●『平成18(ワ)1538 特許権侵害差止等請求事件 電子機器ユニット』

  本日は、新たに特許法第104条の3により特許権侵害差止等が棄却された事件として『平成18(ワ)1538 特許権侵害差止等請求事件 大阪地裁 電子機器ユニット,電子機器及および結線構造』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070117140732.pdf)が出されましたので、取り上げます。


 本件では、口頭弁論終結後に本件特許の無効審判手続において訂正請求を行ったことを理由として弁論再開を申し立てましたが、同訂正請求の内容を検討しても結論を左右しない蓋然性が高いと考えるため,口頭弁論を再開しない、とされました。


 つまり、大阪地裁は、

『・・・

イ そして,引用発明と引用例2に記載された発明は,いずれもケーブルの配線を要することなくコネクタにより他のユニットと直接接続することを可能とするように,コネクタが取り付けられた電気回路基板を収容する電子機器ユニットに関するもので,同一の技術分野に属し,また引用発明に引用例2に記載された発明を適用するに当たって,その適用を妨げるような記載や示唆はないから,引用発明に引用例2に記載された発明を適用して,本件特許発明のような構成要件Bの(i)ないし(iii)に係る構成を想到することに格別の困難性はない。


 また,本件明細書には「図8のように,ケース本体111とカバー112を横に分割してケースの構造を単純化することも考えられる。


 しかしこうすると,アンプ部102の幅が8㎜程度と薄いことから,ケース本体111とカバー112との嵌合部分の設計が困難なうえ,平たい形状のカバー112が大型になるので,樹脂製のカバー112が反って,気密性が得にくいという問題が生じる(段落【0007】 )との記載があり,引用発明のように横に分割したケースの問題点が記載され,ケースの強度及び気密性が得られる電子機器ユニットを提供するという目的(段落【0008】)のために,本件特許発明の構成要件Bの(i)ないし(iii)の構成を採用したことが記載されていることによれば,引用発明に引用例2のケースの構成を組み合わせた場合に予想される作用効果と比較して,本件特許発明が異質の,あるいは顕著な作用効果を生じるとは認められない。


(エ) 上記ア(エ)について

 一対の第1コネクタに第2コネクタを接続することで同種電子機器が連結可能となるとの構成は,引用発明に備えられているから,その作用効果も本件特許発明と同一である。よって,本件特許発明が作用効果において顕著なものであるということはできない。なお,本件特許発明は引用発明に引用例2及び引用例3の発明を組み合わせたものであり,組み合わせたことによる異質の,あるいは予測できないような顕著な作用効果を奏するに至ったとはいうことはできないことは既に判示したところから明らかである。


(5) 小括

 以上によれば,本件特許発明は,引用発明,引用例2及び引用例3に記載された各発明から当業者が容易に想到できたものであって,進歩性に欠け,特許法29条2項により特許を受けることができないものというべきである。


3 結論

 したがって,本件特許発明は,同法123条1項2号の無効理由を有することになるから,同法104条の3により,特許権者である原告は,被告に対し本件特許権の請求項1に基づく権利を行使することができない。よって,原告の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がない。

 なお,原告は,口頭弁論終結後の平成18年12月18日に本件特許の無効審判手続において訂正請求を行ったことを理由として弁論再開を申し立てた。


 しかし,当裁判所は,同訂正請求の内容を検討しても,上記結論を左右しない蓋然性が高いと考えるため,口頭弁論を再開しないこととする。

 よって,主文のとおり判決する。』

と判示されました。


  裁判所では、特許法104条の3の特許無効の抗弁を判断する際、訂正の内容まで考慮されるようです。

 

  詳細は、判決文を参照して下さい。



追伸;<気になったニュース>

 最近、とても中国の知財関連記事が増えているような気がします。

●『研究開発費のGDP比6%に 2010年めどに北京』
http://www.people.ne.jp/2007/01/17/jp20070117_66997.html
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http://www.people.ne.jp/2007/01/16/jp20070116_66970.html


●『中小企業の模倣品対策セミナー〜税関における輸入差止制度〜
(東京都知的財産総合センター)』
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/mizugiwa.html
・・・無料です。弁理士会の税関差止めの会員研修はとても勉強になりました。


●『Apple vs Cisco iPhone商標問題のその後について』
http://blogs.itmedia.co.jp/kurikiyo/2007/01/apple_vs_cisco__6ee8.html
●『「iPhone」ブランドをめぐるシスコシステムズとの戦い、アップルの勝機は?』
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20340894,00.htm
http://www.yomiuri.co.jp/net/cnet/20070117nt06.htm


●『ハイテク・ベンチャー主導の成長戦略を〜事業化リスク軽減が成功の鍵〜』
http://www.jri.co.jp/press/press_html/2006/070117.html
●『イノベーション促進策の実現に当たっての緊急提言について』
http://www.meti.go.jp/press/20070117004/teigen-set.pdf
●『「電子タグ活用による流通・物流の効率化実証実験」について』
http://www.meti.go.jp/press/20070116002/denshitagu-p.r.pdf
●『電通、「オファー型広告」システムの開発を発表--対価を市場原理で決定』
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20340983,00.htm
・・・「広告枠取引方法及びシステム」として2004年に特許を取得しているとのことです。。
●『日医工決算、売上高・経常利益とも過去最高』
http://www2.knb.ne.jp/news/20070117_9963.htm
●『日医工、前期38%経常増・中期経営計画も策定』
http://market.radionikkei.jp/invest/20070117_04.cfm


●『ほとんどWikipedia専門のサーチエンジン「Wikiseek」発表』
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/01/17/14476.html
●『どこよりも「家電メーカー」として面白かったApple−−CES&Macworld総括』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20070111/258526/
●『モノだけ見てたらわからない今年のCES』
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070117/zooma291.htm