。


 (4) また原告は審決の上記判断に対し引用商標が指定商品中の「帽子」について用いられた場合には,商品の用途を表示したものであるから,単なる品質表示であるにすぎず,引用商標は,商品「帽子」については,識別力の乏しい商標であるから「混同」の範囲は,識別力の乏しい商品「帽子」にまで及ぶことはないと解すべきであると主張する。


 しかしながら、引用構成商標が「テニス用ラケット、スキー板テニス用衣服、テニス用靴,ゴルフ用具など」について使用される著名商標であって,本件商標の指定商品中に含まれる「テニス用の帽子,スキー用の帽子,ゴルフ用の帽子など」が,引用構成商標が使用される上記各商品と,需要者の多くを共通とし,密接な関連を有するものであるとの審決の認定に誤りがないことは,上記のとおりである。


 そして,そうであれば,仮に,引用構成商標が,商品「帽子」との関係において,商品の用途を表示したものに当たるとしても,識別力がないということはできないから,本件商標をその指定商品について使用するときは,いわゆる広義の混同が生ずるとした審決の上記判断に誤りがあるということはできない。


 したがって,原告の上記主張も失当である。


4 結論
 以上によれば,原告の主張はすべて理由がなく,原告の請求は棄却されるべきである。』

と判示されました。


  引用商標は、スキー用具やその他のスポーツ用品について著名な商標であるので、4条1項15号による拒絶の判断は、妥当なものと思います。


 なお、知財高裁は、その他の取消事由として、『1 取消事由1(引用商標の商標権者の認定の誤り及び請求人適格の欠如の看過)』と、『2 取消事由2(引用商標の著名性の認定の誤り)について』とについても判断していますので、詳細は、上記判決文を参照して下さい。




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●『ほとんどの方は、平成19年1月分から所得税が減り、6月分から住民税が増えます。税源移譲なので合わせた負担額は基本的には変わりません。』
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