●『平成18(行ケ)10236 審決取消請求事件 ポリアミドベースのガソ

今年も、残すところあと一日ですね。もう一頑張りです。


 さて、本日は、『平成18(行ケ)10236 審決取消請求事件 ポリアミドベースのガソリンフィードパイプ』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061226171810.pdf)について取り上げます。


 本件は、進歩性なしの拒絶審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、原告の請求は棄却されました。


 本件では、特許請求の範囲に記載された構成からは得られず、本件明細書の記載事項及び技術事項を参酌してのみ得られる効果の予測困難性の主張の認否が参考になります。


 つまり、知財高裁は、取消事由2(本願発明の効果の予測困難性)について、


『(1) 原告は,本願発明では,そのポリマー鎖にカルボニル基を含有するポリマー又はコポリマーである接着結合剤の介在層を用いることにより各層を結合させ,かつ,ポリアミド層が有する柔軟性などの優れた機械的特性は保持されると主張する。



 原告の上記主張は,本願発明におけるポリアミドの外層,内層が架橋されていないものであることを前提とするものであるところ,原告は本件明細書の記載事項及び技術事項を参酌すれば,本願発明における「ポリアミドの外層」及び「ポリアミドの内層」には架橋されたポリアミド層は包含されないものと解釈されるべきであるとも主張する。


 ところで,特許法29条1項及び2項所定の特許要件,すなわち,特許出願に係る発明の新規性及び進歩性について審理するに当たっては,この発明を同条1項各号所定の発明と対比する前提として,特許出願に係る発明の要旨が認定されなければならないところ,この要旨認定は,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限つて,発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないと解すべきである(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)。


 これを本件についてみると,本願発明に係る特許請求の範囲の第1項の記載(平成15年8月19日付け手続補正書(甲2)により補正された後のもの)は,「ポリアミドの外層,フルオロポリマーの中間層,およびポリアミドの内層を有し,これらの層がそのポリマー鎖にカルボニル基を含有するポリマーまたはコポリマーである接着結合剤の介在層によってそれぞれ結合していることを特徴とするポリアミドベースのガソリンフィードパイプ。」というものであり,「ポリアミドの外層」及び「ポリアミドの内層」が架橋されていないものであることは記載されていない。


 そして,本願発明において,特許請求の範囲の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情があると認めることはできないから,本願発明における「ポリアミドの外層」及び「ポリアミドの内層」には架橋されたポリアミド層は包含されないものに限定されるとすることはできない。


 したがって,原告の主張は,本願発明の要旨に基づかないものであって,前提において失当である。


 さらに,架橋の有無によって柔軟性が異なるとしても,例えばチューブを形成する各層の厚さなどによってチューブとしての柔軟性は異なってくるのであるから,引用例発明においても適宜の柔軟性を持たせることは設計上適宜なし得る程度のことというべきであって,そもそも架橋の有無のみによってチューブの柔軟性の程度を論じることはできない。


 以上によれば,ポリアミド層の柔軟性を保持しつつ介在層により層間が確実に結合されるという点において,本願発明が,引用例発明及び周知技術からは予測できない格別な効果を奏するということはできない。


(2) 原告は,フルオロポリマー層の内外両側にポリアミド層を配した構造によって優れた機械的特性と低いガソリン透過性とを併せ持つという本願発明のガソリンフィードパイプの効果は,引用例発明及び甲4公報ないし甲6公報の記載内容からは予測できないと主張する。


 しかし,引用例発明は,フルオロポリマー層の内外両側にポリアミド層を配した構造のガソリンフィードパイプであり,この点で本願発明と一致するものである。そうすると,フルオロポリマー層の内外両側にポリアミド層を配した構造によって奏される効果において,引用例発明と本願発明とが異なるということはできず,かかる構造によって奏される本願発明の効果は,引用例発明から予測できる程度のものというべきであるから,原告の主張は失当である。


(3) したがって,「本願発明の効果は,引用文献に記載された発明および従来周知の事項から予測し得る程度のものであって,格別のものではない」(審決4頁下第3段落)とした審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は理由がない。


4 結論

 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。


 よって,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。』

と判示されました。


 進歩性等の特許要件を争う査定系の訴訟における本願発明の要旨認定は、侵害訴訟における特許発明の要旨認定とは異なり、最高裁リパーゼ判決(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)の通り、特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてのみ判断するのが原則で,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない等の特段の事情がある場合に限つて,発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないということですね。



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