●中央知的財産研究所の「クレーム解釈論」(2)

 一昨日、中央知的財産研究所の「クレーム解釈論」について取り上げ、その中で以前チェックしていた著名判決を記載しました。


 本当は、それらの判決の中でまだ本ブログで取り上げていない判決を詳細に検討したいと思っているのですが、昨年末から仕事等が忙しくほとんど9時過ぎの帰宅であるため、ウイークデーはなかなか検討する余裕がありません。


 言い訳は横に置いて、一昨日取り上げた判例が、別冊ジュリストの「特許判例百選〔第三版〕」に掲載されているか調べると、


●「キルビー最高裁判決」(最高裁平成12年4月1日)・・・(特許判例百選81「無効理由が存在することが明らかな特許権に基づく請求と権利の濫用」)
●「オール事件」・・・明細書に記載された課題等に基づいて請求の範囲を限定解釈した最高裁判決(特許判例百選64「公知技術の参酌」の中で触れられています)。
●「炭車トロ等における脱線防止装置事件(最高裁昭和37年12月7日判決民集2321号)」(特許判例百選64「公知技術の参酌」)
●「生海苔異物除去機事件(名古屋地裁平成14年8月30日)」(特許判例百選75)
●「貸しロッカー(コインロッカー)事件(昭和50年(ワ)第2564号実用新案権侵害禁止等請求事件)(特許判例百選68「機能的クレームの解釈」の中で触れられています)
●「磁気媒体リーダー事件(平成8年(ワ)第22124号損害賠償事件)」(特許判例百選68「機能的クレームの解釈」)

というように掲載されていました。

 
 これらは、クレーム解釈の際、参考になる重要判決ですので、特許判例百選などにより一読することをお勧めします。


 なお、
●「石油バーナー事件(最高裁昭和39年8月4日民集1319号)」
●「育苗ポット事件(大阪地裁平成13年4月12日判決 平成12年(ワ)5352号)」
●「燻し瓦製造方法事件(平成10年4月28日 最高裁判決 平成6年(オ)2378号)」

の3つについて、私が目を通したところでは、特許判例百選に掲載されていないようです。


 よって、本ブログでも取り上げている「燻し瓦製造方法事件(平成10年4月28日 最高裁判決 平成6年(オ)2378号)」を除く2つの判決について簡単に説明しておくと、

 「石油バーナー事件(最高裁昭和39年8月4日民集1319号)」は、中央知的財産研究所の「クレーム解釈論」の71頁によれば、

『クレーム記載のままでは特許無効となる先行技術が存在したため、裁判所は、クレームに記載されていない「燃料排出口(6)および案内皿(5)が廻転しないこと」を有していないイ号は特許発明の技術的範囲に属さないといした審決を維持した。』

とのことです。


 また、「育苗ポット事件(大阪地裁平成13年4月12日判決 平成12年(ワ)5352号)」は、その72頁によれば、

『この事件は、特許法第29条の2にあたる先願があり、特許無効となる蓋然性の高い案件であった。被告はこの先願に基づいてクレームの限定解釈と、特許無効であるから権利行使は権利の濫用である旨を主張した。大阪地裁は、権利濫用については触れず、先願を考慮してクレームの文言を限定的に解釈し、イ号は技術的範囲に属さず、非侵害の結論を下した。』

とのことです。



 現在は、特許無効となる先行技術が存在する場合は、特許法第104条の3による特許無効の抗弁が使えますので、これら2つの判決のような限定解釈は、現在は不要になりますね。



追伸;<気になった記事>
●『次世代DVD戦争に殴り込み・中国独自規格に勝ち目はあるか【コラム】』
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITbp000009012007
・・・この記事によれば、

『・・・
 一方で、DVDプレーヤー市場で中国メーカーの苦境は続いていた。ただでさえ激しい価格下落に苦しめられているうえ、海外企業に支払う1台あたりのライセンス料が2002年の5ドルから現在は20ドルにまで上昇。ライセンス料だけで製造コストの半分ほどを占めるようになり、中国のDVDプレーヤー産業は破滅状態に近づいた。


 こういった背景から、中国政府はEVDの規格化のバックアップを継続し、メーカーも半信半疑ながら徐々にEVD陣営に近づいてきた。そして、2006年10月にメーカーや家電量販店が一堂に「中国EVD産業連盟」を創立。12月にはEVD産業発展の道筋を示すガイドライン「北京宣言」を発表した。これでやっとEVDは産業化のスタートラインに立てたわけだ。』

とのこと。

●『LG社のHD DVD/BDユニバーサル機、競合他社は冷ややかな反応 (2007/01/10) 』http://www.eetimes.jp/contents/200701/13954_1_20070110173947.cfm
●『WSJ-特許訴訟を起こしやすくする判断、米連邦最高裁が下す』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070110-00000013-dwj-biz
・・・この記事によれば『ワシントンの連邦高裁は2004年、企業がロイヤルティーを支払うことに同意しながら訴えを起こすことはできないとの判断を下していたが、今回の最高裁判断はこれを覆した。ブッシュ政権は、無効な特許は効率的なライセンス供与、競争、技術革新のためのインセンティブを阻害するとし、メディミューン側を支持していた。一方、重要な特許を保有している企業らは、供与されたライセンスの有効性に挑戦できる権利をライセンシーに一方的に与えれば、数千に上る既存の特許和解合意やライセンス契約を混乱に陥れることになるとし、ジェネンテック側を支持していた。』とのこと。


●『【CES】「我々の商標だ」,Apple社の「iPhone」にCisco社が忠告』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070110/126239/
●『「iPhone」名称使用をめぐり、AppleCiscoが最終合意へ』
http://journal.mycom.co.jp/news/2007/01/10/400.html
●『AppleiPodスマートフォンの「iPhone」を発表』http://journal.mycom.co.jp/news/2007/01/10/320.html
●『技研だより 最新号 第22号(2007.01)』
http://www.nhk.or.jp/strl/publica/giken_dayori/index.html
●『米マイクロソフトにMP3特許使用権=伊シスベル〔BW〕』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070110-00000096-jij-biz
●『マイクロソフト社、MP3特許技術の使用許諾をシスベルとオーディオMPEG社から取得』
http://home.businesswire.com/portal/site/google/index.jsp?ndmViewId=news_view&newsId=20070109005897&newsLang=ja
●『最新の自動車研究』
http://www.jari.or.jp/ja/kankohbutsu/jido/jido_new.html
●『書いてみよう特許明細書!(経験者向け)〜特許発明提案書のまとめ方セミナー(機械編)〜』
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/seminar/kikai.html
・・・参加料は無料のようです。定員30名とのこと。

●『「知的財産高等裁判所からのメッセージ」(仮題)』
http://www.lesj.org/contents/japanese/02_1getsu.html
・・・総会前の特別例会のため無料とのこと。

●『ユミルリンク、「情報の暗号化」に関する米国特許を取得』
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=149812&lindID=1
●『「情報の暗号化」に関する米国特許を取得 〜XMLを用いたプログラムの情報漏洩・改ざんを防止〜』
http://info.ymir.co.jp/2007/01/xml.html

●『◎カラス被害防ぐ磁気パワー 新技術で特許取得 富山の辻さん 』
http://www.toyama.hokkoku.co.jp/_today/T20070110203.htm
・・・この記事によれば『「クロウハンター」は、粉砕した磁石を魚粉などで包んだもの。磁石は胃腸で消化吸収されず、プラスとマイナスの極が引かれ合うため、次第に体内で大きな塊になり、カラスは排便ができなくなって死ぬ。』とのこと。

●『「知財のプロ」育成へ 技能検定に08年にも追加』
http://www.asahi.com/business/update/0110/108.html
・・・この記事によれば「特許申請の代理業務ができる弁理士資格は国内法の知識が問われるのに対し、検定ではライセンス契約や技術提携の実務、外国特許の知識を求める。」とのこと。

●『健康な発芽野菜光照射栽培を』
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=336377006
・・・この記事によれば「発芽野菜(スプラウト)に適度な紫外線(UV)を当てることで、茎を鮮やかな赤紫色に変え、目の疲労回復に効果のある抗酸化物質・アントシアニンを増やす技術を確立した島根県農業技術センターと松下電工大阪府)がこのほど、その光照射技術を応用した栽培方法を特許出願した。」とのこと。

●『アンジェス、心筋症分野で医薬特許が成立』
http://market.radionikkei.jp/invest/20070110_02.cfm
●『島大チームが認知症治療でDHA効果確認』
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=336383006
・・・この記事によれば『島根大学医学部(出雲市塩冶町)の橋本道男助教授(56)を中心とする認知症予防・改善チームが、アジやサバなどの青魚に含まれる「魚油」の主成分・ドコサヘキサエン酸(DHA)を用いて、脳の神経細胞ニューロン)の再生効果があることを動物実験で確認した。今後、ヒトでの臨床研究を待つ必要があるが、認知症などのさまざまな脳疾患への治療薬として期待され、すでに国内の製薬会社と共同で国際特許を出願した。』とのこと。

●『富士通など、UWBベースの屋内向け位置測定システムを開発--誤差17cm』
http://japan.zdnet.com/news/nw/story/0,2000056190,20340301,00.htm
・・・この記事によれば「新開発のアクティブUWBタグを用い、17cmの測定精度を確認できた。 」とのこと。

●『松下のBlu-ray戦略――現状と今後』
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0701/10/news042.html
●『“動画解像度の改善”がキーワードとなる今年の液晶テレビ
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0701/08/news018.html