●均等論の第1要件について

 6/17の日記に対し、ONO YOSHIMI様から『「公知部分の少ない基本発明ほど、非本質部分の範囲が狭くなる」ということは、「他者が基本発明を回避した改良技術を考える場合に一番攻めやすい部分(非本質部分)が狭い」ということであるから、公知部分の少ない基本発明は、それだけ改良技術を生み出し難いことになり、特に矛盾はないと考えるのですが。』というコメントを頂いているので、回答いたします。


 上手く答えになっているかわかりませんが、当方が6/17の日記で言いたかったことは、以下のような内容です。


 まず、当方のこの疑問は、イ号(対象製品)が文理侵害(特許発明の構成要素全てを備えること)は構成しないが、均等侵害(特許発明の構成要素の一部を欠いているが侵害)になるか否かの際の均等論の5要件(ボールスプライン最高裁)に関するものであることを念頭にお入れ願います。

 均等の5要件は、

「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、
(1)右部分が特許発明の本質的部分でなく、
(2)右部分を対象品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏するものであって、
(3)右のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、
(4)対象製品等が、特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれら右出願時に容易に推考できたものではなく、
(5)対象品等が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、

 右対象品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」

であります。


 つまり、均等の第1要件は、「(1)特許請求の範囲に記載された構成中、対象製品等と異なる部分が特許発明の本質的部分ではないこと」ということになります。


 本質的部分については、その後の下級審等で色々な考え方が出されており、ここでは時間がないので横においておきます。

 次に、「(1)特許請求の範囲に記載された構成中、対象製品等と異なる部分が特許発明の本質的部分ではないこと」は、「(1)特許請求の範囲に記載された構成中、対象製品等と異なる部分が特許発明の非本質的部分であること」に置き換えさせて頂きます。


 つまり、均等論の第1要件が認められるためには、特許請求の範囲に記載された構成中、対象製品等と異なる部分が特許発明の非本質部分であることが必要です。


 すると、特許発明の非本質部分が広いほど、均等論が認められる場合が多く(均等論が認められる幅が広く)、特許発明の非本質部分が狭いほど、均等論が認められる場合が少ない(均等論が認められる幅が狭い)ことになるものと思います。


 極端ですが、特許請求の範囲に記載された構成全てが特許発明の本質的部分、すなわち特許請求の範囲に記載された構成に非本質部分がないとすると、均等侵害が認められないことになります。


 よって、特許請求の範囲に記載された構成全てが特許発明の本質的部分、すなわち特許請求の範囲に記載された構成に非本質部分がない発明というのはどういう発明かなというと、改良発明というより基本発明なのかな?と思ったからです。


 今思うと当方の上記考えも可笑しなような感じがしています。


 なお、この最高裁均等論の第1要件は不要と主張されている論文も読んだことがあり、私もどちらかというと、第1要件不要説に近い考え方であります。


 ONO YOSHIMI様も均等論の第1要件は不要説などを検討して見て下さい。


 出社準備の時間がせまり、上記の回答でONO YOSHIMI様の答えになっているかは自信がありませんが、とりあえず、これで失礼致します。不明点あれば、再度、ご質問願います。


追伸;<気になったニュース>

●『フラッシュメモリー特許訴訟 「大合議」で知財高裁判断』
http://www.asahi.com/national/update/0118/TKY200701180334.html
・・・特許権の効力範囲を問題とする知財高裁大合議事件ですのでとても楽しみです。
●『知財高裁、メモリー特許訴訟を大合議で審理へ』
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070118AT1G1803218012007.html
●『メモリー訴訟、大合議に 特許権及ぶ範囲判断へ』
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2007011801000560.html
●『メモリー訴訟、大合議に 特許権及ぶ範囲判断へ』
http://www.kitanippon.co.jp/contents/kyodonews/20070118/55873.html
●『捜狐 vs MPAAの著作権訴訟--中国の裁判所が米国著作権保有者に有利な裁定』
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20340937,00.htm
●『関税・外国為替等審議会関税分科会企画部会 知的財産権侵害物品の水際取締りに関するワーキンググループ議事録(H18.12.5)』
http://www.mof.go.jp/singikai/kanzegaita/giziroku/kanc181205.htm
●『第98回「アライアンス活動の拡大などで知的財産権をめぐる独占禁止法の問題が深刻化――伊藤 見富法律事務所 弁護士 雨宮慶氏に聞く」(2007/01/12)』
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/soumu/rensai/senshin_chizai.cfm
●『<第1回>経済産業省知財スキル標準」の完成によって,
今後の知財人材育成の世界が変わる』
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/sugimitu20070117.html
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http://www.asahi.com/science/news/TKY200701180117.html
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