●「発明の単一性の要件」の改訂審査基準(案)

 今日は、『「発明の単一性の要件」の改訂審査基準(案)』(http://www.jpo.go.jp/iken/pdf/iken_isyou_bunkatu/03.pdf)について取り上げます。


 本案における発明の単一性についての審査の進め方については、10頁〜12頁の以下の説明、および11頁および12頁の図がわかりやすいと思いました。


 つまり、『「発明の単一性の要件」の改訂審査基準(案)』より10頁〜12頁の部分を抜粋すると、


「4.審査の進め方
4.1 基本的な考え方
(1) 発明の単一性の要件を満たすかどうかは、特許請求の範囲の最初に記載された発明(注)と他の発明との間で判断し、特許請求の範囲の最初に記載された発明、及び当該発明との間で発明の単一性の要件を満たす発明を、新規性・進歩性等の特許要件についての審査対象とする。


 特許請求の範囲の最初に記載された発明との間で発明の単一性の要件を満たさない発明については、新規性・進歩性等の特許要件についての審査の対象とせずに、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。


 特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合は、下記4.2 に従って新規性・進歩性等の特許要件についての審査対象を決定する。


(注)請求項1 に係る発明。請求項1 の発明特定事項が選択肢で表現されている場合には、原則として最初の選択肢を選んで把握される発明。ただし、マーカッシュ形式で記載された請求項の場合には、明細書に最初に記載された実施例に対応する選択肢を選んで把握される発明。


(2) 発明の単一性の要件が独立形式請求項の間で満たされている場合、独立形式請求項に係る発明は、特別な技術的特徴を有しているので、それらを引用する引用形式請求項に係る発明も、通常同一の特別な技術的特徴を有しており、引用形式請求項によって単一性の欠如の問題を生ずることは少ないと考えられる。したがって、通常、まず独立形式請求項どうしの対比で発明の単一性の有無を判断するのが効率的である。


 しかし、例えば、発明特定事項のうちの一つを置換する引用形式請求項のように、発明の単一性の判断に影響するものもあり得るので、そのような引用形式請求項については注意を要する。


4.2 特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の審査の対象特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合には、当該発明と他の発明との間で、同一の又は対応する特別な技術的特徴を見出すことができず、発明の単一性の要件を満たさない。しかしながら、出願人の便宜を考慮し、このような場合であっても、例外的に、以下の手順により新規性・進歩性等の特許要件についての審査対象となる発明については、発明の単一性の要件を問わないこととする。そして、新規性・進歩性等の特許要件についての審査対象とならない発明がある場合には、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。


[審査対象の決定手順]
(i). 特許請求の範囲の最初に記載された発明(請求項1)の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項に係る発明のうち、請求項に付した番号の最も小さい請求項に係る発明について、特別な技術的特徴を有するかどうかを判断する。

(ii). (i)で判断を行った請求項に係る発明が特別な技術的特徴を有しない場合には、更に、当該請求項に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項のうち、請求項に付した番号の最も小さい請求項に係る発明について、特別な技術的特徴を有するかどうかを判断する。

(iii). (ii)の手順を特別な技術的特徴を有する発明が発見されるまで繰り返し、特別な技術的特徴を有する発明が発見されれば、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した発明(a)、及び当該特別な技術的特徴を有する発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明(b)を、新規性・進歩性等の特許要件についての審査対象とする。

(iv). ただし、次に特別な技術的特徴の有無を判断しようとする請求項に係る発明が、直前に特別な技術的特徴の有無を判断した発明に技術的な関連性の低い技術的特徴を追加したものであり、かつ当該技術的特徴から把握される、発明が解決しようとする具体的な課題も関連性の低いものである場合には、更に特別な技術的特徴の有無を判断することなく、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した発明(a)を、新規性・進歩性等の特許要件についての審査対象とする。

(v). (iii)又は(iv)で審査対象とした発明について新規性・進歩性等の特許要件の判断を行うことにより、新規性・進歩性等の特許要件の判断が実質的に終了することとなる発明(例えば、カテゴリー表現上の差異があるだけの発明)についても、新規性・進歩性等の特許要件についての審査対象に加える。


 上記手順において、一の請求項の発明特定事項が選択肢で表現されている場合(多数項引用形式の場合を含む)には、選択肢ごとに把握される発明が、当該選択肢の順序でそれぞれ別の請求項として記載されているものとして取扱う。発明特定事項をすべて含むか否かの判断においては、請求項が形式的に独立形式であるか引用形式であるかにとらわれずに判断することとする。


 図省略


4.3 特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の審査の進め方の例

例1:
請求項1 : 超電導コイルを冷媒に浸漬して冷却する超電導コイルの冷却方法
請求項2 : 前記冷媒は液体ヘリウムである請求項1 記載の超電導コイルの冷却方法
請求項3 : さらに冷凍機を用いて超電導コイルを冷却する請求項2 記載の超電導コイルの冷却方法
請求項4 : 銅板を介して、冷凍機の冷却ステージと超電導コイルを熱的に接続した請求項3 記載の超電導コイルの冷却方法
請求項5 : 冷凍機の冷却ステージに超電導コイルを直接接触させた請求項3 記載の超電導コイルの冷却方法


図省略


(説明)
 請求項1 に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2 の手順に従い、審査対象を決定する。

 請求項2 に係る発明に追加された「液体ヘリウム」は、請求項1に係る発明の技術的特徴である「冷媒」を下位概念化したものであり、技術的特徴が密接に関連しているため、請求項2 に係る発明について特別な技術的特徴の有無を判断する。この例では、請求項2 に係る発明も特別な技術的特徴を有しないため、次に請求項3 に手順を進める。請求項3 に係る発明に追加された「冷凍機」から把握される解決しようとする具体的な課題は、超電導コイルの冷却に関するものであり、請求項2 に係る発明が解決しようとする課題と密接に関連するため、請求項3 に係る発明についても特別な技術的特徴の有無を判断する。

(i)請求項3 に係る発明が特別な技術的特徴を有する場合には、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した請求項1〜3 に係る発明、及び、請求項3 に係る発明の発明特定事項をすべて含んだ請求項4 及び5 に係る発明について、発明の単一性の要件を問わずに新規性・進歩性等の特許要件についての審査を行う。

(ii)一方、請求項3 に係る発明が特別な技術的特徴を有しない場合には、当該発明の発明特定事項をすべて含む請求項のうち請求項に付した番号の最も小さい請求項4 に手順を進める。請求項4 に追加された「銅板」から把握される解決しようとする具体的な課題は、超電導コイルの冷却効率を高めることにあり、請求項3 に係る発明が解決しようとする課題と密接に関連するため、請求項4 に係る発明についても特別な技術的特徴の有無を判断した後、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した請求項1〜4 に係る発明について、新規性・進歩性等の特許要件についての審査を行う。特別な技術的特徴を有しない請求項3 に係る発明の発明特定事項をすべて含む請求項の中で請求項に付した番号が最小でない請求項5 に係る発明については、新規性・進歩性等の特許要件についての審査を行わず、請求項1〜4 に係る発明についての新規性・進歩性等の特許要件の審査結果と併せて、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。



例2:
請求項1 : チタン合金を用いて軽量化したことを特徴とするメガネフレーム
請求項2 : βチタン合金を用いて軽量化したことを特徴とするメガネフレーム
請求項3 : 請求項2 記載のメガネフレームを有するとともに、プラスチック材料Yを用いて耐衝撃性を向上させたレンズを有するメガネ
 

 図省略


 請求項1 に係る発明は特別な技術的特徴を有しないため、4.2 の手順に従い審査対象を決定する。

 請求項2 に係る発明に追加された「βチタン合金を用いたメガネフレーム」は、請求項1 に係る発明の技術的特徴である「チタン合金を用いたメガネフレーム」を下位概念化したものであり、技術的特徴が密接に関連しているため、請求項2 に係る発明について特別な技術的特徴の有無を判断する。この例では、請求項2 に係る発明も特別な技術的特徴を有しないため、次に請求項3 に手順を進める。請求項3 に係る発明に追加された「プラスチックYを用いたレンズ」は、請求項2 に係る発明と関連性の低い技術的特徴であり、かつ発明が解決しようとする課題も異なっている。このため、請求項3 に係る発明については新規性・進歩性等の特許要件についての審査を行わず、特別な技術的特徴の有無を判断した請求項1 及び2 に係る各発明についてのみ、新規性・進歩性等の特許要件についての審査を行い、その結果と併せて発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。』

とのことです。


 まだ、本案を完全に理解したと自信をもって言えないので、本案に対するコメントは避けたいと思います。


 ともかく、審査基準室による審査基準案の説明会を早く聞きたいな、と思います。


追伸;<気になったニュース>
●『宇宙戦艦ヤマト“漂流” 著作権どこに 』
http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/070109/jkn070109002.htm
●『【CES】2006年の次世代DVD戦争を総括する』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070109/126215/
●『薄さに驚く27インチ有機ELを参考展示・ソニーブース【CESリポート】』
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMIT1i006009012007
●『ソニーが27型有機EL開発、「技術的には製品化可能」』
http://www.eetimes.jp/contents/200701/13915_1_20070109182624.cfm
●『松下、長寿命光源採用のリアプロ・テレビを米国で発売へ』
http://www.eetimes.jp/contents/200701/13917_1_20070109194921.cfm
●『経産相と商務長官、特許審査など5分野協力合意』
http://www.sankei.co.jp/keizai/kseisaku/070109/ksk070109003.htm
●『特許手続き、効率化へ協力・日米が合意』
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070109AT2M0900C09012007.html
●『特許審査待ち時間短縮など日米が合意 経産相と商務長官』
http://www.asahi.com/business/update/0109/069.html
●『特許審査官端末による閲覧サービス開始のお知らせ』
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/chouhoyu/chouhoyu2/sinsatrm.htm
●『新年のごあいさつ』(電波産業会;ARIB
http://www.arib.or.jp/osirase/news/index.html
●『国会図書館、HP集め本腰 ネット上の雑誌・文献 次代に残す』
http://www.sankei.co.jp/culture/bunka/070107/bnk070107003.htm
●『日立製作所 古川一夫 社長---全世界でコンサル事業を強化』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061228/257897/
・・この記事によれば「当社は1997年から指静脈認証技術の研究開発を開始して、他社を圧倒する多数の特許を取得している。既に金融機関をはじめ、多くのお客さまから支持を頂いているが、2007年はグローバル事業展開を加速し、デファクト化を目指していく。」とのことです。