●『平成17(ワ)12817 損害賠償等請求事件 エレベータ装置』

 毎週、日曜の朝7;30からは、TBSの“がっちりマンデー”を観ています(寝坊や外出した場合は、録画したものを観ています。)。今日は、登録商標のRマークを放送していました(http://www.tbs.co.jp/gacchiri/oa20070114-mo1.html)。ウールマークや、ドルビーシステム、dtsシステムとの技術競争、クラリーノの話等を放送していました。ドルビーシステムとdtsシステムとの技術的な違いもわかり、いつも参考になります。
 

 また、四季報を含む商標だけでも56件?も登録されているそうです。パテント四季報や、IP四季報なんてのも商標登録されているとのことです。


 さて、今日は、昨年末の12/26に、特許法第104条の3の特許無効の抗弁が認められ請求が棄却された東京地裁判決のもう1件の『平成17(ワ)12817 損害賠償等請求事件 東京地裁 エレベータ装置』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070110134800.pdf)についてコメントします。


 本件は、特許法第104条の3の特許無効理由として、複数の引用例の組み合わせによる特許法第29条第2項の進歩性違反が争われ、課題の共通性により複数の引用例の組み合わせが認められた点で参考になるか事案と思います。




 つまり、東京地裁は、

『(3) 引用発明2−2と引用発明2−3,同2−1との組合せの容易想到性について


 エレベータ装置においては,不使用空間の節減を図るということは,一般的な課題である。引用発明2−2においては,駆動装置11〔巻上機〕が壁面に対して傾斜して配置されているところ,同発明において,前記アの公知の構成を採用してカウンターウェイト6が配置されたエレベータケージ1〔かご〕の側方に位置するエレベータ昇降路3の壁面3aと平行になるように変更する程度のことは,不使用空間の節減のために,各現場の状況に応じて,当業者が適宜選択できる単なる設計上の変更事項にすぎないというべきである。


 したがってこのような設計上の変更を行うことは当業者であれば特段の困難を伴うこともなく容易になし得ることであり,このように,引用発明2−2に引用発明2−3,同2−1記載の公知の構成を組み合わせることによって相違点Rは容易に解消されるものである。


 原告は,引用発明2−2のエレベータにおいては,駆動装置を斜めにすることによって駆動装置を支持しているコンクリート支持台9の上に作業スペースを作り出していることや乗降口のドアとの位置関係を指摘して駆動装置の配置を斜めから平行に変更することには阻害要因がある旨の主張をする。


 しかし,不使用空間の節減という一般的な課題を解決するために,駆動装置の形状や昇降路内の空間を考慮して,適宜の設計を行うことは,当業者が容易になし得ることであることは既に述べたとおりである。


 そして,仮に,駆動装置を斜めにすることによって作業スペースを確保しているという点が,引用例2−2に開示されているとしても,昇降路の平断面サイズやコンクリート支持台の寸法,駆動装置の形状,通用扉18の開口部の大きさ等によっては,駆動装置を平行に配置しつつ作業スペースを確保することも可能であって,上記課題を解決する際の阻害要因となるものではない。


 また,原告は,構成要件2Iの前段「第1の返し車は,前記巻上機より上方に位置し,前記平断面において前記巻上機の少なくとも一部と重なるように配置され」は,間接的に,巻上機の綱車が昇降路壁側を向いていることを規定している旨主張する。


 しかし,構成要件2Iは,第1の返し車が巻上機の少なくとも一部と重なるように配置されると規定しているだけであるから,かかる解釈は採用できないのであって,かかる解釈を前提とする原告の主張は理由がない。


(4) 小括

 このように,本件第2発明は,引用発明2−2に,引用発明2−3及び同2−1記載の公知の構成を適用することによって容易に想到できるものであって,無効理由を有するものである。


4 争点3−2(本件第2特許が特許法29条2項に違反しているとして,訂正
審判により同項違反が解消されるか)について

ウ 相違点2,3の容易想到性について

 a) 昇降路内の不使用空間の発生を極力抑えることは,エレベータ装置における一般的な課題である(乙20【0032】ないし【0034 】乙14【0002】【 「従来の技術」エレベータの開発における目的の1つは建物の空間の効率的かつ経済的利用にあった。従来のトラクションシーブエレベータにおいては,エレベータの駆動機械装置を収容するために設計される機械室もしくは他の空間は,建物のエレベータに要する空間のかなりの部分をとっている】との記載参照。)。


 したがって, 引用発明2−1と,エレベータ装置に関する発明である引用発明2−2とは,共通の一般的な課題を有するものである。さらに,引用発明2−1は,平断面での幅方向あるいは奥行き方向の不使用空間を縮減して昇降路全体を小さくすることを課題とするところ(乙20【0032】ないし【0034】) ,引用発明2−2も,平断面の幅方向において案内車5と駆動装置11を重ねて配置する構成に照らせば,平断面の幅方向における不使用空間の縮減をも課題とするものである。

・ ・・


c) 原告は,引用発明2−2は,昇降路内にコンクリート台を設置して巻上機を設置するものであるから,コンクリート台上の空間が不使用空間となるのであって,昇降路平断面を小さくするという目的での動機付けの点からすれば,引用発明2−1に組み合わせるものとしては,引用発明2−2は積極的に排除すべきものであると主張する。



 しかし,乗りかごに対するロープの取付位置すなわち下部プーリの取付位置についての上記周知慣用な技術事項に基づいて,設計を適宜変更することによって相違点3 さらには同2を容易に想到できることは既に述べたとおりである。


 また,昇降路内の不使用空間の発生防止ということは,エレベータ装置に共通する一般的課題である(乙14【0002】参照。)。

 そして,引用発明2−2の従来技術は,屋上等に機械室を設ける必要のあるエレベータ装置なのであって,かかる従来技術との対比からすれば,引用発明2−2においても,機械室の設置を不要にした点で高さ方向の不使用空間の発生を防止しているものであり,昇降路内についても,案内車5と駆動装置11を重ねて配置するなどの不使用空間の発生を防止しようとの設計がなされているのであるから,引用発明2−1と引用発明2−2との間には課題の共通性が認められ,その組合せを阻害する要因があるということもできない。

・・・

b) 原告は,引用発明2−4が流体圧エレベータを対象としているものであること,引用発明2−4には,引用発明2−1のトラクションマシン1のシーブ5に相当するものが存在しないことを指摘して,容易想到性を否定する。


 しかし,乙2の2,39ないし41によれば,ロープ式エレベータと油圧式エレベータ(流体圧エレベータはこれに含まれる)はともにエレベータの代表的な方式であって,一般顧客用パンフレット類においても並べて掲載されていることが認められる。そして,巻上機及びカウンターウェイトを第2の返し車によって懸架する点においては,両方式の間に差異が存するものではない。


 そして,引用発明2−4は「昇降路,のサイズをつり合おもりのない場合と同等にすること」を目的としたものであり,昇降路の平断面を小さくするという課題について引用発明2−1と共通するものであるから,当業者において,昇降路内の不使用空間の発生を極力押さえるという周知の課題を解決するために,引用発明2−1と引用発明2−4を組み合わせることは容易に想到し得ることというべきであって,原告の主張は採用できない。


ウ 引用発明2−1に引用発明2−2及び2−4を組み合わせることは困難
であるとの原告の反論について


a) 原告は「引用発明2−1ないし2−4は,その発明の課題及び目的が相違するとともに,タイプが異なるエレベータ装置を対象としているのであるから,これらを組み合わせることは困難である。さらに,本件訂正第2発明と4つの相違点がある引用発明2−1を基礎として,それぞれの相違点に対して,引用発明2−2及び2−4等の記載事項から都合良く特定の技術事項を抽出して本件訂正第2発明のように構成することは,当業者が容易に想到し得ることではない。」と主張する。


 しかし,既に述べたとおり,引用発明2−1と本件訂正第2発明との各相違点は,相違点1については,引用発明2−2及び巻上機の冠水防止のための周知技術により解消するものにすぎず,相違点2及び3については,乗りかごに対するロープ及び下部プーリの取付位置のうち,周知慣用の構成のものからある構成を選択した結果生じる差異にすぎず,相違点4についても,昇降路の壁面に並んで配置される巻上機の綱車とカウンターウエイトの吊り車の具体的な配置により生じる設計的事項により生じる差異にすぎないものである。したがって,これらの相違点のいずれも,引用発明2−1に単なる設計的な変更を加えたものか,巻き上げ機の冠水防止のための公知技術を組み合わせたものにすぎず,当業者がこれらの構成に想到することが困難であるということはできない。


 また,エレベータにおける不使用空間の縮減,すなわち,高さ方向,奥行き方向,幅方向における不使用空間の縮減は一般的な課題であって,引用発明2−1,2−2及び2−4に共通するものであるから,この点からも,これらの発明の組合せについてこれを阻害する要因もないということができる。

 そして,本件訂正第2発明については,引用発明2−1に上記各公知技術を組み合わせることによって想到し得る構成から,通常予測し得えない異質なあるいは顕著に優れた作用効果を奏するものと認めるに足りる証拠もない。


エ 以上によれば,本件訂正第2発明は,特許法29条2項違反の事由があるものと認められ,原告の訂正審判請求は,特許法126条5項に反するものと認められるから,原告の求める訂正によって本件第2発明の無効理由は解消されない。


(5) 小括

 以上のとおり,本件第2特許には特許法29条2項違反の無効理由が存在し,無効審判により無効にされるべきものと認められるのであるから,特許権者である原告はその権利を行使することができないというべきである(特許法104条の3第1項。)。

5 結論

 よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないのでこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。』

と判示されました。



 本事案からは、引用発明同士が同一分野の発明であり(本件ではエレベータ装置という同一分野)、引用発明において課題が共通すれば、原則として、これら引用例の発明の組合せについて阻害する要因がない、ということがわかります。




追伸;<気になったニュース>

●『2006年米国特許取得、IBM、サムソン、キヤノンの順』
http://news.braina.com/2007/0113/move_20070113_001____.html
・・・2006年米国特許取得件数15位まで掲載されています。
●『去年の中国の特許申請、57万件を超える 』
http://japanese.cri.cn/151/2007/01/14/1@83843.htm

●『「亀山第2工場の能力を9万枚/月に」、シャープが年頭会見で表明 (2007/01/12) 』
http://www.eetimes.jp/contents/200701/14034_1_20070112214301.cfm
●『不振にあえぐ中国の液晶メーカー、BOE社など3社が合併へ (2007/01/11) 』
http://www.eetimes.jp/contents/200701/14014_1_20070111160514.cfm

●『有機エレクトロニクス市場、「年平均成長率70%で成長」 (2006/12/20) 』
http://www.eetimes.jp/contents/200612/13674_1_20061220164732.cfm
●『大阪府が全国に先駆け「LED道路照明」を導入、特許も出願(大阪府)』
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=654
●『アップルとシスコシステムズが協力できない理由--「iPhone」商標問題の深層を探る』
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20340675,00.htm
●『シスコとアップル、それぞれの言い分──「iPhone」の商標権問題は話し合いから法廷闘争へ』
http://www.computerworld.jp/topics/ma/55931.html

●『【CES】「レーザー・テレビ」の最新試作機,米Novaluxがデモを実施』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070112/126368/
●『MSゲイツ氏が語る、ホームサーバのある未来』
http://japan.cnet.com/interview/biz/story/0,2000055955,20340594,00.htm
●『【麻倉怜士CES報告14】ロケフリがついにケーブルSTBに入る?』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070114/126423/
・・・ロケフリもホームサーバの一つとみなせるでしょう。すると、映像コンテンツ系のホームサーバはソニーロケフリデファクトに?

●『「テレビでネット」続々…国際家電ショー』
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20070112nt05.htm
●『富士通も「家電PC」 パソコンメーカーの進出加速』
http://www.asahi.com/digital/pc/TKY200701130220.html
●『コピーワンス問題で家電メーカーに歩み寄りの動き,放送事業者の対応が焦点』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070112/258572/?ST=oneseg
●『「2ch.net」ドメイン差し押さえ?「2ch.net」ドメイン差し押さえ?』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0701/12/news046.html